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モラルスリップ  作者: Yem
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4

金田は肩をすくめながら笑った。


「ほんとに面白いね、僕にも君たちみたいな相棒がいたらなぁ~」


木下が首をかしげる。


「いつも、捜査はお一人で?」


「いーや。田口って男と組んでる」


金田は苦笑しながら頭をかいた。


「でも、あいつは単独行動が好きだから、僕もこうして一人で行動してるってわけ」


「田口さんって……あの田口さんと組んでるんですか!?捜査一課の!」


普段は無表情な木下の目が、驚くほど輝いた。

その反応に、金田は思わず笑う。


「そうだけど……君、あいつのファンかなにか?」


「はい!」


木下は迷うことなく頷いた。


「いつも熱い魂で事件と向き合う姿が本当にかっこよくて……、

まだそんなに話したことはないんですけど、田口さんは俺の憧れの人です」


「えっ、それ初耳なんだけど?」

森田が驚いたように木下を見る。


「お前に話しても、『ふーん』で終わらせるだけだろ」


「……確かに」


森田はあっさり認める。

そのやり取りに金田は吹き出した。


「はははっ!まるで漫才みたいだ」

笑いながら腕時計に目を落とすと、「あっ」と小さく声を漏らす。


「やばっ、もう行かなきゃ」


金田は二人に向かって軽く手を振った。

「じゃあ、またねー」

そう言い残すと、アロハシャツを揺らしながら足早に廊下の奥へと消えていった。


金田の姿が見えなくなると、森田は廊下をじっと見つめたまま呟いた。

「きのっち、あの人……只者じゃないよ」


「あ?」


木下は不思議そうに森田を見る。


「あの人さ、アロハシャツで出勤してるのに、誰も怒ったりしてないんだよ?」


「……」


「きっと、裏ではすごい立場の人なんだよ」


木下は少し考えたあと、口元をわずかに緩めた。


「お前もアロハシャツで出勤してみれば?案外怒られないかもしれない」


「え、ほんと?」

森田は目を輝かせる。


「じゃあ明日からアロハシャツ着て出勤する!」


「冗談だ。真に受けるな」


「えぇ~!」


森田は大げさに肩を落とす。


「せっかく南国ポリスになろうと思ったのに」


「南国ポリスってなんだよ」


二人は軽口を交わしながら駐車場へ向かい、公用車へ乗り込んだ。

目的地は、水谷の家。

昨日は父親に追い返され、話をすることができなかった。

今日こそ、彼の息子が同級生に暴力をふるったことを話さなければならない。


車を走らせ住宅街へ入り、あと数十メートルで目的の家が見えるという、その時だった。


――ドォォォンッ!!

腹の底まで響くような轟音が辺りを揺らした。


「っ!?」


木下は反射的にブレーキを踏み込む。

視線の先で、黒煙が勢いよく空へ立ち上っていく。

次の瞬間。

赤い炎が水谷の家全体を包み込んだ。


「え……?」

森田は目を見開いたまま言葉を失う。


「うそだろ……」

木下は呆然と呟く。


燃えている。

昨日までそこにあった、水谷の家が。


「森田!」


「は、はい!」


「消防に連絡! それと本部へ応援要請だ!」


「了解!」


森田は震える手で無線機を手に取る。

木下は公用車を路肩へ止めると、燃え盛る家へ向かって全力で駆け出した。







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