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スキルなしと追放したら、辺境で〈領域支配〉に目覚めていました 〜税制も軍制も魔獣被害ゼロに作り替えたら、帝都の命令が届かなくなった〜  作者: 影山クロウ


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第91話 存在の再定義

北方同盟・前線都市ヴァルグリム。


世界が繋がっている。


人と人が、

意識と意識が、


不完全に、だが確実に。


ドクン。

ドクン。


鼓動は続いている。


だが――


「足りない……!」


アルカが叫ぶ。


全域接続によって、

崩壊は“遅くなった”。


だが止まっていない。


カルディアが言う。


「受動維持の限界です」


ミヒャエルが歯を食いしばる。


「押し切られる……!」


ラグスが笑う。


「なら上に行け」


全員の視線がアルトに向く。


*


アルトは、静かに立っている。


だがその内側では、

境界が揺らいでいた。


(……薄い)


自分と他者。


その境界が曖昧になり始めている。


(このままじゃ)


一拍。


(持たない)


*


カイネスが笑う。


「いいな」


アルトを見る。


「壊れ始めている」


一歩、近づく。


「それが“真実”だ」


沈黙。


*


アルトは答える。


「違う」


カイネスが目を細める。


「何がだ」


アルトは言う。


「壊れているんじゃない」


一拍。


「定義が足りない」


沈黙。


*


カルディアが呟く。


「……再定義」


アルカが震える。


「またやるんですか……?」


ミヒャエルが言う。


「今度は何を変える」


ラグスが笑う。


「全部だろ」


*


アルトは目を閉じる。


思い出す。


原初層。


エイドス。


あの“問い”。


(定義を提示せよ)


今度は違う。


これは世界ではない。


人間。


(個体の定義)


*


UIが静かに展開される。


【対象:人類】

【再定義:可能】

【リスク:極大】


(……やる)


アルトは目を開いた。


*


アルトは言う。


「人は」


一拍。


「繋がるだけじゃない」


カルディアが息を呑む。


アルカが見つめる。


ラグスが笑う。


ミヒャエルが黙る。


カイネスが興味深そうに見る。


*


アルトは続ける。


「支え合う存在だ」


沈黙。


*


カイネスが笑う。


「同じだろう」


アルトは首を振る。


「違う」


一歩前に出る。


「繋がるのは構造だ」


「支えるのは意思だ」


空気が変わる。


*


カルディアの目が見開かれる。


「……意思」


アルカが震える。


「……選択」


ミヒャエルが呟く。


「能動か」


ラグスが笑う。


「来たな」


*


アルトは言った。


「人は」


一拍。


「他人を維持できる存在だ」


沈黙。


*


その瞬間。


世界が止まる。


ドクン――


無音。


全域接続が、一瞬で静止する。


カイネスの笑みが消える。


「……何だ」


*


UIが爆発的に更新される。


【定義入力:検出】

【対象:個体→相互関係】


アルカが叫ぶ。


「来てる!」


カルディアが言う。


「再定義が走ってる!」


ミヒャエルが低く言う。


「規模が違う……!」


*


アルトの周囲で、光が変わる。


ただの“線”ではない。


“流れ”。


一方通行ではない。


双方向でもない。


“支え合う流れ”。


*


崩壊していた人間たちが、


自発的に、他者に手を伸ばす。


「……大丈夫か」


「戻れ……!」


「一緒にいろ!」


アルカが叫ぶ。


「……人が動いてる!」


カルディアが言う。


「強制ではない!」


ミヒャエルが呟く。


「選択している……!」


*


ドクン!!!


世界が再び動き出す。


だが今度は違う。


“維持が加速している”。


崩壊が止まる。


補助構造が不要になる。


人が、人を支えている。


*


ラグスが笑う。


「いいじゃねぇか」


アルカが涙ぐむ。


「……戻ってる」


カルディアが静かに言う。


「成立しました」


ミヒャエルが息を吐く。


「……本当にやったな」


*


カイネスが、静かに立っている。


その表情は――


初めて変わっていた。


「……あり得ない」


アルトは言う。


「これが人だ」


沈黙。


*


カイネスの身体が揺れる。


光が暴走する。


だが――


一瞬だけ、


“戻りかける”。


アルカが息を呑む。


「……今」


カルディアが言う。


「影響を受けています」


ミヒャエルが低く言う。


「効いてるぞ」


*


カイネスは、すぐに笑った。


だがその笑いは、歪んでいる。


「……面白い」


一歩、後ろに下がる。


「だが」


沈黙。


「それでも壊れる」


空間が歪む。


次の瞬間、消える。


*


静寂。


ラグスが吐き捨てる。


「逃げたか」


アルカが言う。


「……でも」


カルディアが頷く。


「影響は与えました」


ミヒャエルが言う。


「戦えるな」


*


アルトは立っている。


だが――


その身体は、明らかに限界に近い。


【負荷:臨界】

【個体境界:崩壊寸前】


(……やりすぎたか)


ふらつく。


ラグスが支える。


「無茶しすぎだ」


アルトは小さく言う。


「まだだ」


*


世界は変わった。


今度は本当に。


ただ繋がるだけではない。


支え合う。


それが、新しい前提。


*


ドクン。


ドクン。


鼓動が響く。


今度は――


人の中で。


物語はここから、


「人類そのものの進化」に入る。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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