第95話 終わりの定義
北方同盟・前線都市ヴァルグリム。
世界が、軋んでいる。
ドクン。
ドクン。
だがその鼓動は、今までと違う。
二つの流れがぶつかっている。
維持と崩壊。
アルカが叫ぶ。
「……臨界です!」
観測器の数値が振り切れている。
カルディアが言う。
「全領域同時干渉」
ミヒャエルが低く言う。
「耐えきれるか……」
ラグスが笑う。
「耐えるしかねぇだろ」
*
カイネスの周囲。
空間が完全に崩れている。
もはや人の形を保っていない。
だが、そこに“意思”はある。
「見ろ」
声だけが響く。
「これが終わりだ」
*
世界各地。
崩壊が連鎖する。
文化が追いつく。
だが――
追いつかない場所が出る。
アルカが震える。
「……間に合ってない地域がある」
カルディアが言う。
「伝播速度に差があります」
ミヒャエルが言う。
「文化は時間がかかる」
ラグスが言う。
「崩壊は速ぇ」
沈黙。
*
アルトは立っている。
その視界に、すべてが映る。
維持される場所。
崩れる場所。
助かる人間。
消える人間。
(……間に合わない)
理解している。
このままでは――
どこかで必ず崩れる。
*
カイネスの声。
「言ったはずだ」
「人は追いつかない」
「なら」
一拍。
「終わらせればいい」
沈黙。
*
アルトは目を閉じる。
(……終わり)
考える。
終わりとは何か。
消えることか。
止まることか。
崩れることか。
(違う)
*
アルトのUIが、静かに変化する。
【定義拡張:可能】
【対象:概念】
(……ここだ)
*
アルトは目を開く。
カイネスを見る。
「お前は終わりを選んだ」
カイネスが笑う。
「そうだ」
アルトは言う。
「なら」
一歩前に出る。
「終わりを変える」
沈黙。
*
カイネスの笑みが止まる。
「……何?」
*
アルトは言った。
「終わりは」
一拍。
「消滅じゃない」
空気が変わる。
*
カルディアが息を呑む。
「……概念再定義」
アルカが震える。
「そこまで……」
ミヒャエルが低く言う。
「やる気か」
ラグスが笑う。
「やれ」
*
アルトは続ける。
「終わりは」
「次に繋ぐための状態だ」
沈黙。
*
その瞬間。
世界が止まる。
ドクン――
無音。
*
カイネスの存在が揺れる。
崩壊していたはずの光が、
一瞬だけ“止まる”。
アルカが叫ぶ。
「……止まった!」
カルディアが言う。
「崩壊の定義が揺らいでいます!」
ミヒャエルが呟く。
「……効いてる」
*
アルトはさらに言う。
「壊れることは」
「終わりじゃない」
一拍。
「変わることだ」
*
ドクン!!!
世界が再び動く。
だが今度は違う。
崩壊が――
“停止”する。
いや、
“変化”に置き換わる。
*
崩壊していた空間が、
ゆっくりと形を変える。
完全消失ではない。
別の形へ。
アルカが震える。
「……消えてない」
カルディアが言う。
「変換されています」
ミヒャエルが言う。
「崩壊が……再構築に」
ラグスが笑う。
「やりやがったな」
*
カイネスの身体が揺れる。
完全に崩れるはずだった光が、
止まり、
戻りかける。
「……何を」
声が震えている。
*
アルトは言う。
「終わらせない」
一拍。
「繋げる」
沈黙。
*
カイネスの中で、何かが崩れる。
いや――
“変わる”。
光が引き戻される。
一部が、人の形を取り戻す。
アルカが息を呑む。
「……戻ってる」
カルディアが言う。
「影響が直接出ています」
ミヒャエルが低く言う。
「概念ごと書き換えたか」
*
カイネスは、膝をついた。
初めて。
完全に。
「……あり得ない」
アルトは静かに言う。
「終わりは」
一拍。
「選べる」
沈黙。
*
世界が安定していく。
崩壊は止まる。
維持が広がる。
文化が残る。
*
ドクン。
ドクン。
鼓動は続いている。
だがもう――
一つではない。
人の中で鳴っている。
*
アルカが小さく言う。
「……終わった?」
ミヒャエルが首を振る。
「いや」
カルディアが静かに言う。
「終わっていません」
ラグスが笑う。
「始まったな」
*
アルトは空を見上げる。
歪みは消えかけている。
だが――
完全ではない。
(これで終わりじゃない)
*
アルトは言った。
「次だ」
沈黙。
*
終わりは、終わりではない。
それは――
次へ繋ぐための状態。
物語はここから、
「新しい世界の構築」に入る。
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