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人気のない廃墟。
崩れたコンクリートの隙間から風が吹き抜け、錆びた鉄骨が不気味な音を立てていた。
その静寂の中を、一人の若い女性がゆっくりと歩いていく。
森田明音だった。
「ねぇ……水谷くん」
辺りを見回しながら、小さく呼びかける。
「いるんでしょ?」
返事はない。
数秒後。
薄暗い廊下の奥から、一人の少年が姿を現した。
黒いパーカー。
フードを深く被った水谷裕太だった。
森田は怯えた表情を浮かべながらも、一歩前へ出る。
「私の頭の中に話しかけてきたよね?」
水谷は黙って頷く。
「ここに来てほしいって……」
森田は震える声で続ける。
「一体、どうやったの?」
水谷は不気味な笑みを浮かべた。
「テレパシーだよ」
まるで自慢するように胸を張る。
「送りたい相手の顔を思い浮かべれば、その人の頭の中に声を届けられるんだ」
森田は一歩後ずさる。
「そんなの……おかしいよ……」
「おかしくなんかない!」
水谷が声を荒らげる。
「俺は特別な人間なんだ!」
その瞳には、狂気にも似た興奮が宿っていた。
森田は恐る恐る尋ねる。
「どうして……私なの?」
唇が震える。
「私に、どうしてほしいの?」
水谷は俯き、小さく笑い始めた。
「くくっ……」
その笑いは次第に大きくなる。
「あはははっ!」
森田の背筋に冷たいものが走る。
水谷はゆっくりと顔を上げた。
「あんた、弱そうだし」
その一言に、森田の表情が強張る。
「警察官のあんたを傷つけたら――」
水谷は両手を広げ、嬉しそうに笑った。
「もっと凄い能力が手に入るかもしれない!」
森田の呼吸が止まる。
目の前にいる少年は、もう普通の中学生ではなかった。




