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進軍とドラゴンロード

ミイナとモノ、そしてペルシャは、シャオティエンの背に乗って山を駆け降りた。

背後には数十匹の竜を引き連れている。

『勇者モノと、救い主ミイナに勝利を!』

『我らの力を見せつけてやろうぞ!』

『百年の屈辱を晴らしてくれる!』

竜達は口々に、自らを鼓舞するように言う。

「頼もしいですね」

ペルシャが、シャオティエンの背にしがみつきながら言う。

「う、うん」

ミイナは振り落とされないように必死だった。

翡翠竜たちは一瞬で、山を駆け降りた。

山の麓では、ミイナの仲間達と合流した。

『無事に説得できたようでござるな』

翡翠竜を見上げながら、クロスケが言った。

「そ、それは何よりです。いよいよ、魔王の城に向かうのですね……?」

『ああ、そのつもりだ』

「まあ! 遂にですのね! 私、ワクワクしてきましたわ!」

ハイランドとフィリアも駆け寄ってくる。

「本当に魔王に挑むのですね……」

メディアナが、恐る恐るという感じで問いかけてくる。

『ああ』

モノの返答に迷いはない。

「魔王は強大。油断しないで」

シニサが淡々と言う。

「うん。わかってる、ありがとう」

ミイナは気を引き締めるように言った。

「アタシらはここまでだ。本国の竜種研究所に報告をしないといけないからね」

デクサがそう言うと、翡翠竜の背から軽やかに飛び降りた。

シニサとメディアナも、それに続く。

「ここから先は、私たちの領分ではありません」

シニサが静かに言う。

「ですが――」

メディアナが一歩前に出た。

「どうか、ご無事で」

その言葉に、ミイナは力強く頷いた。

「うん。ありがとう」

デクサはニヤリと笑う。

「ま、あんたらなら大丈夫でしょ。ここまで来て負けるような顔してないしね」

『当然でござる』

クロスケが胸を張る。

「負ける気がしませんわ!」

フィリアも楽しそうに笑った。

「生きて帰るニャ」

ペルシャがぽつりと呟く。

ミイナは、その手をそっと握る。

「うん。みんなで帰ろう」

短い沈黙が落ちる。

やがて、シャオティエンがゆっくりと首をもたげた。

『行くぞ』

その一言で、空気が変わる。

『目指すは――竜喰い砂漠』

モノが前を見据える。

『そして魔王ヘカトキリオスの城だ』

風が吹き抜ける。

砂の匂いが、かすかに混じっていた。

遠く。

地平線がひたすらに続いている。

ミイナはそれを見つめた。

「……遠いね」

『ああ』

モノの声は、静かだった。

だが、揺るぎはない。

シャオティエンが翼なき背をしならせる。

次の瞬間――

ドォン!!

大地を蹴り、巨体が前へと駆け出した。

それに続くように、翡翠竜たちも一斉に動き出す。

地面が震え、空気が唸る。

まるで軍勢だった。

勇者と、竜と、仲間たち。

すべてを賭けた戦いへ向かう者たちの行進。

ミイナは振り返らなかった。

もう、後ろには戻れない。

「行こう、モノ」

『ああ』

黒猫は、ただ前を見ていた。

――最終決戦へ。



五十年前、竜達が通った道は“ドラゴンロード”と呼ばれている。

前回、竜達は進路状にあるものを全て踏み潰して進んだ。

しかし、今回は街を避けての進撃となった。

最もドラゴンロードはほぼ人が住み着いていないので、無人の野を行くと言ってもよかった。

竜達は休憩を必要としない。

一度走り出せば昼夜を問わず、走り続けた。

そのまま、魔王のいる魔都レスカリオテまでノンストップで行くかに思われた。

しかし、そうはならなかった。

『止まってくれ』

モノが、とある砂に埋もれた廃墟に差し掛かった時、進撃を止めた。

「どうしたの、モノ?」

『今晩はここでキャンプしよう』

「なるほど。そうですわね」

「賛成でござる」

「い、良いですね」

仲間達が口々に賛同する。

「え? 何で?」

『ミイナ。ここが、俺たちの故郷なんだ』

モノが真っ直ぐに目を見つめてくる。

「久しぶりに来ました。懐かしいですね」

ペルシャが辺りを見渡す。

「わかりますか? あれが、城壁ですよ。モノと初めて会った場所です」

「懐かしいでござるな」

「い、色々ありましたからね……」

「帰ってきましたのね」

砂に埋もれた廃墟を、仲間たちは歩いていく。

『我々はここで待っていよう』

シャオティエンが身を丸めて座り込む。

『ああ。すまないな。すぐに戻る』

ミイナはモノの後について廃墟を巡る。

ほとんどの建物は砂に埋もれ、屋根の一部しか見えていない。

『ここが、騎士団の官舎だ』

『ここが行きつけの酒場』

『俺と、オゼロが暮らした家』

屋根を巡りながら、モノは言う。

「思い出がいっぱい詰まってるんだね」

『いい思い出なんてほとんどないけどな』

ミイナの言葉に、モノは苦笑いで応える。

『それでも故郷だ』

「故郷……」

ミイナには故郷はない。

物心ついた時から奴隷だったからだ。

『そんな顔するなよ。全部終わったら、ミイナの故郷を探す旅に出るのもいいだろ』

「……いいの?」

『ああ。魔王を倒して終わりじゃない。もう、ミイナは仲間なんだ。気が済むまで一緒だ』

「うん……うん! ありがとう!!」

ミイナはモノを抱きしめていた。

『なんだよ! くっつくな!』

「いいの! モノが嬉しいこと言ってくれたからそのお礼!」

『良くない! お礼になってない! それよりも、飯にしようぜ。ここから南に砂楼の街ハイトがある。そこの市場で食料を買って帰ろう』

「うん!」

ミイナは笑顔で頷いたのだった。


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