表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モラルスリップ  作者: Yem
PR
16/22

16

 人気のない廃墟。

崩れたコンクリートの隙間から風が吹き抜け、錆びた鉄骨が不気味な音を立てていた。

その静寂の中を、一人の若い女性がゆっくりと歩いていく。


森田明音だった。


「ねぇ……水谷くん」


辺りを見回しながら、小さく呼びかける。


「いるんでしょ?」


返事はない。

数秒後。

薄暗い廊下の奥から、一人の少年が姿を現した。


黒いパーカー。

フードを深く被った水谷裕太だった。

森田は怯えた表情を浮かべながらも、一歩前へ出る。


「私の頭の中に話しかけてきたよね?」


水谷は黙って頷く。


「ここに来てほしいって……」


森田は震える声で続ける。


「一体、どうやったの?」


水谷は不気味な笑みを浮かべた。


「テレパシーだよ」

まるで自慢するように胸を張る。


「送りたい相手の顔を思い浮かべれば、その人の頭の中に声を届けられるんだ」


森田は一歩後ずさる。


「そんなの……おかしいよ……」


「おかしくなんかない!」


水谷が声を荒らげる。


「俺は特別な人間なんだ!」


その瞳には、狂気にも似た興奮が宿っていた。

森田は恐る恐る尋ねる。


「どうして……私なの?」


唇が震える。


「私に、どうしてほしいの?」


水谷は俯き、小さく笑い始めた。


「くくっ……」


その笑いは次第に大きくなる。


「あはははっ!」


森田の背筋に冷たいものが走る。

水谷はゆっくりと顔を上げた。


「あんた、弱そうだし」


その一言に、森田の表情が強張る。


「警察官のあんたを傷つけたら――」


水谷は両手を広げ、嬉しそうに笑った。


「もっと凄い能力が手に入るかもしれない!」


森田の呼吸が止まる。

目の前にいる少年は、もう普通の中学生ではなかった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