呪文
ヒロミは涙が枯れるほど泣いてから眠ってしまったようであった。彼女の両手、両足はいつの間にか紐で縛られていた。身動きが出来ないように、龍という男が拘束したようだ。男は何処かに出掛けているのか気配はしない。
「ひ、紐が痛い……」それは特殊な結び方であるのか彼女が紐をほどこうともがけばもがくほど、紐は彼女の白い四肢に食い込んでいくようだ。
「誰かいないですか!?誰か助けて!!」大きな声で叫ぶがやはり返答はない。
扉がゆっくりと開く。龍という男が帰ってきたようである。
「ふん、だいぶんと苦労したみたいだな」龍はヒロミの手足に食い込んだ紐の具合を確認した。
「お願いだから、助けて……、助けてください」ヒロミは懇願する。
「ふん、だからお前は殺しはしない。俺の住む場所で俺の妻として暮らすのだ」龍はヒロミの顔を愛しそうに見つめる。
「そ、そんな、私はまだ学生……子供です。結婚なんて……」ヒロミは震えている。
「はははは!子供だと!俺の世界では女は十五になれば嫁に行く。お前の歳なら遅いくらいだ」龍はヒロミの制服のスカートを少捲りあげる。
「や、やめて……」ヒロミは体に力を入れて震えている。
「ふふふ、綺麗だ、本当にお前ほど美しい女を見たことがない。それではそろそろ行くか」龍は立ち上がると両手で独特な動きをした。それは何か宗教的な物を感じさせるようなものであった。そしてぼそぼそと呪文のような言葉を唱えた。彼が呪文を唱え終わると、目の前に暗い空間が現れる。
「い、いやー!!」ヒロミは目の前に広がる光景に恐怖を感じて悲鳴をあげる。
龍はヒロミのその言葉を無視しながら、彼女の体を荷物のように肩に乗せるとその中に飛び込んで行った。
彼らが消えたその部屋からは人の気配が完全に消えていた。




