拘束
オリオンとヒロ達はアテナイ国王ヒリウスの眼下に膝まずいている。ヒリウスの隣には王妃ガイア。そして壇上の下に弟のグラウコス、妹のカシオペア、末席にはハデスが順に並んでいる。
「オリオンよ。無事に帰還した事、喜ばしく思うぞ」王が玉座に肘を付きながら一同を見おろす。
「父上もご健勝なによりでございます」オリオンは膝を付いたまま丁寧に挨拶をした。
「挨拶はよい、それよりもお前の探していた物が見つかったと聞いておるが、それは誠か?」王は興味深そうに問いかけてくる。
「そ、それは……」オリオンは返答に躊躇する。
「私の確認した情報では、その女剣士がその術を使うと聞いております」グラウコスが視線を送った先にはヒロの姿があった。
「いや……、それは……」オリオンが言葉を濁す。
「お前の今回の旅の目的は、幻の金属オリハルコンを見つける事であった筈、よもやその目的を忘れた訳ではないであろう」王のその言葉を聞いてヒロは雷を受けたような衝撃を受けた。少し震えながらオリオンの様子を見る。オリオンはその言葉に動じていない様子であった。
「その娘がオリハルコンを再現できる事は解っています。兄上、何上お隠しになるのですか?まさか、オリハルコンを独り占めするおつもりではありませんか?」グラウコスは目を細めて疑うような眼差しでオリオンを見つめた。
「何だと、それは誠か?オリオン」王は杖を握りしめた。
「いえ、そのような事は……」オリオンはそれ以上の言葉は口にしないでいる。
「ねぇねぇ、そんな事よりお兄様と私の結婚はどうなっているの?早くしないと、またお兄様が旅に出てしまうわ」カシオペアは両手を祈るように重ねて王に嘆願する。
「そ、そうだな。即位すればオリオンが次の王だ。お前がそのオリハルコンをどう使おうがお前の自由だ」王は深々と椅子に腰を沈める。その言葉を聞いたグラウコスは顔を歪める。
「ありがとございます。お父様」カシオペアはスカートの裾を掴みながら華麗にお辞儀をする。
「父上、お待ちください」オリオンが口を開く。
「おお、オリオンよ。オリハルコンの事を話す気になったのか?」王は前のめり気味に体を乗り出した。
「私はカシオペアと結婚をする気はありません」
「えっ!」カシオペアは両手で口を押さえる。
「何を言っておる!お前とカシオペアは生まれた時から、共に王位を継承すると決まっておるのだ。それは知っておろう!?」王は杖を片手に立ち上がり怒濤の声をあげる。
「私は王位に興味はありません。弟のグラウコスにお譲りください。そして、私の妻に成る者は既に決まっております。」オリオンは立ち上がってヒロの顔を見た。
「なっ、なんだと!!それは、どこの国の姫君なのだ!?」王はオリオンの相手は王族の者と決めつけているようである。
「私の妻は……、この者です!」オリオンはそう言うとヒロの手を掴んで引き寄せて腰を抱いた。ヒロは突然の事になすすべもなく顔を真っ赤にしながらオリオンの腕の中に抱かれている。
「そ、そんな馬鹿な!!」カシオペアはその場に倒れそうになる。その体をグラウコスが支える。
「血迷うたかオリオン!!言うに事欠いて、そのような下世話な男か女か解らんような者を妻にするだと!!」王は怒り心頭のようであった。
「あははははは!!」室内を突然笑い声が響き渡る。室内にいる者が、笑っている者を一斉に注視する。
「何が可笑しいのだ!!ハデス!!」王は怒り笑い続けるハデスにぶつける。
「失礼いたしました。どうやらオリオン様はその娘に術式をかけられて虚言を吐いておられるようです」ハデスはヒロの顔を指差す。
「な、なに……」ヒロは驚きのあまり言葉が出ない。
「なるほど!それでオリハルコンの事も隠しているのか!!」グラウコスがハデスの言葉を聞いて納得するように追従する。
「な、何を根拠にそのような事を!!」オリオンは目を見開き怒りを露にする。
「ハデス、よく申した!衛兵よ!その女を捕らえよ!」王は部屋の外に配置する兵達を呼ぶ。神経を集中して待機していたのだろう王の声に反応し数十人の男達が部屋に飛び込んできて、ヒロやカルディア達を拘束する。
「何をするのだ!離せ!!」ヒロは抵抗しようとするが多勢に無勢で取り押さえられてしまう。
「王よ!お止めください!!……ヒロ!!」オリオンが腰に備えている剣を抜こうとする。
「王の面前で抜刀とは、たとえオリオン王子であっても極刑は免れませんぞ!」ハデスの声が響く。オリオンは剣の柄を握りしめて震える。
「その者達を投獄せよ!そしてオリハルコンの秘密を吐かせるのだ!!」ハデスは兵士達に指示する。拘束されたヒロ達は引きずられるように部屋から連行されていった。




