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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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243プレイ目 ワイズ

 ヴィービズ王国は西の大陸にあるドワーフの国だ。国土のほとんどが赤い荒野で、街はどこも地下都市になっていた。


 (もみじ)はこの国の王都ワイズに来ていた。

 東隣のログソス王国のケージンの街から街道を西に進むと到着する街である。


 初めて来たが地下都市内は不思議な景色だった。

 街の中央の聖堂の入口から見上げる天井はかなり高いので、地下でも閉塞感は少ない。


 街の東側の入口から入って中央の聖堂で転移(ゲート)に登録したところだ。


 天然の空洞だったのか、人工的に作ったものなのか。

 魔法の灯りで充分な明るさが保たれているので、日常生活に支障はないだろう。


 でもドワーフの国なのだ。

 工房区は他の街よりずっと広くて、煙がたくさん立ち昇っている。


 ゲームだし、空調設備は完璧という設定だと聞いたが、見た目がアウト寄りの光景に思えるのだった。


 そこはどうにもならないので気にしないようにして、椛は冒険者組合(ギルド)に向かった。


 この街にはスライム先生がいる。

 そう聞いて来たのだから。






 スライムは魔物である。

 先生はプレイヤー間で通じるただの愛称だ。

 森の主を主どんと呼ぶのと同じことである。


 そんなスライム先生はワイズの街の地下に流れる天然の水脈に棲んでいて、街の中に入口があった。

 推奨レベル30の地下水脈フィールドという扱いだった。


「え?スライムってHPが1しかないの?転んだだけで死なない?大丈夫?」

「死んじゃいますね」


 冒険者組合の受付嬢に尋ねたら、スライム先生は思った以上にとんがった生き方をしている魔物だった。


 従魔士がスライムを育てたところ、どんなにレベルを上げてもHPは1以上にはならなかったそうだ。

 まさかの筋力(STR)極振り。それ以外は全く育たなかったとか。


 そんなスライム先生たちは、たいてい5~10体で行動している。


「スライムの自爆は1体でも威力がありますが、連鎖するので…とても危険です」

「連鎖自爆…!」


 回避力を鍛えるって、連鎖自爆から回避しきれってことかフレンドよ!とちょっと聞きたくなった。


「でも遠くから石を投げただけで勝手に自滅しますから、近付かなければ大丈夫ですよ」

「スライム先生…」


 しかし接近に気付かずに事故が起こる可能性もあるため、レベル30以下の冒険者の立ち入りは禁止しているそうだ。レベル1の子供にだって倒せるけど。


 椛はレベル70なのでもちろん立ち入り許可が出た。


「時々、高レベルの方が訪れるのですが、特に珍しい採取物もありませんよ。スライムのドロップするスライムジェルが化粧品の素材として人気ですけど」

「わたしは回避の訓練になるって聞いて来ただけだから…」

「ええー…お気を付け下さいね」


 ドワーフの可愛い系の受付嬢に変なものを見る目で心配された気がするが、変なのは勧めてくれたフレンドなので。

 椛は確かめに来ただけなので!


