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モラルスリップ  作者: Yem
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6/22

6

木下と森田は手分けして捜査を始めた。

森田は周辺の住宅を一軒ずつ訪ね、水谷の目撃情報を集める。


「こんにちはー! 警察です! 少しだけお話を聞かせてもらってもいいですか?」

持ち前の明るさで住民に声を掛けていくが、有力な証言は得られなかった。


一方、木下は近くのコンビニへ向かい、店長に事情を説明していた。


「防犯カメラの映像を確認させていただけませんか」


店長はすぐに了承し、木下を事務所へ案内する。

木下はモニターの前に座り、昨日から現在までの映像を一つひとつ確認していく。

どれほど時間が経っただろうか。


事務所の扉が開き、森田が元気よく入ってきた。

「きのっち! 残念! こっちは収穫なし!」


「そうか……」

木下はモニターから目を離さない。


その時だった。


「……待て」


映像の中を歩く一人の少年に、木下の視線が止まる。


「これ……水谷くんじゃないか?」


森田も画面を覗き込む。


「ほんとだ……たぶん水谷くんだ」


今日の朝9時の頃の映像に映っていた少年は、制服ではなく黒いパーカーにジーンズ姿だった。

帽子を深く被り、顔ははっきり見えない。

しかし、その体格や歩き方は水谷とよく似ている。

二人は無言のまま映像を見つめる。


少年は店内を歩き回り、棚の商品をいくつか手に取る。

そして周囲を見渡すと――。

商品をそのままズボンのポケットへ滑り込ませた。


「!これって……万引きじゃ……」

森田が息を呑む。


木下も険しい表情で頷いた。


しかし、本当に異常だったのは、その直後だった。

少年が店内から出た、その瞬間――。


その姿が、跡形もなく消えた。


「なっ!?」

二人は同時に声を上げる。


木下はすぐに映像を巻き戻した。

もう一度再生する。

少年は商品をポケットへ入れ、店内を出て――消える。


 もう一度。


 もう一度。


何度見返しても結果は変わらない。

まるで瞬間移動でもしたかのように、少年は一瞬で画面から姿を消していた。

事務所に重い沈黙が流れる。

木下はゆっくりと立ち上がり、店長へ向き直った。


「この映像を捜査資料としてお借りしたいのですが、よろしいでしょうか」


「ええ、もちろんです」

店長は緊張した面持ちで頷く。

正式な手続きを済ませ、木下は防犯カメラの記録媒体を証拠品として受け取った。


「行くぞ」


「うん」


森田も真剣な表情で頷く。

二人は事務所を後にし、公用車へ乗り込んだ。

防犯カメラに映った、説明のつかない現象。

その映像の意味を確かめるため、木下と森田は警察署へと車を走らせた。






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