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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第86話 現場介入

北方同盟・前線都市ヴァルグリム。


空は割れていた。


正確には――歪んでいる。


光がねじれ、空間が波打つ。


その中心に、一人の男が立っていた。


いや、“立っているように見える”。


身体の輪郭が崩れかけている。


右腕は光に侵食され、

左半身はまだ人間のまま。


叫び声。


「うあああああああああ!!」


兵士たちは距離を取っている。


誰も近づけない。


近づけば――飲まれる。



アルトたちは、その場に転移していた。


ラグスが周囲を見回す。


「……ひでぇな」


アルカが即座に観測器を起動する。


「深度値……測定不能」

「でも、これは――」


カルディアが言う。


「中途接続者」


ミヒャエルが低く呟く。


「間に合うか」


沈黙。



男がアルトを見た。


いや、見ていない。


視線が合っているようで、

焦点が存在しない。


「た……す……」


かすれた声。


次の瞬間。


ドクン!!


周囲の空間が歪む。


地面が裂ける。


兵士が吹き飛ばされる。


ラグスが叫ぶ。


「近づくな!」


アルトは動いた。



一歩。


踏み込む。


視界の端でUIが展開される。


【対象:中途接続者】

【状態:崩壊進行】

【還流率:0%】


(ゼロか)


アルトは男に向かって言う。


「聞こえるか」


男の身体が震える。


「……あ……」


わずかに反応。


アルトは続ける。


「戻るか」


沈黙。


男の顔が歪む。


「もど……」


一瞬だけ、


人の表情が戻る。


だが次の瞬間――


「うあああああああ!!」


再び崩壊。



アルカが叫ぶ。


「意識が保てない!」


カルディアが言う。


「選択が成立していない!」


ラグスが歯を食いしばる。


「どうする!」


アルトは言う。


「支える」



アルトは手を伸ばす。


世界核の時と同じ。


だが今回は違う。


“現場”。


人間一人。


崩壊寸前。


UIが更新される。


【個体境界補助:可能】

【必要負荷:高】


(足りるか)


アルトは迷わない。


「やる」



触れた。


その瞬間。


世界が流れ込む。


男の意識。


恐怖。


痛み。


崩壊。


アルトは歯を食いしばる。


(……重い)


だが、離さない。



アルトは言う。


「選べ」


男の意識に直接届く。


「消えるか」


「戻るか」


沈黙。



男の中で、何かが揺れる。


崩壊の流れ。


そこに、細い線が生まれる。


アルトの作った“還流”。


アルカが叫ぶ。


「還流率、発生!」


カルディアが言う。


「でも弱い!」


ミヒャエルが呟く。


「持たない」


ラグスが叫ぶ。


「アルト!」



男が叫ぶ。


「……こわい」


アルトは答える。


「当然だ」


「でも」


一拍。


「戻れる」


沈黙。



男の身体が揺れる。


光が引き戻される。


ほんの少し。


ほんの少しだけ。


人の形が戻る。


アルカが叫ぶ。


「還流率、10%!」


カルディアが言う。


「足りない!」



その時。


男の意識が崩れかける。


恐怖が強すぎる。


アルトは理解する。


(これだけじゃダメだ)


一拍。


(支えが足りない)



アルトは叫んだ。


「ラグス!」


ラグスが即答する。


「任せろ!」


迷わず踏み込む。


光が身体を焼く。


それでも止まらない。


男の肩を掴む。


「戻れ!」


「死ぬ気で戻れ!」



アルカが震えながら言う。


「私も……!」


カルディアが制止しない。


「行きなさい」


アルカも手を伸ばす。


ミヒャエルも前に出る。


「全員でやるぞ」



四人の手が、男に触れる。


世界核の時と同じ。


だが今回は違う。


“複数”。


アルトのUIが更新される。


【補助接続:複数成立】

【還流率:上昇】


ドクン!!


男の身体が強く震える。


「う……あ……」


顔が戻る。


目に焦点が戻る。


「……帰りたい」


アルトは言う。


「帰れ」



次の瞬間。


光が一気に引き戻される。


ドクン!!


空間の歪みが消える。


静寂。



男が、地面に崩れ落ちた。


完全な人間の姿。


呼吸。


意識あり。


アルカが泣きそうな声で言う。


「……成功?」


カルディアが静かに答える。


「はい」


一拍。


「初の実証です」


ラグスが笑う。


「やったな」


ミヒャエルが息を吐く。


「本当に戻った……」



アルトは手を離した。


少しだけ、ふらつく。


ラグスが支える。


「大丈夫か」


「問題ない」


だがUIは正直だった。


【負荷:高】

【個体境界:不安定】


(……重いな)



その時。


遠くで、笑い声がした。


「……面白い」


全員が振り向く。


そこに、一人の男が立っていた。


細い体。


狂気を帯びた目。


カルディアが低く呟く。


「……カイネス」


ラグスが目を細める。


「こいつが」


男は笑う。


「救うのか」


アルトを見る。


「無駄だ」


沈黙。


「人は壊れる」


一歩前に出る。


「それが完成だ」



アルトは静かに言った。


「違う」


カイネスが笑う。


「証明してみろ」


空気が変わる。


ここから――


「維持」の戦いが、


本当の意味で始まる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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