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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第85話 維持という戦い

第三階層・世界核外殻。


ドクン。

ドクン。


新しい鼓動は安定している。


だがそれは――

“放っておけば安定するもの”ではない。


アルカが観測器を見つめながら言う。


「……数値、安定してます」

「でも」


カルディアが続ける。


「維持には負荷がかかっています」


ミヒャエルが問う。


「どこに?」


カルディアはアルトを見る。


「“定義を通した側”に」


沈黙。



アルトの視界の端。


UIが静かに更新されている。


【世界核接続:維持中】

【負荷:上昇】

【個体境界:変動】


(……来たか)


ラグスが言う。


「無限に続くわけじゃねぇって顔だな」


アルトは答える。


「当然だ」


一拍。


「構造を変えたんだ」


「負荷が出る」



その時。


世界核の外殻に、小さな乱れが走る。


ドクン。


一瞬だけ、鼓動がズレた。


アルカが叫ぶ。


「局所不安定!」


カルディアが言う。


「還流率低下!」


ミヒャエルが低く言う。


「崩れるのか」


アルトは静かに言った。


「まだだ」



光の一部が、揺らぐ。


戻りかけていた意識体の輪郭が、崩れかける。


アルカが震える。


「……戻れない」


ラグスが舌打ちする。


「やっぱり簡単じゃねぇな」


カルディアが言う。


「“選択”が不安定です」


アルトが言う。


「支えが必要だ」



ゼノスが静かに見ている。


「どうします」


アルトは答える。


「固定する」


ミヒャエルが驚く。


「また書き換えるのか?」


「違う」


一拍。


「補助構造を作る」



アルトは世界核に再び触れる。


UIが即座に展開される。


【補助構造構築:可能】

【対象:個体境界維持】


アルトは呟く。


「……これだ」


ラグスが笑う。


「便利すぎだろその能力」


アルトは無視する。



光が広がる。


世界核の流れの中に、新しい線が生まれる。


それは細い。


だが確実に存在する。


“戻る道を支える線”。


アルカが叫ぶ。


「還流率、回復!」


カルディアが息を呑む。


「安定化している」


ミヒャエルが呟く。


「……支えたのか」



アルトは言う。


「これで終わりじゃない」


一拍。


「人が支える必要がある」


ラグスが眉を上げる。


「俺たちか?」


「そうだ」



カルディアが理解する。


「……なるほど」


「構造だけでは維持できない」


アルカが続ける。


「選択が必要だから」


ミヒャエルが言う。


「人間が関わり続ける必要がある」


アルトは頷く。


「それが条件だ」



ゼノスが静かに笑った。


「美しくないですね」


ラグスが言い返す。


「うるせぇ」


「現実的だ」


ゼノスは否定しない。


「ええ」


一拍。


「だが」


アルトを見る。


「それは弱い」


沈黙。



その瞬間。


別の場所で、異変が起きた。


アルカが叫ぶ。


「待って!」


「地上!」


観測画面が切り替わる。


北方同盟。


一人の男が、異常な深度を発している。


ラグスが目を細める。


「……イグナートか」


アルカが首を振る。


「違う!」


「別の個体!」


ミヒャエルが低く言う。


「暴走か」


カルディアが言う。


「中途接続者」


沈黙。



その男は、苦しんでいる。


身体が光に侵食されている。


だが完全に同化もしていない。


アルカが震える。


「……戻れない」


アルトは静かに言った。


「間に合う」


ラグスが笑う。


「行くか?」


アルトは頷く。


「行く」



ゼノスが問う。


「世界核から離れるのですか」


アルトは答える。


「これが維持だ」


一拍。


「現場で支える」


カルディアが頷く。


「……証明ですね」


ミヒャエルが言う。


「理論じゃなく」


ラグスが笑う。


「実戦だな」



エイドスが、わずかに揺れる。


『維持行動:確認』


アルトは一歩、後ろへ下がる。


世界核から手を離す。


鼓動は続いている。


だが完全ではない。


「任せたぞ」


誰に向けた言葉か分からない。


だが確かに、世界は応答した。


ドクン。


ドクン。



アルトは振り向く。


「行くぞ」


ラグスが笑う。


「やっと地上か」


アルカが頷く。


「データは追い続けます!」


カルディアが静かに言う。


「ここは私が監視します」


ミヒャエルが言う。


「連絡は常時取る」


ゼノスはその場に残った。


「……見せてもらいましょう」


一拍。


「あなたの文明を」



アルトたちは走り出す。


世界核の鼓動を背に。


新しい戦いへ。


それはもう、


世界を壊す戦いではない。


世界を“維持する”戦いだ。


物語はここから――


人類の証明に入る。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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