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モラルスリップ  作者: Yem
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8/22

8

警察署内。

木下と森田は捜査資料室で、防犯カメラの映像を何度も確認していた。

モニターには、黒いパーカー姿の少年が映っている。

商品をポケットへ入れ、店を出た直後――。

姿が、一瞬で消える。


巻き戻す。

再生する。

結果は変わらない。


「何回見ても……消えてるよね」

森田が腕を組みながら首を傾げる。


「編集された映像には見えない」

木下は画面を見つめたまま呟く。


「う~ん。だとしたら、どういうこと……?」

その時だった。


コンコン。

軽いノックの後、部屋の扉が開く。


「君ら、若いのに残業?えらいねー」


アロハシャツ姿の金田が、ひょこっと顔を覗かせた。


「あっ、かねっち!」

森田が笑顔で手を振る。


「だから略すな」

木下がすかさず突っ込む。


「まぁまぁ」

金田は笑いながら二人のもとへ歩いてくる。


「で、何をそんな真剣な顔で見てるの?」


「かねっち、これどう思う?」

森田はモニターを指差した。


「ん〜? どれどれ」

金田は画面を覗き込み、黙って映像を最後まで見届ける。


部屋に沈黙が流れる。

木下も森田も、金田の反応を待っていた。

やがて金田は、小さく頷いた。


「……瞬間移動だね、これ」


あまりにも落ち着いた口調だった。


「瞬間移動?」

木下と森田が同時に声を上げる。


「そんな馬鹿な……」

木下は思わず言葉を漏らす。


金田は椅子に腰掛けると、二人を見回して微笑んだ。

「馬鹿な話だと思うでしょ?」


 二人は黙って頷く。


「だけどね」


 金田の表情から笑みが消える。


「僕はさ、慣れてるんだよ」


一拍置いて、静かに続けた。


「こういった……厄介な事件にはね」






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