247プレイ目 迷宮都市バロワ
推敲段階で2話分をまとめたせいで、長くなりました…(分けると絶妙に短い)
椛は迷宮都市バロワに来て、まず冒険者組合で資料を確認していた。
「…誰もダンジョンの情報を提供してない?」
「もう何年もないねえ。秘匿するほどの情報ではないはずなんだけど」
「ちゃんと情報があるのは浅い階層だけかあ」
アンセムの受付嬢のファンたちはともかく、盗み聞きイキりキッズはこういう話はスルーのようだ。貢献度貢献度と喚いていたはずなのに。
椛の貢献度は地味に増え続けているので、他の人が分かりやすいところで稼いでくれて良いんですよと言いたい。
誰もやらないなら、仕方がないから椛が報告してしまうけど。
「ランクBの昇格クエストの時以来だから…いや、素材集めに来たからもっと潜ったな…?」
「どこまで潜ったかすら覚えてなさそうだね」
「ね」
なんか玄幽と2人分を集めたから、数が多くて大変だったことだけは覚えていた。レベルが低いところは駆け抜けたことも。
「…プレゼントボックスも集めたいし、情報の抜けてるところを確認して進もうかな」
「本当かい?助かるよ!」
「特定のボス素材が欲しい訳でもないし」
必要な追加素材は行ける最高階層、推奨レベル70のところではあるが、たまには格下相手に息抜きだってしたい。
それに途中から3ルートに分岐して行き、Aルートを選んでもさらに3ルートに分岐してBルートCルートも同じように3ルートずつに分岐して行く。
しかしA−Aはともかく、A−BとB−Aは共通ルートになり、A−CとC−Aも共通ルートになる。
B−CとC−Bもまた共通となる。
最大の違いはボスで、ボス素材が目当てならちゃんとルートを調べておかないとたどり着けないだろう。
そして最大の面倒ポイントは、25階層のボスを倒すとルートを選んで26階層に進むことになるのだが、最初にAルートを選んで50階層まで進み、Bルートにしか出ないボスの素材が欲しい!となったら25階層で選択し直して50階層まで進まなくてはならない。
さすがにBルートからAルートに戻したら、攻略済みのところまで転移陣で進めるが。
つまり通常の3倍のボリュームがあるダンジョンなのだ。階層もどこまであるのか不明なくらいに多いし。
「掲示板…には情報載せてるの、アホなのかな…」
資料室の職員に聞こえないようにつぶやいた。
掲示板でプレイヤー間での情報交換、共有をするのは良いと思う。メニュー画面から確認できて便利だし。
でもなんで組合には情報提供しないのだろうか。資料室で調べる手間を省いて、ここの情報が不完全だと気付いていないのか。
貢献度ブームの時に気付かなかったのか。
気付かなかったから放置しているのだろうけど。
特に攻略組は棲み着いているのではってくらい潜っていたのではなかろうか。
掲示板にも情報提供するタイプではなかったので、そういう意識が薄いのだろう。
椛も忘れっぽい性格なので他人のことは言えない立場だが、1万人近くいて誰も情報提供してないってなんでだよと言いたい。
半分くらいは生産職だとしても5,000人はいるはずだ。
貢献度が低いの、そういう性格のせいなんじゃないのー?と言いたい。
言いたい気分になっただけで言うつもりはなかった。ただの推測からの言い掛かりなのは分かっていたので。
でもそんな気分になるのも仕方がないんじゃないかなと思うのだった。
グルメオークションの入金にはまだ数日かかるようなので、椛は上位職に転職していない。
手続きの問題ではなく「1度にまとめて出してしまうと稀少性が下がりますから、複数回に分けて出品いたしましょう!その分お時間はかかりますが、売り上げは確実に増えますよ!」とロマンスグレーの受付の人に勧められただけだ。
立派な商人だった。
それはともかく、迷宮都市のダンジョンである。
前回来た時の椛は、25層のボス部屋の前まで進んだようだ。ダンジョンの入口の転移陣で確認している所である。
