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収穫祭

「いい、私の真似をしてね!」カルディアがヒロに足のステップを教える。


「えーと……」ヒロはカルディアの真似をするが足が絡まって転びそうになった。


「違う、違う、こうよ!ワン、ツー、スリー、ワン、ツー、スリー」カルディアは上手にステップを踏む。


「ワン、ツー、スリー……」ヒロは上手く出来ない事に、少しイラついているようだ。


「少し僕と踊ってみようか」オリオンがそう言うとヒロの目の前にに手をさしのべた。


「えっ、あっ、……それじゃあ、お願い……します」ヒロはオリオンの手を恥ずかしそうに繋ぐ。オリオンは優しく手を引くと幾組かの男女が楽し気にダンスしている炎の近くに移動していった。


「うーん、なんだろこの胸のモヤモヤは・・・・・・!」カルディアは、まるで付き合いはじめのカップルのように初々しい二人の姿を見てなぜか軽い嫉妬心にかられる。彼女は頭の中であの二人は男同士だと何度も念じるように繰り返した。


「いいですか、要は君が楽しめばいいのです。そんなに基本に拘る必要はないんですよ」オリオンが優しい声でささやく。その甘い声と吐息にヒロは軽く頬を染めてしまった。


「はい……」ヒロはオリオンに言われるままにステップを踏む。「あっ!」足が絡まってころびになった。ヒロの腰元にオリオンが手を回してそれを受け止めた。


「大丈夫ですか?」それは甘く優しい声であった。


「はい・・・・・・、大丈夫です」ヒロは恥ずかしくなってオリオンの顔をまともに見ることが出来なくなっていた。


「おい、あの二人見てみろよ!」周りでダンスをしているカップルたちは自分たちが踊る事を忘れて、オリオン達の姿に見惚れている。


「素敵!まるで絵画かなにかみたい!」男性だけではなく、女性達も同じように二人を見惚れている。


 元々、アサシンとして訓練を積んできたヒロにとってダンスも要領さえ解れば人並み以上に踊れる。そしてオリオンもさすがに貴族と云うことも相まってダンスはお手のものであった。

 ヒロにも少し余裕が出てきたのかまるで華麗な乙女のような零れる笑顔が出るようになってきた。


 ギリギリギリギリ!


「なに、あれさ!楽しそうに踊っちゃって・・・・・・!」カルディアは棒のような物をギリギリと噛んでいた。その周りをカカとイオが楽しそうに踊っている。


「カルディア様の気持ちアウラも解るちゃ……」アウラはカルディアの隣に腰かけてウンウンと頷いた。


 オリオンとヒロは一頻ひとしきり踊った後、カルディア達のところへ戻ってきた。


「あー!楽しかった!!」珍しくヒロがそのような言葉を口にした。ヒロが心底しんそこなにかを楽しんでいるこのような姿をカルディアは今まで見たことがなかったような気がする。


「・・・・・・良かったね」カルディアはヒロのその笑顔を見て素直に微笑んだ。ヒロが幸せならきっと自分も笑顔になれるような気がした。


「お嬢さん、よろしければ僕と踊ってもらえませんか?」突然暗闇の中から男性が声を掛けてくる。


「俺も……!俺も……!!」数多の男達がカルディア達のところに押し掛けてくる。カルディアはとうとう自分の時代が到来したのかと頭を掻いた。


「えっ、いやいや、私なんか……」カルディアが恥ずかしそうに両手を振ると、それを無視するかのように男達は一斉にヒロのほうに手を差し出した。


「えっ、お、俺?」ヒロはキョトンとしている。

 

 アウラがヒロの耳元で「ヒロ様、わ・た・しですっちゃ」小さな声で呟いた。

 ヒロは困ったような顔でオリオンを見る。


「楽しんで来なさい」オリオンはいつもの優しい声で呟いた。

 

「で、でも・・・・・・・」恥ずかしがるヒロの手をオリオンが掴んで優しく引き上げる。ヒロは立ち上がるとチラチラと彼のほうを見ながら男達と一緒に炎のほうに移動していった。


「ぐやし~!!」カルディアはまた棒をギリギリと噛んだ。


「解るっちゃ!カルディア様の気持ちは解るちゃ!!」アウラはウンウンと頷いた。


 「今夜の獲物は決まったわ」遠く離れた暗闇の中から踊る男女達を鋭い視線で見つめる姿があった。その者が発する声は地の底から聞こえるような女の物であった。




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