表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/76

番外編 昔話 アンデットと聖女

私は呪われました。

正確に言えば、私たちは呪われました。

勇者モノを筆頭に、戦士クロスケ様、大魔術師ハイランド様、そして――

大層にも聖女などと呼ばれております、この私フィリアが、魔王を倒したのです。

その魔王に、最後の最後にやられました。

油断はなかったと思います。

全身全霊を出し尽くした戦いの後でした。

致し方ないことだと、今では思います。

勇者モノは黒猫に。

戦士クロスケ様は案山子に。

大魔術師ハイランド様は、恐ろしい魔物に。

そして私は――

最初、何の変化もございませんでした。

私だけ呪いが不発だったのでは?

聖女の力が呪いを弾いたのでは?

などと、随分と楽観的に考えておりました。

魔王の城を出た私たちは、最初は共に行動しておりました。

そのうち、ハイランド様が突然走り出し、どこかへ行ってしまいます。

そして、クロスケ様がほどなくして動けなくなりました。

最初は引きずって移動していたのですが、そのうち疲れてしまいまして。

分かりやすく、身を隠せる場所――近くの村に、立たせておくことにいたしました。

そうして、私と黒猫になったモノが、二人きりになったのです。

『お前、なんか匂うぞ』

モノに言われた、その一言が最初の異変でした。

「モノ。女性に対して“匂う”とは、何ですか。失礼だとは思いませんの?」

『いや、それにしても何と言うか……腐臭というか……』

「モノ。いい加減、怒りますよ?」

そう言って、右手を振り上げた時でした。

ポトリ。

私の右手が落ちました。

腐り落ちたのです。

あ、痛くはありませんでした。

アンデットですので、その辺はご心配なく。

ですが、その時はとても恐ろしく、悲鳴をあげてしまうほどでした。

「きゃあああ!」

『お、落ち着け。なんだ? どういうことだ?』

魔王は言っておりました。

最も忌むべき姿に変えてやろうと。

私は幼少期から、レイスやアンデッドを忌むべき存在だと教育されていましたので、すぐにピンと来ました。

「わ、私がアンデットに……アンデッドにされてしまいましたわ……なんということでしょう!」

私は、完全にパニックになりました。

そうしている間に、左足も腐り落ち、歩けなくなってしまいました。

『フィリア! 待ってろ! 今、助けを呼んでくる!

 死霊祓いなら、なんとかできるかもしれない!』

モノはそう言って、走り去ったのでした。

「待ってください! モノ! モノ!」

おそらく、死霊祓いではどうにもならない。

そう伝えようとしましたが、彼は行ってしまいました。

そして、随分と時が経ちました。

彼自身、気づいていませんでしたが、モノは猫です。

普通の人間に、言葉など通じないのでしょう。

戻って来た時には、一人でした。

『すまない……フィリア……本当にすまない……』

彼は、とても落ち込んでいました。

「気にしなくていいですよ。落ち込まないでください」

そう声をかけたかったのですが、できませんでした。

私の身体は腐り落ち、ほとんど骨になっていたからです。

彼は、三日三晩、一緒にいてくれました。

呑まず、食わずに。

そして、三日目の夜。

『そうだ。呪いを解く一族がいると聞いたことがある。

 彼らなら、なんとかなるかもしれない!』

モノは、意を決した様子でした。

『待っていてくれ。アンデットなら、死んではいないはずだ!

 クロスケも、ハイランドも、元に戻せるかもしれない!』

そして、彼は行ってしまいました。

呪いを解く方法を求めて。

私ですか?

私は、犬のような魔物に骨を運ばれ、巣穴へ連れて行かれました。

もう少しで、胃袋に収まるところだったのです。

危なかったですね。

そうならなかったのは、満月のおかげです。

満月の光が、私の崩れた身体を照らしました。

すると――なんということでしょう。

私の身体は、再生を始めたのです。

元通りの肉体。

最初は、歓喜しました。

ですが、それはすぐに落胆へと変わりました。

また、すぐに腐り始めたからです。

腐って骨になり、満月のたびに復活する。

私は、その繰り返しを――

百年以上、続けることになりました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