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モラルスリップ  作者: Yem
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3/22

3

 翌朝。

警察署内は、出勤してきた警察官たちの足音と会話で賑わっていた。


「きのっち!おはよう!今日もお仕事、頑張ろう!」

元気いっぱいの声が廊下に響く。

森田明音は満面の笑みで木下の隣に並んだ。


「あぁ」

木下は短く返事をすると、そのまま歩き出す。


「相変わらず反応うすーい」

森田が頬を膨らませた、その時だった。


「いやー、若いっていいよねぇ。やる気があって、見てるとこっちまで元気になる」

パン、パン、と手を叩きながら、一人の男が二人へ近づいてくる。


金髪のパーマがかった髪。

警察署とは場違いなアロハシャツ。

三十代前半であろうその男は、人懐っこい笑みを浮かべていた。

木下は男を見るなり軽く頭を下げる。


「あなたは……確か、捜査一課の……」


「名前なんだっけ?…あ!思い出した!金田さん!略して、かねっち!」

森田が勢いよく割り込む。


「略すな、ばか」

木下はすぐさま森田の頭を軽く小突いた。


「すみません、うちの後輩が無礼を」


「全然オッケー、気にしてなーいよ」

金田はケラケラと笑う。


「むしろフレンドリーでいいじゃないか。一応初対面だし、自己紹介お願いしていい?」


「はいっ!」


森田は姿勢を正すと、一歩前へ出て胸を張る。


「ごほん。初めまして!もりもり元気のポジティブスマイル!森田明音です!」

最後にアイドルのような決めポーズを取る。

その場にいた数人の警察官が思わず振り返った。


金田は目を丸くし、笑みを浮かべる。


「ははっ、アイドルみたいだね、君」


「ばれちゃいました?」


森田は嬉しそうに身を乗り出した。

「実は私、地下アイドルやってたんです!」


「なるほど!どうりで可愛いと思った」


金田は納得したように何度も頷くと、今度は木下へ視線を向ける。


「で、君は?君も地下アイドル出身?」


「違います」


木下は間髪入れずに否定した。


「生活安全課の木下拓真です。よろしくお願いします」

そう言って静かに頭を下げる。


あまりにも対照的な二人を見比べ、金田は吹き出した。


「いやぁ、いいコンビだねぇ。見てるだけで面白い」






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