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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第92話 広がる選択

北方同盟・前線都市ヴァルグリム。


静かだった。


さっきまでの歪みが嘘のように。


空はまだ完全には戻っていない。


だが――


崩壊は止まっている。


アルカが呟く。


「……収束してる」


観測器の数値は安定していた。


カルディアが言う。


「局所的な揺らぎはありますが」


一拍。


「致命的な崩壊は消失しました」


ミヒャエルが息を吐く。


「持ちこたえたな」


ラグスが笑う。


「っていうか勝っただろ、これ」


沈黙。



アルトは答えない。


ただ空を見ている。


(……まだ終わっていない)


感覚で分かる。


これは“抑えた”だけだ。


(広がる)



その時。


遠くの都市から通信が入る。


アルカが反応する。


「……別地域です!」


画面が展開される。


別の都市。


同じような現象。


だが――


違う。


「……自発的に支え合ってる」


カルディアが目を細める。


「伝播しています」


ミヒャエルが言う。


「定義が広がっているのか」


アルトは小さく頷いた。


「ああ」



別の都市でも、


人が人を支えている。


崩壊しかけた者に手を伸ばし、


呼びかけ、


戻す。


アルカが震える。


「……誰も教えてないのに」


カルディアが言う。


「“理解された”のです」


ラグスが笑う。


「いいじゃねぇか」



だがその瞬間。


アルカの表情が変わる。


「……待って」


ミヒャエルが問う。


「どうした」


アルカが震える声で言う。


「全部じゃない」


沈黙。



画面が切り替わる。


別の地域。


そこでは――


支え合いが成立していない。


人が逃げている。


崩壊を恐れて距離を取る。


結果――


一人が、消える。


アルカが目を逸らす。


「……」


カルディアが静かに言う。


「選択されていない」


ミヒャエルが低く言う。


「……同じ条件じゃないのか」


アルトは答える。


「違う」


沈黙。



「定義は与えた」


一拍。


「だが」


「選ぶかどうかは人間だ」


空気が重くなる。



ラグスが言う。


「つまり」


「助かるやつと助からねぇやつが出るってことか」


アルトは否定しない。


「そうだ」


アルカが震える。


「そんな……」


カルディアが言う。


「当然です」


一拍。


「強制ではないのですから」


ミヒャエルが呟く。


「自由の代償か」



アルトは空を見る。


歪みは、まだ残っている。


だが今は分かる。


これは“外からの問題”ではない。


(内側だ)



その時。


空間がわずかに揺れる。


ラグスが反応する。


「……来るか?」


だが現れたのは――


カイネスではなかった。



一人の少女。


年は十代後半。


普通の服。


だが目だけが違う。


深い。


アルカが息を呑む。


「……深度」


カルディアが言う。


「異常に高い」


ミヒャエルが低く言う。


「新型か」


ラグスが笑う。


「面倒なの来たな」



少女はアルトを見た。


まっすぐに。


「……あなたが」


小さな声。


「変えたの?」


沈黙。


アルトは答える。


「そうだ」



少女は一歩、近づく。


「……じゃあ」


一拍。


「どうして」


沈黙。


「助からない人がいるの?」


空気が止まる。



アルカが言葉を失う。


ミヒャエルが目を細める。


カルディアが静かに見ている。


ラグスが黙る。



アルトは答える。


「選ばないからだ」


少女は首を振る。


「違う」


一歩前に出る。


「怖いからだ」


沈黙。



アルトは黙る。


少女は続ける。


「誰も最初からできるわけじゃない」


一拍。


「教えないと」


空気が変わる。



カルディアが呟く。


「……教育」


ミヒャエルが言う。


「なるほどな」


ラグスが笑う。


「そういうことか」


アルカが顔を上げる。


「……広げるだけじゃ足りない」



少女は言う。


「みんな」


一拍。


「やり方を知らない」


沈黙。



アルトは理解する。


(……そうか)


定義は与えた。


だが“使い方”は与えていない。



アルトは言った。


「名前は」


少女は答える。


「リシア」


アルトは頷く。


「リシア」


一拍。


「協力しろ」


少女は迷わない。


「うん」



ラグスが笑う。


「仲間入りか」


アルカが嬉しそうに言う。


「……来てくれてよかった」


カルディアが静かに言う。


「必要な要素です」


ミヒャエルが言う。


「戦い方が変わるな」



アルトは空を見上げる。


問題はまだ終わっていない。


だが――


方向は見えた。


「広げる」


一拍。


「教える」



ドクン。


鼓動が響く。


今度は――


人の意思として。


物語はここから、


「維持を文化にする段階」に入る。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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