背中には、二人を酔わせるハートがある。
オープンカーも断念し(詳しくは前回参照)、いよいよ車選びも最終コーナーへ。
ここまで来ると、まるで人生の岐路に立っているような気分になる。
「この一台で、本当にいいのか。」
そんなことを何度も考えながら、中古車情報誌をめくっていた。
あるあるだが選んでいる時が一番楽しいのか。
もちろん、途中で心が揺れた車は数え切れない。
伝説の名車?いや
迷車
ガルウイングが眩しいトヨタ・セラ。
まるで未来からやって来たようなデザインで、ドアを開けるだけで周囲の視線を独り占めできる。
とにかく斬新すぎて人気ない笑笑?
そして軽自動車とは思えない存在感を放つAZ-1。
小さなスーパーカーと呼ばれるだけあって、あの低い車高とガルウイングには何度心を奪われたことか。
子どもの頃に見たスーパーカーへの憧れを、そのまま形にしたような車だった。
しかし、いざ「自分が所有する」と考えると、少し違う気もした。
格好いい。
でも、それだけでは何か足りない。
なんだ?
男が選ぶ車とは何なのだろう。
そんなことを一人で勝手に考え始める。
思い返せば、中学生の頃、一番乗ってみたかったのは4つ目のセリカだった。
近所のパチンコ店のオーナーがいつも乗っていて、朝、学校へ向かう途中で見掛けるたびに立ち止まって見送っていた。
朝日に照らされたボディ。
低く構えたフロント。
信号待ちから走り去る後ろ姿。
「いつか、あんな車に乗りたい。」
まだ免許すら取れない年齢だったのに、本気でそう思っていた。
子どもの頃の憧れとは、不思議なものだ。
性能なんて分からない。
スペックも知らない。
ただ「格好いい」。
それだけで十分だった。
ところが、大人になって少しだけ車の知識が増えると、人間は面倒くさい。
「セリカはFFか4WDだからなあ……。ラリーかなあ」
そんな余計なことを考えてしまう。
昔なら飛び付いていた車なのに、気付けば候補から外している自分がいる。
高校生になると、今度はFTOに夢中だった。
「あれに乗る!」
そう決めていた時期が確かにあった。
今見てもスタイリングは本当に美しい。
低く構えたシルエットは、国産クーペの中でもかなり好きな部類に入る。
もし車の知識なんてなかったら、間違いなく買っていただろう。
しかし、やはりFFという点が頭をよぎる。
もちろん、FFだから悪いというわけではない。
速いFF車もたくさんある。
F F最速の称号インテグラタイプR
シビックタイプRも間違いないだろう。
それでも、自分の中では「スポーツカーは後輪で走ってこそ」という勝手な理想が出来上がってしまっていた。
完全に趣味の世界である。
だから誰に理解されなくても構わない。
車選びなんて、結局は理屈ではなく、自分がワクワクできるかどうかなのだから。
ここで一度、自分の条件を整理してみる。
予算は80万円くらい。
駆動方式はFF以外。
できればFR。
四駆も悪くない。
そして、どうしても譲れない条件がもう一つ。
そうだ⁈
リトラクタブルヘッドライト。
通称リトラ
今の若い人には「何それ?」と言われるかもしれないが、ボタン一つでライトがパカッと起き上がる、あの仕組みである。
子どもの頃に夢中になった『ナイトライダー』。
漆黒のボディに赤いスキャナーを光らせるK.I.T.T.の姿は衝撃だった。
あの人工知能付けたい。
もちろんサイバーフォーミュラのアスラーダも最高^ - ^
さらにフェラーリF40。
フェラーリ40周年記念モデル。
低いフロントマスクからライトがせり上がる瞬間は、何度雑誌を見ても胸が高鳴った。
ライトを点けるだけなのに、そこには機械が命を吹き込まれるような何とも言えない感動があった。
最近のLEDライトは確かに性能が良い。
でも、あの「パカッ」と開く瞬間の遊び心は、もう二度と味わえない。
悲しいけどもう二度とリトラは出ないらしいです。
理由は自主規制ですね。
法律的には違反じゃないですが
ライトをつけて人を轢いた場合
ライト部分が鋭利になり重症になりやすいからとか泣
もちろん歩行者保護基準の強化や衝突安全性能もですが空力性能、コストなども絶滅した原因だろう。
機械的に動かすのでその分重くなる、1グラムでもスポーツカーは軽い方が良い。
そんな理由で各メーカーから撤退しましたなあ
それは、福口哲郎と同じく悲しい運命。
そんな
リトラへの憧れの強さ。
だからリトラクタブルだけは絶対に外せなかった。
こうして条件を一つずつ並べていくと、不思議なくらい候補は絞られていく。
そして最後まで心に残った一台。
学生時代から何度も雑誌で眺め、ゲームでも乗り回し、街で見掛ければ思わず振り返ってしまう。
その車には、今でも色あせない特別な魅力があった。
その車とは――。
「背中には、二人を酔わせるハートがある。」
この名コピーを掲げ、多くの若者を虜にした、名車である。
つづく




