15
木下は思わず一歩前へ出た。
「止めないと!」
その声には焦りが滲んでいた。
金田は慌てる様子もなく、ポケットへ手を入れる。
「うん」
穏やかな口調で続ける。
「だからこそ、地道にやっていこう」
「……」
「焦る気持ちは分かる。でも、焦った捜査ほど失敗する」
そう言うと、金田はスマートフォンを取り出した。
「現場周辺の防犯カメラ映像は、事前に全部送ってもらってる」
画面を操作し、一本の映像を木下へ見せる。
「もう一回ちゃんと見てみようか、はい、どうぞ」
木下は金田のスマートフォンを受け取り、真剣な表情で映像を見つめる。
道路を歩く通行人。
走り去る車。
街路樹。
怪しい人物は、一人も映っていない。
「……何も怪しいものは写っていないですね」
「そう思う?」
金田はニヤリと笑った。
「よーく見てごらん。不自然な点があるはずだよ」
木下は映像を最初から再生する。
一時停止。
巻き戻し。
拡大。
何度も繰り返し確認する。
そして――。
「あっ!」
木下が声を上げた。
「風が……」
金田は何も言わず続きを待つ。
「周囲に強い風が吹いてます!」
画面の中では、落ち葉やビニール袋が一方向へ勢いよく流されていた。
その瞬間だけ風向きが不自然に変化しているように見える。
金田は嬉しそうに笑った。
「その通り」
木下は画面から目を離さない。
「瞬間移動した衝撃で、空気が動いた……?」
「まだ仮説だけどね~」
と、金田はため息をつきながら言った。
「でも、もし能力の発動で周囲の空気が押し出されるなら――」
木下はすぐに答えへ辿り着く。
「風が吹いている方向が……」
「そう」
金田は人差し指を立てた。
「不自然な風を追っていけば、水谷くんがどこへ向かったのか、おおよその見当がつく」
木下はもう一度映像を見返す。
落ち葉が流れた方向。
揺れた街路樹。
舞い上がる砂埃。
すべてが、一つの方向を示していた。
「こっちです……!」
木下が指差した先を見て、金田は満足そうに微笑む。
「思ったより優秀だね~。頼もしいよ」




