240プレイ目 ゼロイスからレナス
アルヴィーナ王国の王都ヴィスタに行くと、注文していた家は完成していた。
建物玉に入っているので、アイテムポーチに入れて持ち運び可能だ。
椛は受け取って、転移プレートを使って移住者の街ゼロイスに移動した。
転移プレートは西の大陸のエルフの国の王都に繋げていたが、救援クエストを求めて移動する事を考えたら転移代金を払って別の街に行くほうが速いので上書きしたのだ。
そわそわとクランハウス(建築予定地)から自宅の土地に向かった。
どちらも神殿前広場の近くなので、広場を挟んだ向こう側である。
お店で聞いた注意事項を思い出しながら設置する。向きなどを間違ってもやり直し可能だが、ちょっと緊張した。
いい感じの場所を選んで、建物玉を置いて、ポップアップしたウインドウの確認メッセージにyesを押して完了だ。
ゲームらしくぽんっと家が出現した。
椛の注文したヴィスタの街の住宅をベースにした、白壁に薔薇色の屋根で女性的なフォルムの窓や扉の建物だ。オプションで付けた窓の下のプランターの花も可愛い。
入口にはポストもあるので、ここにレンタル畑の収穫物を配達するように設定変更もしなくては。
そこは商業組合に行く必要があるようなので後にした。
「なんか可愛い女の子が住んでそうだけど…まあいいか」
好みで建てたが、自分で住みたい家とゲーム内で作りたくなる家って別だよね…と思いながら入ってみた。
内装は床や壁は好みで作ったが、家具はまだない。
玄関から廊下が伸び、階段が上に続くが、反対側から地下への階段もあるのだ。
玄関の近くにはいつか転移プレートを置きたいスペースがあるが、観葉植物でも置いて誤魔化せる程度の広さである。
入って右はリビングの予定だが、左は作業部屋の予定だ。生産作業などほとんどしないので、そういう名前の物置きになる気はしている。
2階は椛の寝室と召喚獣たちが遊ぶ部屋。つまり何も考えていないが、リビング2みたいなものだ。
さらに屋根裏部屋もあるが、何のプランもない。何か飾りたくなったら何かの部屋になる、かもしれない。
せっかくだから作ってみただけだ。
でも屋根裏部屋には1つ、置こうと決めていた物がある。
アイテムボックスだ。
「邪魔なアイテムぽいぽいぽーい」
アイテムポーチの中の不用品を全部つっこんでやった。イベントの限定アイテムとか魔物のタマゴとか、捨てたいのに捨てられなかったアレコレを。
一応椛以外は使えない設定にしておいた。
とてもスッキリしたものだ。
ベッドはクリスマスのイベントでたくさん手に入れていたので、とりあえずはそれを置いてログアウトできるようにした。
実は床にゴロ寝でも大丈夫らしいが、ベッドがあるのに使わない理由などない。
他の家具もレイアウトして遊びたくなったが、まだ2周年イベントのプレゼントボックスを1個も手に入れていないのだ。
「出遅れた分、たくさん集めるぞ!」
椛は気合いを入れてから、思い出してフレンドたちにメッセージを送った。注文書に納期も書いてあったので、そこも書いて新居の完成を伝える。
知らないうちにぽつぽつと家が建っていたので1番乗りではないのだが、まだ空き地ばかりの街である。目立つのは当然だろう。
「1等地じゃないし、攻略組の自宅なのかな」
2階の窓から遠くに見える。他の家が建ち並べば見えなくなるような、遠い場所だ。
なんだかんだで2年もやっていて、椛のようなエンジョイ勢より長くログインして、誰よりも早く家を建てている。
なのにスタートダッシュのいざこざで、あんな街の外側近くの立地になってしまった。
こうして見ていると、予約制ではなく現金を揃えた人から買えるシステムにしておけば良かったのでは?という気分になった。
頑張った甲斐がない。
最初は選び放題だやったー、くらいにしか思ってなかったのに、ちょっと申し訳ないような気持ちになっている。
今さら誰かに伝えるようなものではなかったが。
受けたい救援クエストは3つある。
召喚獣を仲間に出来るクエストなので、召喚士なら最優先する事だろう。
うっかり忘れていた話は忘れて、1つ目のクエストを受けるために西の大陸のイズダス帝国のレナスの街に転移門で移動した。
ここは少し前に水属性の加工素材を集めに来た街なので、救援クエストの存在を覚えていれば二度手間にならなかったのに…と思わなくもない。
いや、いつまでも過去を悔やんでいては前に進めない!失敗を糧にして前進あるのみ!
と前向きを装った反省しない人ムーブで冒険者組合に向かった。
良い話っぽい書き方をしていても、反省も改善もしない光属性主人公とか稀に良くいるので、流し読みすると騙されるゾ。
組合の受付嬢たちは人の顔と名前を椛のようにすぐに忘れない優秀な人材ばかりなので、こんにちはと挨拶したら「しばらくぶりですね、椛さん」と返してくれた。
「実は…この街に救援クエストがあったと聞きまして…」
「はい、ございます。お受けになられますか?」
「受けますとも!」
即答しながらも、クエストの内容はちゃんと確認する。仕事の書類はちゃんと読まないと大惨事になるので、その辺りは習慣みたいなものだ。
確認したがクエスト内容は掲示板にあった通りのものだった。
「『光るお豆ちゃん!』というクエスト名は、どちら様の命名なの?」
「企業秘密です」
クエストの依頼人は冒険者組合なので、組合の職員が考えたと推測できる。
何故こんなクエスト名にしたのか不明だ。
「なんか、手のひらサイズの豆狸っぽい幻獣なんだよね?頭に豆電球…じゃなくて、光る帽子っぽいものをかぶっているとか」
「そうなんです。可愛いんですけど、ちょっといたずら好きで…」
いつもの「1体でも良いから減らして」系のクエストだ。バトルは発生しないタイプだと掲示板には書いてあった。
バトルしてから契約することも出来るらしいが、戦う必要はない。
スクショも載っていたから見た目も判明しているのだが、何を思ってデザインしたのかは不明だ。
なんで頭の上に豆電球がくっついてるの。
ちなみに種族名は【豆電球狸】だ。公星と同じく読み方は不明。
プレイヤーたちはお豆とか豆ちゃんと呼んでいる。電球に言及する人は少ない。
「なあなあ!青い猪は捕まえに行くのか?」
「捕ってくる冒険者が他にいないんだよな」
「え〜…美味しかったから確保しておきたいし、時間もあるから行くけど、赤い猪を手に入れて来たぜ!」
酒場にいた冒険者NPCたちにも覚えられていた。たぶん猪ハンターとしてだが、美味しい猪肉を確保したい椛は否定できないので聞き流す。
アンセムの街の周辺で手に入るから多めに在庫のある赤い猪を買い取り窓口に出しておいた。
フィールドから戻って来る頃には限定メニューが出ているに違いない。
喜ぶ冒険者NPCたちと職員たち、もちろん張り切る酒場のマスターを見て確信した。
次の街は転移門に未登録のため船で行くので、組合酒場で食事をしたら旅立つ予定だった。
□お豆ちゃんは次回登場します
□197プレイ目で、レナスの街でシラベから救援クエストの話を聞いていましたが、聞いたのに受付嬢に確認しなかった主人公がいるらしい
(まさにレナスで聞いた話だったことにも気付いていない)
□あの時点で検証クランの召喚士が見つけていたのは、他の2ヶ所のどちらかだったと思われます
(レナスのダンジョンの情報は検証クランの召喚士とは別のメンバーが得たもの)




