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金田はしばらく木下を見つめていたが、やがて観念したように肩をすくめた。
「わーかった」
木下の表情が少しだけ明るくなる。
「ただし、条件がある」
金田は人差し指を立てた。
「独断で動かないこと」
二本目の指を立てる。
「僕の邪魔をしないこと」
三本目。
「このことは誰にも話さないこと」
金田は真っ直ぐ木下を見据えた。
「約束できる?」
木下は迷うことなく頷く。
「約束します」
「うん。いい子だ」
「ちょっと待ったぁぁぁぁ!」
廊下の向こうから大きな声が響いた。
二人が振り向くと、森田が息を切らしながら走ってくる。
「はぁ……はぁ……」
ようやく二人の前で立ち止まると、森田は勢いよく頭を下げた。
「きのっちが事件を追うなら、私も一緒に!」
金田は困ったように笑う。
「それはダーメ」
「えぇ!?なんで!」
「ごめんね」
そう言うと、金田はそっと森田の額へ手を当てた。
「え……?」
次の瞬間。
金田の手のひらが淡く光る。
ふわり、と柔らかな光が森田を包み込んだ。
数秒後。
光が消えると同時に、森田はきょとんと首を傾げた。
「あれ?」
と辺りを見回し、不思議そうな顔をする。
「私……朝ここに来て……みんなに挨拶して……」
言葉が止まる。
「……って、え?」
窓の外は真っ暗だった。
「もう夜!?どういうこと!?」
森田は混乱した様子で目をぱちぱちさせる。
木下は息を呑み、金田を睨んだ。
「……今、何をしたんですか?」
「……」
金田は答えない。
そのまま金田が木下へ近づき、同じように額へ手を伸ばした。
その瞬間だった。
パンッ!
金田の手が何かに弾かれたように跳ね返される。
「っ!」
木下も驚いて一歩下がる。
金田は自分の手を見つめ、苦笑いを浮かべた。
「これ……マジかぁ~……」
頭をかきながら、小さくため息をつき
「ヤバい子と関わっちゃったな~…」
と木下の方を見る。
木下は意味が分からず眉をひそめる。
金田は何事もなかったかのように森田へ向き直った。
「森田ちゃん」
「はい?」
「今まで君は疲れて寝ちゃってたんだよ」
「寝ちゃってた……?」
「そうそう。今日はもう帰りな」
森田は少し考え込んだあと、照れくさそうに笑った。
「そっかー!最近寝不足だったしなぁ」
大きく伸びをする。
「じゃあ、お疲れ様です!きのっち!え~っと、確か、金田さん!略してかねっち!」
森田は元気よく敬礼すると、そのまま廊下の向こうへ歩いていった。
その背中を見送りながら、木下は静かに拳を握る。
――今のは、間違いない。
金田もまた、人間離れした力を持っている。




