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モラルスリップ  作者: Yem
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11/22

11

金田はしばらく木下を見つめていたが、やがて観念したように肩をすくめた。


「わーかった」


木下の表情が少しだけ明るくなる。


「ただし、条件がある」


金田は人差し指を立てた。


「独断で動かないこと」


二本目の指を立てる。


「僕の邪魔をしないこと」


三本目。


「このことは誰にも話さないこと」


金田は真っ直ぐ木下を見据えた。


「約束できる?」


木下は迷うことなく頷く。


「約束します」


「うん。いい子だ」


「ちょっと待ったぁぁぁぁ!」

廊下の向こうから大きな声が響いた。

二人が振り向くと、森田が息を切らしながら走ってくる。


「はぁ……はぁ……」


ようやく二人の前で立ち止まると、森田は勢いよく頭を下げた。


「きのっちが事件を追うなら、私も一緒に!」


金田は困ったように笑う。


「それはダーメ」


「えぇ!?なんで!」


「ごめんね」


そう言うと、金田はそっと森田の額へ手を当てた。


「え……?」


次の瞬間。

金田の手のひらが淡く光る。

ふわり、と柔らかな光が森田を包み込んだ。

数秒後。

光が消えると同時に、森田はきょとんと首を傾げた。


「あれ?」

と辺りを見回し、不思議そうな顔をする。


「私……朝ここに来て……みんなに挨拶して……」


言葉が止まる。


「……って、え?」


窓の外は真っ暗だった。


「もう夜!?どういうこと!?」


森田は混乱した様子で目をぱちぱちさせる。


木下は息を呑み、金田を睨んだ。

「……今、何をしたんですか?」


「……」


金田は答えない。

そのまま金田が木下へ近づき、同じように額へ手を伸ばした。


その瞬間だった。

パンッ!

金田の手が何かに弾かれたように跳ね返される。


「っ!」


木下も驚いて一歩下がる。

金田は自分の手を見つめ、苦笑いを浮かべた。


「これ……マジかぁ~……」


頭をかきながら、小さくため息をつき

「ヤバい子と関わっちゃったな~…」

と木下の方を見る。


木下は意味が分からず眉をひそめる。

金田は何事もなかったかのように森田へ向き直った。


「森田ちゃん」


「はい?」


「今まで君は疲れて寝ちゃってたんだよ」


「寝ちゃってた……?」


「そうそう。今日はもう帰りな」


森田は少し考え込んだあと、照れくさそうに笑った。

「そっかー!最近寝不足だったしなぁ」

大きく伸びをする。


「じゃあ、お疲れ様です!きのっち!え~っと、確か、金田さん!略してかねっち!」

森田は元気よく敬礼すると、そのまま廊下の向こうへ歩いていった。


その背中を見送りながら、木下は静かに拳を握る。

――今のは、間違いない。

金田もまた、人間離れした力を持っている。




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