13
翌朝。警察署内。
「きのっち! おはよう!」
森田はいつものように元気よく木下の隣へ駆け寄る。
「今日こそ水谷くんの家に行って、お父さんから話を聞こう!」
「あぁ……そのことなんだけど」
木下は少し言いづらそうに視線を逸らした。
「家はもうない」
「……え?」
「火の不始末で燃えたんだ」
森田は目を大きく見開く。
「そんな……!」
しばらく言葉を失っていた森田は、不安そうに木下を見つめた。
「じゃあ、水谷くんは?」
「家には誰もいなかったみたいだ」
木下はできるだけ落ち着いた口調で答える。
「水谷くんは、おそらく今は父親とどこかへ避難してるはずだ」
「そっか……」
森田は胸をなで下ろした。
「無事ならよかったぁ」
木下は小さく頷く。
「それより、その……」
何かを言いかけたところで、
「木下! 森田!」
二人を呼ぶ声が署内に響いた。
振り向くと、上司の石橋が資料を手に立っていた。
「水谷裕太の暴行事件については、捜査一課が担当することになった。
お前たちは別件を頼む」
上司は資料を木下へ手渡す。
「近隣トラブルだ。マンションで騒音問題が起きている。住民同士の話し合いじゃ解決しないらしい。現場へ行って対応してくれ」
「了解しました」
二人は声を揃えて返事をすると、公用車へ乗り込み現場へ向かった。
騒音の原因となっていた住民への聞き取り。
近隣住民からの事情聴取。
双方の話を整理し、冷静に仲裁へ入る。
森田は持ち前の明るさで場の空気を和ませ、木下は冷静に事実を確認しながら問題を収めていく。
数時間後。
騒音問題は無事に解決した。
警察署内に戻り、木下と森田は帰り支度を始める。
「ふぅ~、今日も一件落着!」
森田は大きく伸びをする。
「きのっち、お腹すいたね」
「あぁ」
木下は腕時計に目を落とす。
金田との約束の時間が近づいていた。
「森田」
「ん?」
「今日は先に帰ってくれ。俺は少し調べものがある」
「え~?残業するの?」
「そんなところだ」
森田は少し不満そうな顔をしたが、すぐに笑顔へ戻った。
「じゃあ、お先~!あんまり無理しちゃ駄目だからね!」
「あぁ、お疲れ」
森田は元気よく手を振り、その場を後にする。
その姿が見えなくなるまで見送った木下は、小さく息を吐いた。
「……早く行かないと」
そう呟くと、木下は金田との待ち合わせ場所へ向かって歩き始めた。