25層のボスはレベル65なので、勝てなかった頃に来たのだろう。
推奨レベル70は30層のボスと31~34層である。35層のボスはレベル75だ。
「ちょうどルート分岐する場所だな、25層」
勇者様御一行が踏破したというA−Aルートのみ推奨レベル100になるはずの60層まで情報が少しだけ載っていた。
あとは白紙である。
でも20層あたりから情報が足りなくて、マップもないのだ。
前回の椛も情報提供などしていなかったということだ。他人のことは言えなかった。
そんな恥ずかしい事実に「誰にも言ってないし!思っただけだし!」と思っても、1人で悶えるくらいに恥ずかしくなった。
何様のつもりだったのだろう、資料室にいた時のわたし。
というかダンジョンに来なくてもマップから確認できたじゃない。アホなのかな。
ダンジョンに入ったので転移陣で25層まで移動して、人目のないところでひとしきり悶えてから、どうにか立ち直った。恥ずか死ぬところだった。
「21~24層のマップは、埋まってるやん。そうだ、ここで素材集めて回ったからか」
飽きるほど回ったはずだ。少し思い出して来た。
「ということは、レベル60の時に装備を作ったってことか…そうだったんだ…」
属性耐性の物は6属性分ある。
大怪盗さんの素材の防具も玄幽の分と合わせ2人分ある。
主どん防具はレベル40の頃に作った、追加素材も使っていない古い物だ。物理攻撃を割合でカットする性能だけで、まだ現役で使えていた。
今回作りたいのは、この主どん防具レベル70素材バージョンだ。
それから武器も新調する予定である。
「主どん…レベル99になってもまた素材集めて新調してそう…」
やはりこまめに主どん素材は集めなくては、と思う椛だった。
25層のボスに挑んで、そうだ何度やっても勝てなかったんだ!と思い出したが、レベルが上がったおかげで今回は余裕で勝てた。
このダンジョンは危険度表示がないため、適正レベルになっていればそこまで難しくない。
危険度Cあたりで揉まれて来たなら、その差を感じることだろう。
組合の資料には魔物の挿し絵がない部分もあったので、椛はカメラで写真を撮って回った。
21~24層も騎獣で駆け抜けながら写真撮影したので、ここまではほぼ完成したと言える。
「追加素材集めの時にレア魔物とかいなかったはずだし、そこまで探したくないし完成」
宝箱もあるのだが、配置される場所はランダムで変わるようだ。
配置候補の場所の中から決まった数だけ置かれるのだろうが、そんな検証クランみたいなことまで調べる気はなかった。
階層によっては隠し部屋などもありそうだが、それも見つけていないのでスルーである。
「…抜けが多いままだけど、簡単に埋まる情報だけで貢献度もらえたら楽だなあ」
貢献度は移住者の街の発展に対するものらしいが、関係がなさそうなところでも増えることがある。冒険者組合に情報を提供すると増えることは、枇杷の木発見で分かっている。
秘境ハンターも新情報を報告したら増えたと言っていたので確かである。
だからこそ迷宮都市のダンジョンは貢献度稼ぎにぴったりのはずだったのだが、放置されたままなのだ。
思考がループしそうになった椛だが、その件は考えないようにして次に進む。
26~29層はルート分岐して、ルートごとに魔物の情報とマップ埋めをする必要がありそうだ。
でも椛が回りたいのは31~34層なので、合間に少しずつ埋めて行くつもりだった。
迷宮都市にも錬金術の店はあるので、カメラで撮った写真はすぐに現像できた。
冒険者組合の資料室に持って行ったら喜ばれたものだ。
マップの情報も渡したが、これは手書きで資料を作らなければならないので、職員は「仕事が増えた」と言いつつ楽しげだった。
ヒマだったのかもしれない。
「そういえばレアアイテムのドロップ率を教えてもらったことがあるけど、あれは誰が調べたの?」
