242プレイ目 ケージン
判明している最後の救援クエストがあるログソス王国のケージンという街に辿り着いた。
転移門は登録していないし、近くの街すら行っていなかったので、街道を走る時間が長かった。
乗り合い馬車でログアウト中に進めた所もあるが、各街で転移門を登録しようと思うとスキップできなかったのだ。
先日「ここ、前に素通りした街だ…」と二度手間になったせいでもある。
目的地のケージンの街は、ログソス王国の王都ソシリアの西側にあり、ドワーフの国との国境近くに位置している。
ドワーフの国は赤い荒野ばかりなのに、手前のケージンは森も草原も青々としていた。
「見てないけど、国境線はどうなってるの?」
「綺麗に線を引いたように、荒野と草原が分かれていますよ。神代の昔から国境は変わっていないそうですから」
「何かくっきり分かれてる理由があるのだろうか…」
エルフの国の森と砂漠の境界も不自然だったが、こちらも同じくらい怪しい。
ドワーフたちは緑の大地を求めなかったのだろうか。
気にはなるのだが、椛はやる事リストを思い出して好奇心は仕舞い込んだ。
ケージンの冒険者組合で受付嬢に尋ねている所だが、まずは救援クエストだ。
それからグルメオークションで金策して上位職に転職して、装備を新調するために素材集めをして、2周年イベント前半戦が開催中なのでプレゼントボックスの乱獲をして、召喚獣たちの見た目装備の相談を裁縫師たちにして、そのための素材集めも必要だろうしアクセサリーも作りたいし、それからそれから…
…なんかあった気がするのに思い出せないが、期間限定のイベントが最優先だ。きっと。フィギュアが可愛いから無限に集めたい。
見た目装備も早く手をつけたいが期間限定なので優先度が上なのだ。
「天使と小妖精のフィギュア集めなきゃ!」
「全て可愛いですけど、中でも特に可愛いですからね!」
「ね!」
ミルクとブルーのほうが可愛いが(親馬鹿視点)、男女のフィギュアがあって可愛いのだ。
そして裁縫師たちが「着せ替えできる!」と盛り上がっていた。
椛もフィギュア用の衣装は欲しい。見た目装備が先だけど、フィギュア用も欲しいのだ。
裁縫師クランの所にも行かなくてはならないし、素材集めも無限に終わらない気がして来るが欲しいのだから仕方がない。
予定が増えた分だけ何か忘れている気がしないでもなかったが。
ケージンの救援クエストで仲間にできるのは、【ブルーバット】というコウモリの幻獣だ。
ブルーバットは手のひらサイズの小さなコウモリで、青い光沢のある黒いボディにつぶらな青い目をしている。
掲示板に載っていたスクショで見たから間違いないはずだ。
豆電球狸は豆電球がビミョーだし、シルヴェストルは真ん丸ボディでスクショだけだと真の魅力(羽毛の素晴らしい手触り)が伝わらないしで、新発見の幻獣の中ではコウモリが1番人気のようだった。
椛はみんな可愛いと思うし、もちろんコウモリも楽しみである。
「あんなに苦労した魔神どもより、めっちゃ楽しみ…」
「魔神どもは可愛げがないのにゃ」
「みゅっ!」
ケージンの街の近くの森フィールドの奥にある洞窟フィールドにやって来た。
ブルーバットの生息地である。
推奨レベルの低いフィールドなので、なんとなく月詠と天狐を連れていた。
いつもの月牙と流星と玄幽のトリオもいる。
洞窟の中は騎獣で走れないが、歩いて同行するのに支障はない。
「月詠のそれはどういう「みゅっ!」なの…」
「あいつらアイドルのなんたるかを理解してない!と言ってるにゃ」
「みゅっ!」
「自称アイドルは地波と風月だけだよ」
アイドル様から見ると魔神たちはアイドル未満のようである。
アイドル要素はいらないから戦闘力で貢献して欲しいものだ。
天狐はアイドルではなく邪悪の化身のはずだが、何やら小動物同士で仲良く話していた。
たぶん魔神たちをディスってるから同意しているだけなのだろうが、天狐が小狐姿なので一見可愛く見える。
月詠のほうはアイドル視点で怒っているだけだから、邪悪とは程遠いのに。
そんなやり取りを眺めながら進んだ。
出て来る魔物は流星と玄幽が倒してくれる。こちらはスコアを競っている気配だが、楽しそうなので見ていて和む。
つまり邪悪の化身だけが余分だった…と気付いたあたりでブルーバットがたくさんいる場所に到着した。
洞窟の天井に鈴なりである。
個体は可愛くても、群体になると気味が悪く見える不思議。
今回のクエストは「いたずら幻獣を1体でもいいから減らして」系ではなく、「世界一周の夢のお手伝いをしてあげて」だった。
なんで変化球を投げて来たのか分からないが、可愛いので良しとした。
しかし検証クランの召喚士が警告していた。
ここで勧誘するとコウモリの群れが襲って来る(ダメージはない)と…!
