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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第96話 違和感

北方同盟・前線都市ヴァルグリム。


静かだった。


あれほど荒れていた空間は、今は穏やかに揺れているだけ。


崩壊は止まっている。


人が、人を支えている。


それは確かに――機能していた。


アルカが観測器を見ながら言う。


「……安定しています」


カルディアが頷く。


「維持構造、正常」


ミヒャエルが腕を組む。


「ひとまずは成功だな」


ラグスが笑う。


「大勝利ってやつだ」


沈黙。



アルトは答えなかった。


ただ、人々の様子を見ている。


助け合う人々。


声をかけ合う。


手を伸ばす。


確かに、世界は変わった。


(……だが)


違和感がある。



その時。


アルカが小さく声を上げた。


「……あれ」


全員がそちらを見る。


一人の女性。


地面に座り込んでいる。


周囲に人はいる。


だが――


誰も近づかない。



ラグスが眉をひそめる。


「どうした」


アルカが言う。


「……誰も触れない」


カルディアが静かに言う。


「恐怖です」


ミヒャエルが低く言う。


「……まだ残っているか」



女性は震えている。


「……こわい」


かすれた声。


「こわれる」


誰も動かない。


目を逸らす。


距離を取る。



アルカが一歩踏み出そうとする。


だが止まる。


「……私」


躊躇。


ラグスが言う。


「行けよ」


アルカは唇を噛む。


「……でも」


カルディアが言う。


「失敗すれば巻き込まれます」


沈黙。



その一瞬。


女性の身体が揺れる。


光が滲む。


崩壊の兆し。


アルトは見ている。


(……選ばれない)



次の瞬間。


一人の少年が走った。


迷いなく。


女性の手を掴む。


「大丈夫!」


「俺がいる!」



ドクン。


光が揺れる。


崩れない。


女性が涙を流す。


「……あ」


「……ああ」


戻る。


完全ではない。


だが確実に。



アルカが息を吐く。


「……助かった」


ラグスが笑う。


「やるじゃねぇか」


ミヒャエルが頷く。


「機能してるな」


カルディアも言う。


「問題ありません」


沈黙。



アルトは言った。


「違う」


空気が止まる。



「今のは」


一拍。


「運だ」


沈黙。



アルカが振り返る。


「……え」


アルトは続ける。


「誰も行かなかった」


「たまたま行った」


「だから助かった」


一拍。


「行かなければ終わっていた」


沈黙。



ラグスが顔をしかめる。


「それは……」


ミヒャエルが低く言う。


「事実だな」


カルディアが言う。


「確率問題です」



アルカが震える。


「……じゃあ」


「全部助かるわけじゃない」


アルトは答える。


「そうだ」



静寂。


さっきまでの“成功”が、


急に軽くなる。



その時。


別の場所で、悲鳴が上がる。


全員が振り向く。


一人。


崩壊。


だが――


誰も近づかない。


一瞬の躊躇。


一瞬の恐怖。



ドクン。


静寂。


その人は――


消えた。



アルカが目を見開く。


「……あ」


ラグスが歯を食いしばる。


「……くそ」


ミヒャエルが目を伏せる。


カルディアが静かに言う。


「……これが現実です」



アルトはその場所を見ている。


(……完全じゃない)


分かっていた。


だが――


実際に見ると違う。



その時。


リシアが言った。


「……当たり前だよ」


全員が彼女を見る。



リシアは静かに言う。


「怖いもん」


一拍。


「みんな」


沈黙。



「できる人もいる」

「できない人もいる」


「そのまま」


空気が変わる。



アルトはリシアを見る。


(……そうか)


理解する。


問題は“仕組み”じゃない。


“人”だ。



アルトは小さく言った。


「……まだ足りない」


ラグスが聞く。


「何がだ」


アルトは答える。


「強制しない限り」


一拍。


「揺らぐ」


沈黙。



ミヒャエルが言う。


「だが強制すれば」


カルディアが続ける。


「定義が崩れます」


アルカが言う。


「……どうするんですか」



アルトは空を見る。


歪みは消えかけている。


だが――


完全ではない。


(これが限界か)



その時。


空間がわずかに揺れる。


ラグスが笑う。


「来るな」


カイネスの気配。


だが現れない。



代わりに――


声だけが響く。


「言っただろう」


「人は追いつかない」


沈黙。



アルトは静かに言った。


「……まだだ」


一拍。


「終わっていない」



違和感は、消えない。


むしろ――


はっきりと見えるようになった。



物語はここから、


「不完全な世界の答え」に入る。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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