 と思ってやり過ごしたのだった。






 地下水脈の入口には見張りの兵が立っていた。たまに楽にレベル上げをしようと侵入を試みる冒険者がいるらしい。

 性根がすでに冒険者に向いてないと思うのだが、そういう奴に限って「オレはビッグになる!」と自信過剰なものだ。


 その日もそんな冒険者が入口のところで兵たちに取り押さえられていた。

 ドワーフではなく犬獣人だった。


「…まさかスライムの噂を聞いて、楽するためにこんなところまで来たの…?」

「このところ毎日来てるんだ」

「いい加減、地道にレベル上げをして欲しいよ」


 レベル30ならそんなに苦もなく上がるはずだ。そしてレベル30ならランクCになって1人前として扱われるレベルである。


「おい、ヒューマン!こいつらをどうにかしろ!獣人より劣ったヒューマンの役目だろ!」

「え?自分が手も足も出なかった相手にヒューマンが勝ったとして、そんな激弱獣人がヒューマンより勝っていると思えるとか、腕っぷしどころか頭も激弱なの、この犬…人」

「き、貴様!ヒューマンが口答えするな!」

「あ、古サマリータ王国の獣人か、こいつ。他の国の獣人ってこんな激弱おつむじゃないよね」

「ソウダナー」

「話が通じないと思ってたんだ…」


 古サマリータ王国の獣人は特にヒューマンを見下していたが、エルフとドワーフのことも格下扱いしていた様子だった。

 他の国の獣人について詳しい訳ではないが、目の前の犬獣人は古サマリータ王国の獣人だと本人も認めていた。


「なんて言うか…筋力極振りのスライムのような獣人くん…あだ名がスライム君になりそう」


 スライム先生より格下だ。もちろん。

 自爆するロックな生き方は真似できるものではないのだから。


「じゃあな、スライム君。レベルが足りなくて入れてもらえないお前と違って、わたしはフリーパスなのでね。レベルの違いを知り給えよ、君」


 用があるのはスライム君ではなくスライム先生である。

 椛は見張りたちに冒険者カードを見せて、当然のごとく地下水脈の入口に入った。

 スライム君が何か喚いていたが、知ったことではなかった。






 そうだ、ランダムクエストかな、と思いついたがスライム君はクエストですらなかった。

 もう存在を忘れてもいいレベルのスライム君だった。


 階段を降りて地下水脈に立った椛は、天然の洞窟と大きな川のような水脈を眺める。

 階段の周辺は灯りがあるが、奥のほうは真っ暗だった。


 ランプを出して腰に下げる。


「スライム先生、緑なんだ」


 スライムはぽよんとしたタイプではなく、液状のほうだった。7、8体いたので小石を拾って投げてみた。

 ぽちゃんと音がした。

 自爆は起きない。


 椛は黙って玄幽(げんゆう)を召喚した。続けて流星(りゅうせい)月牙(げつが)を呼ぶ。


「うふふ、玄幽、あそこの緑のスライムを狙ってこの石を投げてごらん」

「ガウ?」

「見れば分かる」


 別の小石を拾って玄幽に渡した。玄幽は首をかしげながら小石を投げる。


 パンッ!と弾ける音がして3体ともびっくりしていたが、パンッパンッパンッ!とさらに軽快に弾けてスライムたちは全滅した。


「ガ、ガウ…?」

「くうぅん…」

「…うおん」


 なに今の…と3体とも引き気味だ。

 椛も弾けっぷりには驚いた。


 だが自爆する速度や連鎖する条件はなんとなく分かった気がする。回避の訓練の意味も。


「えーと、向こうにもいるかな。少し離れて見ててね」


 椛は双剣を構えて次のスライムの群れに駆け寄る。そして1体を斬り、2体3体と攻撃して倒す。

 スライム先生は斬られてもパンッ!と弾けるが、自爆特攻も仕掛けて来るアグレッシブなほうだった。


 斬り付けて弾ける前に移動して次を攻撃、そして足を止めずにさらに次へ。


 失敗すると弾けるスライム先生の衝撃で吹き飛ばされる。最後に回避し損ねた椛のように。

 ゴロゴロ転がって危うく川に落ちる所だった。


 玄幽たちに「お前なにやってんの?」という顔をされていたが、椛はふふふと余裕ぶった笑いを浮かべながら言ってやった。


「あの爆発を避けながら何体倒せるか勝負だ!自爆されたらノーカンだからな!」

「ガウ!?」

「きゃうんっ!?」

「大丈夫、レベル30だからちょっとびっくりするだけで、たいしたダメージはないから」


 今日の椛は大怪盗さんの防具だが、HPはほとんど減っていない。筋力極振りでもレベル差40は大きすぎたのだろう。


 玄幽と流星は「ええ〜?」と嫌そうにしていたが、月牙が「乗れ。手本を見せてやろう」という様子だったので任せてみたら、風のように駆け抜けながら全て爪で切り裂き、ほぼ同時に倒したらしい。


 8体はいたのにパパパンッ!で終わった。


「…流星!月牙が強すぎるんですけど!?」

「あんっ!あんあんっ!」

「ガウ!」


 流星と玄幽も月牙の鮮やかな戦いに大興奮である。

 もしかして激レア枠の騎獣って騎獣界のランクS以上確定なの!?と聞きたくなってしまった。


 騎乗攻撃の出番はあまりないので、だからどうしたという話ではあったが。


 その後、流星は月牙の真似をしてもなかなか上手く行かないし、玄幽はカタナは不利だ双剣を貸せ!と言って双剣で遊び…訓練し始めた。


 この日の優勝は文句なしに月牙だった。

 でも何度やっても月牙に勝てる気がしない椛だった。






□月牙が特別強いという訳ではなく、騎獣はみんな強いです。スキルなどは使えないし、騎乗スキル必須だし、使う場面はほぼないですが

□海の騎獣なら高速泳法の小魚たちを蹴散らしてくれて頼もしいと思います

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― 新着の感想 ―
スライムくん、もうスライム先生の群れ?の中に投げ捨てようよ
スライム先生、世が世ならきっとぷよぷよって呼ばれてたはず うまいこと群れ同士を誘導して連鎖増やす遊びをしてるプレイヤーいそう
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