みんな世界一周が夢だから。
なんで変化球を投げて来た、運営。
「あ、そこの子、わたしと契約してくれないかな!今目が合った君!」
椛は地雷ワードを避けて、ふと目が合った気がした子に声をかけた。
一緒に世界を回ろうぜ!は禁句である。
ちょっと回りの仲間を見てから、ブルーバットがおずおずと飛んで来た。控えめな性格が伝わって来る。
手の平を差し出せば、ちょこんと停まった。
「名前はコモリとかどう?」
椛のネーミングセンスの限界が透けて見えるが、拒否されなかった。
男の子だと言うのでコモリ君である。
「ボクでいいの?と聞いてるにゃ」
「わたしは直感に従うタイプだからね!目が合った時に運命を感じた!」
「野生動物にゃ」
「みゅ」
「今の「みゅ」はどういう意味なの、アイドル様!?」
天狐に同意していた気がする。
性悪狐の性根が伝染した気がする。
混ぜるな危険の小動物たちだった。
流星は「新しいお友達!」とご機嫌だ。
流星は性悪狐にも影響されない純真無垢の化身なので椛も癒やされる。
やはり流星が椛の最推しである。可愛い。
小動物コンビは送還して帰路についたが、流星のおかげで椛も気分は上々だ。
可愛い仲間も増えたし。
コモリ君も流星は弟分扱いのようで、流星の頭の上で仲良く話しているようだった。
通訳はいらない。いなくても可愛い。
「次はどこ行こうかな。プレゼントボックスがたくさん手に入るならどこでも良い」
「あんっ」
「ガウ」
流星と玄幽は「無限湧き!」と言っている気がする。
「…ゼロイスの西の森は人が多いだろうし…ゴースト千人斬りしたダンジョン…竜宮城の魚は2度と見たくないし…」
高速泳法のクソ魚の群れはむしろトラウマである。
椛だって対等に戦えるのなら楽しめたかもしれない。
思いつかないのでクラメンたちにチャットでオススメを聞いてみた。
あまり期待していなかったが有望な応えが返って来た。
「ドワーフの国のスライム先生は、たくさんいる上に回避の訓練になって楽しいって!」
なんで先生なのか、なんで回避の訓練になるのか良く分からないが、ドワーフの国はすぐ隣である。
ドワーフの英雄の話もあるので行ってみたかった国だ。
他にアテもないので行ってみることに決めた。
「あ、コモリ君。世界の全ての国や街に一緒に行こうね」
生息地では言えなかったが、街の近くまで戻って来ていたので告げた。クエストの内容から、たぶん必要な1言だと思ったのだ。
コモリ君も喜んでくれたようだった。
□裁縫師やアクセサリーを作る細工師の所に行って見た目装備の素材の事を聞いて回収したほうが効率的かと思いますが、プレゼントボックス集めがおざなりになりそうな予感がしたのでスライム先生の所に行きます。




