真実
龍という男の肩の上でヒロミは暴れる。
「大人しくしろ!!」龍は怒鳴りつけるが、ヒロミは言うことを聞かない。
「あっ!!」ヒロミの体が龍の肩から落ちて行く。そして果てない暗闇の中を落ちて行く。
「きゃー!!」ヒロミの声がこだまする。暗闇を落ちて行く毎に、彼女の時間が逆行するかのように体が小さくなっていく。
「くそ!!」龍は落ちて行くヒロミの体を追いかける。
「い、痛い!!」ヒロミは激しく地面に叩きつけられた。そこは鬱蒼と木が生える山の中のようであった。
「こ、ここは?」発した自分の声に驚く。それは自分の声ではなく幼い子供のようなこえであった。
ザクッ、ザクッ、ザクッ
それは、大きな馬が地面を踏みしめる音であった。その馬の上には鎧を身に纏った大男と、二人の従者の姿であった。
「ん?子供か、こんな所で何をしておる?」先頭の男が馬を降りて声をかけてくる。
幼い姿になったヒロミは、怖さのあまり震えている。
「王よ、先に進まなければなりません。それに我々の姿を見られたからにはその子供を」従者の一人が刀の柄に手を添えた。
「そうか、残念だが小童よ。ここに居たのが運の尽きだな……」その言葉を合図にして従者が馬を降りて刀を構えた。
「サヨナラだ。小僧」従者はそう言うと刀を振り上げた。
ヒロミは恐怖のあまり目を思いっきり瞑った。
「うっ!」目の前の従者が刀を手にしたまま崩れ落ちた。
「えっ!?」何が起きたのか理解出来ずにヒロミは唖然としている。
「ギャ!」馬の上の従者の首が血しぶきを上げて跳んだ。
「ひ、ひー!」先頭にいた男が腰を抜かした。その目の前を音も立てずに人影が舞い降りた。それは、あの龍という男であった。
「き、貴様はいったい!」男の問いかけに答える事もなく、龍は手に持った刃で男の喉を切り裂いた。男は悲鳴を上げる事もなくその場に崩れた。
ヒロミは余りにも無惨なに光景を目にしてその場で気を失ってしまったようであった。
男を殺害した龍は、彼女の体をゆっくりと抱えるとその場から姿を消した。




