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モラルスリップ  作者: Yem
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13/22

13

翌朝。警察署内。


「きのっち! おはよう!」

森田はいつものように元気よく木下の隣へ駆け寄る。


「今日こそ水谷くんの家に行って、お父さんから話を聞こう!」


「あぁ……そのことなんだけど」

木下は少し言いづらそうに視線を逸らした。


「家はもうない」


「……え?」


「火の不始末で燃えたんだ」


森田は目を大きく見開く。


「そんな……!」


しばらく言葉を失っていた森田は、不安そうに木下を見つめた。


「じゃあ、水谷くんは?」


「家には誰もいなかったみたいだ」


木下はできるだけ落ち着いた口調で答える。


「水谷くんは、おそらく今は父親とどこかへ避難してるはずだ」


「そっか……」

森田は胸をなで下ろした。


「無事ならよかったぁ」


木下は小さく頷く。


「それより、その……」


何かを言いかけたところで、


「木下! 森田!」


二人を呼ぶ声が署内に響いた。


振り向くと、上司の石橋が資料を手に立っていた。


「水谷裕太の暴行事件については、捜査一課が担当することになった。

お前たちは別件を頼む」


上司は資料を木下へ手渡す。


「近隣トラブルだ。マンションで騒音問題が起きている。住民同士の話し合いじゃ解決しないらしい。現場へ行って対応してくれ」


「了解しました」


二人は声を揃えて返事をすると、公用車へ乗り込み現場へ向かった。

騒音の原因となっていた住民への聞き取り。

近隣住民からの事情聴取。

双方の話を整理し、冷静に仲裁へ入る。

森田は持ち前の明るさで場の空気を和ませ、木下は冷静に事実を確認しながら問題を収めていく。


数時間後。


騒音問題は無事に解決した。


警察署内に戻り、木下と森田は帰り支度を始める。


「ふぅ~、今日も一件落着!」

森田は大きく伸びをする。


「きのっち、お腹すいたね」


「あぁ」


木下は腕時計に目を落とす。

金田との約束の時間が近づいていた。


「森田」


「ん?」


「今日は先に帰ってくれ。俺は少し調べものがある」


「え~?残業するの?」


「そんなところだ」


森田は少し不満そうな顔をしたが、すぐに笑顔へ戻った。


「じゃあ、お先~!あんまり無理しちゃ駄目だからね!」


「あぁ、お疲れ」


森田は元気よく手を振り、その場を後にする。

その姿が見えなくなるまで見送った木下は、小さく息を吐いた。


「……早く行かないと」


そう呟くと、木下は金田との待ち合わせ場所へ向かって歩き始めた。




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