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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第87話 崩壊の証明

北方同盟・前線都市ヴァルグリム。


救われた男は、地面に横たわっていた。


呼吸は安定している。


意識もある。


確かに――戻った。


アルカが震える声で言う。


「……成功です」


ラグスが笑う。


「だな」


ミヒャエルが頷く。


「証明された」


だが――


カルディアは黙っていた。


アルトも。



カイネスが、ゆっくりと拍手した。


「素晴らしい」


その声には、明確な嘲りが混ざっている。


「確かに戻した」


一歩前に出る。


「だが」


沈黙。


「それで何人救える?」


空気が凍る。



ラグスが睨む。


「……何が言いたい」


カイネスは笑う。


「単純な話だ」


指を一本立てる。


「一人」


次に二本。


「二人」


そして肩をすくめる。


「では、百人は?」


沈黙。



アルカが言葉を失う。


ミヒャエルが低く呟く。


「……数の問題か」


カルディアが静かに言う。


「違う」


一拍。


「“持続性”の問題です」


カイネスが頷く。


「そう」


アルトを見る。


「お前の方法は」


一拍。


「人間に依存している」


沈黙。



アルトは答える。


「それが前提だ」


カイネスは笑う。


「非効率だ」


一歩、踏み出す。


「遅い」


さらに一歩。


「弱い」


その瞬間――


空間が歪んだ。



ドクン。


だがこれは世界核ではない。


“歪みそのもの”が鼓動している。


アルカが叫ぶ。


「別反応!」


カルディアが言う。


「強制接続!」


ラグスが剣を構える。


「来るぞ!」



街の反対側。


三人の人間が、同時に崩れ始めた。


悲鳴。


身体が光に侵食される。


「やめ……ろ……!」


兵士たちが逃げる。


だが逃げ切れない。


空間が巻き込まれる。


ミヒャエルが叫ぶ。


「複数同時か!」


アルカが震える。


「無理……!」



カイネスが笑う。


「これが現実だ」


アルトを見る。


「一人ずつ救うのか?」


沈黙。



ラグスが叫ぶ。


「アルト!」


アルトは動かない。


目は三人を見ている。


(……三人)


UIが展開される。


【対象:3】

【同時補助:可能】

【負荷:極大】


(やれるか)


一瞬。


だが、次の瞬間には決まっていた。


「やる」



アルトは走る。


ラグスが並ぶ。


「俺も行く!」


アルカが叫ぶ。


「私も!」


カルディアが言う。


「分散してください!」


ミヒャエルが指示を飛ばす。


「一人一人に対応!」



三つの崩壊。


三つの恐怖。


三つの意識。


アルトは中央へ。


ラグスは右へ。


アルカとカルディアは左へ。



アルトが一人に触れる。


同時に、別の意識も流れ込む。


(……多い)


頭が割れそうになる。


だが止まらない。


「選べ!」



ラグスが叫ぶ。


「戻れ!」


アルカが泣きながら言う。


「大丈夫だから!」


カルディアが冷静に言う。


「意識を固定して!」



ドクン!!


三箇所で同時に光が揺れる。


アルカが叫ぶ。


「還流率、発生!」


カルディアが言う。


「でもバラつきがある!」


ミヒャエルが叫ぶ。


「一人、崩壊が速い!」



アルトは理解する。


(間に合わない)


一人は助かる。


一人も。


だが――


三人目。


崩壊が早すぎる。



その男が叫ぶ。


「いやだあああああ!!」


光が一気に広がる。


境界が消える。


アルトは手を伸ばす。


届かない。



次の瞬間。


静寂。


一人が、消えた。


完全に。


何も残さず。



アルカが崩れ落ちる。


「……あ……」


ラグスが歯を食いしばる。


「くそ……!」


カルディアが目を閉じる。


ミヒャエルが低く言う。


「……間に合わなかった」



残りの二人は、戻った。


だが、完全ではない。


震えている。


意識も不安定。


アルトは静かに立っている。


カイネスが笑う。


「ほら」


一拍。


「証明された」


沈黙。



「救えない」


「追いつかない」


「維持できない」


カイネスの言葉が、静かに突き刺さる。


アルトは答えない。


ただ、消えた場所を見ている。



カイネスは続ける。


「ならば」


一拍。


「壊した方が早い」


ラグスが怒鳴る。


「ふざけんな!」


カイネスは笑う。


「救う苦しみも」

「失う痛みも」


一歩下がる。


「最初から無ければいい」



アルトは、ゆっくりと顔を上げた。


「……違う」


カイネスが目を細める。


「何がだ」


アルトは言う。


「足りないだけだ」


沈黙。



「数が」

「構造が」

「人が」


一拍。


「全部足りない」


カイネスが笑う。


「言い訳だな」


アルトは答える。


「違う」


一歩前に出る。


「これから増やす」


沈黙。



カイネスは、しばらくアルトを見ていた。


そして笑う。


「面白い」


一拍。


「なら見せてみろ」


振り返る。


「その“維持”とやらを」


空間が歪む。


次の瞬間、消える。



静寂。


ラグスが吐き捨てる。


「……クソ野郎が」


アルカはまだ震えている。


カルディアが静かに言う。


「これが現実です」


ミヒャエルが頷く。


「戦いになるな」



アルトは言った。


「なる」


一拍。


「だが」


消えた場所を見る。


「無駄にはしない」


ドクン。


世界の鼓動が響く。


それはもう、遠くではない。


人のすぐ隣で、


鳴り続けている。


物語はここから――


「救えない現実」との戦いに入る。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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