14
警察署の地下駐車場。
一台の黒い外車が、木下の目の前で静かに停車した。
運転席の窓がゆっくりと開く。
「行こうか〜」
ハンドルを握っていた金田が、助手席を親指で指した。
木下は何も言わず頷き、助手席へ乗り込む。
重厚なエンジン音を響かせながら、車は地下駐車場を後にした。
「これからどこへ行くんですか?」
シートベルトを締めながら木下が尋ねる。
金田は意味ありげに笑う。
「なーいしょ」
「教えてくれないんですね」
「うん。秘密主義だから、教えない」
それ以上は何も話さず、車は夜の街を走り続けた。
十分ほどして、一台のパトカーと数人の警察官が立つ現場へ到着する。
辺りには規制線が張られ、黄色いテープが風に揺れていた。
金田は車を降りると、現場を見渡しながら言う。
「皆、仕事熱心でなによりだね~」
「ここで、なにかあったんですか?」
車を降りた木下が金田に訊ねる。
「昨日、ここで強盗未遂事件があった」
木下は規制線の中へ視線を向ける。
その先にある一件の住宅が目に入った。
住宅の玄関前に置いてある植木鉢が倒れて割れている。
「幸いにも、被害者は留守で家には誰もいなかったらしい」
「……ここに、水谷くんが来ていたと?」
「おそらくね」
金田は静かに頷いた。
「根拠は?」
「付近の防犯カメラだよ」
金田は近くのコンビニを指差す。
「今日、現場周辺のカメラを全部確認した。
でも、怪しい人物は誰一人として映っていなかった。
それなのに、僕は水谷くんがここに来たと考えてる。理由は、わかるかな?」
木下は一瞬考え込み、すぐに顔を上げた。
「……瞬間移動」
金田は満足そうに笑う。
「正解!水谷くんは監視カメラの死角を利用したんじゃない」
金田は規制線の向こうを見つめた。
「瞬間移動で現場に到着、犯行を終えたあと、その能力をつかってどこかへ消えた」
冷たい風が二人の間を吹き抜ける。
「能力を使った犯罪が、もう始まってる」
金田のその一言が、木下の胸に重く響いた。