「多くの冒険者からの聞き取り調査から割り出したんじゃないかな。何層で何体の魔物を倒した時に、いくつドロップしたのかって」
買い取り窓口で「今日はどこで何体の魔物を倒したか」「レアドロップはいくつあったか」くらいなら、こだわらずに答える冒険者もいるのだろう。
それに各国や神殿まで気にしているレアアイテムである。
どのくらい入手できる物なのか調査したはずだ。
そちらには独自に調べた詳細な資料がありそうである。組合には報告しなかったのだろう。
「転生石の欠片はレアどころかハズレに感じるけどな」
「獣人以外にはそうだろうね」
昇格石の欠片とほぼ同じ確率でドロップするのでいらない物が貯まって行くだけに感じるが、相応の値段で売れるのだ。
獣人の多い国では納品クエストが常設されている。
それでもハズレに感じるんだよなと思ってしまうだけだ。
迷宮都市は街の中心にダンジョンの入口があり、入口前には広場がある。
そしてこの広場には屋台や露天が並んで賑わっていた。
ここで屋台を出しているプレイヤーは装備品を作る生産職が多く、椛が1番良く行く料理人プレイヤーはほぼいない。
食材を手に入れにくい街だから仕方がない。
「アクセサリーって防具よりステータス補正値が低いしって思ってたけど、スキルが本体だったんだね」
「アクセサリーにしか出現しないスキルが多いから、そういう位置付けなんだろうね」
アクセサリーを並べている屋台があったので覗いてみた椛は、どれも知らないスキル付きだったので効果を調べながら見比べていた。
掲示板でもまとめスレのリストがかなり更新されているようだった。
「でもあれば便利だけど、絶妙にいらない気がするラインを狙った効果な気がする…」
「枠が空いていれば装備したいって感じらしいね。必須スキルで埋まるって言うし」
「水中戦なら水中呼吸が必須で水属性無効が準必須?もう1つは雷属性付与かな」
アクセサリーは3枠なので、通常はそれで埋まる。
だがアクセサリーは1つに複数のスキルを付与できるので、椛は水中呼吸と水属性無効は1つにまとめてある。
そんな感じでアクセサリーにスキルを付与して行く想定の物なのだろう。
組み合わせは無限大である。
ただしかなりのお金がかかる物だった。
「なんか絶妙に沼の気配…スキルの組み合わせでシナジーが生まれたりしたら…誰かテンプレのセットを見つけてくれ」
「そういうのは戦闘職の人に見つけてもらわないと」
椛は苦手なので、誰かが発見して欲しい。
「そうだ、加工素材を使ったインゴットって、細工でも使えるよね」
「使えるはずだけど、武器防具に使うからこっちに回してくれる人がいなくって」
「…それもそうか」
椛は無駄に周回して余っているが、無駄に周回するものではないのだ。普通は。
必要数だけ集めて終わりだろう。
しかも危険度C以上のボスから手に入る素材なので、迷宮都市にいたら回って来ないだろう。
気になったが、今回は確認しないでアクセサリーをいくつか買って終わらせた。
絶妙にいらない気がするけど、枠が空いているので装備してみようかなと思ったのだ。
そして気になる疑問は検証クランにメールで尋ねてみたが「素材が余ってない」ともっともな返事が来ただけだった。
検証するより、素材集めがツラくて断念したのかもしれない。他に調べたいことがあったから後回しにしたのかもしれない。
それにイベントが1ヶ月も続くのだ。
プレゼントボックスを集めたいだろうから、時間のかかるボス周回はイベント中にするものではなかった。
3倍ではなく、5倍のボリュームかもしれない…
□組合に資料がないのになんでダンジョンの仕様が判明しているのか?
各国の調査で組合には詳細が伝えられなかったものの、迷宮のギミックは秘匿されなかったため(という設定)
高レベルの冒険者NPCも情報を秘匿しているという話になりますが、そこはゲーム的な都合ってことで…




