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木下は金田の前に立ち、深く頭を下げた。
「一緒に……水谷くんの事件を担当させてください。お願いします」
廊下に静寂が流れる。
金田は困ったように頭をかき、小さくため息をついた。
「君はさ……話だけじゃ通じないタイプ?」
「え?」
「ここだけの話~」
金田は周囲を見回し、誰もいないことを確認してから続けた。
「前にヤクザの組へ潜入捜査したことがあってね」
木下は黙って聞いている。
「そこで学んだんだよ。人を暴力で支配する方法」
その言葉に木下の表情が曇る。
「人はね、優しい言葉だけじゃ止まらないこともある。痛い目を見ないと引き返せない人間もいる」
金田は真っ直ぐ木下を見つめた。
「僕は優しいから、今、君をこの事件から遠ざけようとしてる。暴力を使わずに、言葉を使ってあげてるんだ。わかる?」
木下はゆっくりと首を横に振る。
「……それでも」
拳を強く握り締める。
「俺は水谷くんを助けたいんです!」
金田はしばらく黙っていた。
やがて静かに口を開く。
「木下くん」
「はい」
「君のことは全部、調べてある」
木下の表情がわずかに変わる。
「君は幼い頃に両親を亡くしているね」
胸の奥がざわつく。
「……それが、この事件となにか関係あるんですか」
金田は答えない。
木下は一歩踏み込んだ。
「俺の両親を殺した人間……超能力を持った人物が犯人だったとでも言いたいんですか?」
廊下に沈黙が落ちる。
金田は窓の外へ目を向けたまま、小さく呟いた。
「犯人は、今も捕まってないみたいだからね~、その可能性はある」
木下は息を呑む。
「俺は……ただ知りたいんです」
金田がゆっくり振り返る。
「能力のこと……それに関わる事件を!」
木下の目に迷いはなかった。
「何より、水谷くんを放っておけない」
その真っ直ぐな瞳を見つめ、金田は困ったように笑う。
「……やっぱり、止めても無駄かぁ~」
そう呟いた金田の表情には、どこか諦めにも似た色が浮かんでいた。




