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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第80話 観測不能

第三階層・世界核外殻。


それは、そこに“いた”。


だが――


誰も、それを正しく見ていない。


ラグスが剣を構えたまま、動けない。


「……何だ、あれ」


問いの形をしているが、

答えを求めていない声だった。


アルカは観測器を見つめている。


だが画面は、意味を成していない。


「数値が……出ない」

「いや、出てる……でも読めない」


カルディアが低く言う。


「観測系が崩壊しています」


ミヒャエルが呟く。


「対象が異常なのか……?」


カルディアは首を振る。


「違う」


一拍。


「“観測するという行為”が通用していない」


沈黙。



それは形を持たない。


だが、存在は感じる。


空間の一部が、ほんのわずかにズレている。


そこに、いる。


アルトの視界の端で、UIが明滅する。


【対象:不明】

【分類:不能】

【干渉:失敗】


(……失敗?)


初めてだった。


“対象があるのに干渉できない”。


アルトは一歩前に出る。


「……お前が」


言葉を向ける。


「原初存在か」


沈黙。


応答はない。


だがその瞬間――


世界核の光が、一斉に歪んだ。


ドクン。


いや、違う。


“鼓動がずれた”。



アルカが叫ぶ。


「待って!」

「振動パターンが崩壊してる!」


カルディアが装置を操作する。


「双方向接続が……」


「巻き戻されている」


ラグスが顔をしかめる。


「は?」


アルトのUIが更新される。


【構造変化検出】

【変更方向:初期状態】


(戻している……?)



ゼノスが静かに言った。


「それは」


全員が彼を見る。


ゼノスの表情は、初めて“確信”を帯びていた。


「設計ではない」


一拍。


「法則だ」


沈黙。



アルカが震える。


「法則……?」


カルディアが続ける。


「人類が設計したものではない」


「人類が触れられるものでもない」


ミヒャエルが呟く。


「じゃあ……あれは何だ」


ゼノスが答える。


「世界が世界であるための前提」


ラグスが吐き捨てる。


「意味が分からねぇ」


「分からなくていい」


ゼノスは静かに言った。


「理解する対象ではない」



その時。


“それ”が、わずかに動いた。


いや――


“世界の側が動いた”。


アルトの足元の結晶が、形を変える。


空間の座標がずれる。


上下の感覚が、一瞬で狂う。


アルカが叫ぶ。


「位置が固定できない!」


カルディアが歯を食いしばる。


「空間基準が書き換えられている!」


アルトは、ただ一人、目を細めていた。


(……干渉されている)


だがそれは、攻撃ではない。


敵意もない。


ただ――


“正しい形に戻そうとしている”。



アルトは言った。


「お前は」


一歩進む。


「世界核を元に戻そうとしているのか」


沈黙。


応答はない。


だがその瞬間。


UIが、かすかに反応した。


【原初層応答:検出】


(……応答した?)



アルトはさらに踏み込む。


「これはお前の世界か」


「それとも」


一拍。


「お前が世界か」


沈黙。


その問いに対して、


初めて“変化”が起きた。


世界核の光が、一瞬だけ完全に止まる。


ドクン――


消失。


次の瞬間。


“それ”の位置が、ほんのわずかに明確になる。


アルカが息を呑む。


「……見えた」


カルディアが低く言う。


「いや」


「“見えるようにされた”」



それは。


“点”だった。


空間のどこにも属さない点。


大きさもない。


色もない。


だが確実に存在している。


ラグスが呟く。


「……あれが?」


ゼノスが静かに答える。


「エイドス」


沈黙。



アルトは、その点を見つめた。


理解できない。


だが、感じる。


これは敵ではない。


味方でもない。


ただ――


「前提」


アルトは呟いた。


その瞬間。


“点”が、わずかに揺れた。



UIが反応する。


【干渉可能性:再評価】


アルトの目が細くなる。


(……触れるか?)


カルディアが叫ぶ。


「やめてください!」


「それは人類の領域ではない!」


アルトは答えない。


ラグスが言う。


「やる気か」


アルトは静かに言った。


「確認する」


一歩。


また一歩。


世界の前提へ、近づく。



ゼノスは、その姿を見ていた。


そして、初めて――


わずかに、笑った。


「なるほど」


一拍。


「あなたは」


「本当に設計者だ」



アルトの手が、“点”に触れようとしたその瞬間。


世界が、完全に静止した。


ドクン――


無音。


次の瞬間。


全員の意識が、同時に“切り替わる”。


そこは。


どこでもない場所だった。


世界の外側。


時間も空間もない領域。


そして目の前に――


“それ”があった。


エイドス。


原初存在。


ついに、


人類は“世界の前提”と対面した。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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