235プレイ目 ブロム?
ルヴィスの街で無事にストロベリーを手に入れた椛は、転移門で王都ヴィスタに移動した。
ログインして間もないため時間はたっぷりある。
ということで、月牙に乗って、流星と一緒にドライブだ。
王都からイスタルまでは少し遠いので時間はかかったが、馬車より早く着く。
急いで救援クエストを受けて、陸と再会してから神殿の転移の間へ。
登録がてらカレルの街へ転移した。
馬車が使えないので騎獣でドゥナンまで移動して、そこから乗り合い馬車でハトロワまで行く。
ログアウト中に着くので、アンセムには寄らないことにした。
翌日はハトロワの街からスタートだが、船での移動である。
闘技場に直行したい気持ちと、鬼女たちのせいでほとんど観光も出来ていない王都ブロムに行きたい気持ち。
天秤にかけてブロムを選んだ。
あそこのイベントが進まないと、いつ行けるか分からないのだ。闘技場にはけっこう滞在していたので新鮮味はない。
闘技場に求めているのは覇王の試合だから、新鮮味はどうでもいいのだが。
船旅も飽きるのでちょっとログアウトして時間を調整して、久しぶりにブローゼスト王国の王都ブロムにやって来た。
正確には鬼女たちが発狂しない、一見平和なブロムが久しぶりなのだった。
タイムアタックみたいな日々だったので、椛はなんだか久しぶりにのんびり街を歩いていた。
女性NPCを見るとついギクリとしてしまうが、鬼女化していないと普通の人にしか見えなかった。
危険な時間帯に騎士団が巡回するコースに近付かなければ、驚くほどに普通である。
商業組合で店舗情報をもらったので、この機会にどんな店があるのか確認して回る。
噂だけ聞いていた高級フルーツも発見した。
幻の枇杷のおかげでまだお金はあるが、こちらも買うのはためらわれる値段だ。
食べてみたいが見送った。根が小市民なのだと自覚したものだ。
代わりにリーズナブルなクレープを買って食べる。南国フルーツたっぷりでお得感があった。
そういえば他の人たち、今どこにいるのかなと思い出した。1人で歩くのが物足りなくなったせいかもしれない。
ガウガウ言うだけの玄幽すらいないから。
フレンドたちに短いチャットを送る。
すぐに簡単な返事をしてくれる者もいた。
召喚士ではないので集める仲間が少なかったからか、とっくに闘技場に着いていた者もいれば、レベルが低いから難易度上がるーとか言いながら秘境アタックしている秘境ハンターもいたし、南国リゾートの島で海の騎獣で遊んでいる者もいた。
椛もリゾートの島には行きたくなった。
検証クランは「俺の屍を越えて行け!」ごっこをして、荒野から出られないでいたプレイヤーをアンセムに送ったらしい。
誰かが森の主を引き付けている間に駆け抜ければ、戦わなくても森を突破できたそうだ。
2年越しにスタートダッシュのからくりが判明した!とか言っているから善意ではなさそうだが、人の役に立つのは良いことだろう。
だが気にしていなかったが、あそこはそんな仕組みだったようだ。
3000人の集団が1丸となって駆け抜けて行ったとか、それだけで全て蹴散らせそうだから深く考えていなかったのかもしれない。
主どんは強いボスだがレイドボスではないのだ。
商店街にある休憩スペースで返って来たメッセージを読んでいたら、プレイヤーの集団がぞろぞろと通りすぎて行った。
まだくそダサ…初期服を着ている者が多かったから、ひと目で分かった。
アバターそのものは気合いを入れて美女にしている女性ばっかりなので、余計に残念に映った。お金が足りないとか、そういう理由なのだろう。
ついでにジーク様ジーク様と禁句を口にしていたので、ジーク様ファンなのだろう。
帝国は遠くて行けないからとこちらに来たランスロット様ファンが混じっていないとは言ってない。
帝都レイルで見た気がする連中がいたからだ。
嫌なものを見た椛は、景色の良い場所をその辺の店の人に聞いて訪れてみた。
住宅街にある公園で、海が見える丘の上にあった。街の中にさほど起伏があるようには思えなかったが、ほとんど入らない住宅街のほうは坂道も多いらしい。
こっちのほう、外からもほとんど見ないからなあと思う。
住宅街は街の南西部にあり、賑わう港から少し外れた海軍基地の側だった。
イベントの時に1泊したはずだが、街のほうを見た記憶がない。
海側から見ると海軍基地の立派な建物が目立つので、その後ろの住宅街には目が行かなかったようだ。
ついでに北門と東門は使ったが、西門は行ったこともなかった。そちらから伸びる街道を進めば行ける街はあるのだが。
マップと見比べて、こんな場所があったんだなあ、夕陽が綺麗に見えそうだなあとのんびり過ごす。
恋愛ゲームならデートスポットに違いない。
だとしたら他のデートスポットはとマップを見て妄想していたら、背後から足音が聞こえて来た。
それが耳につくくらいに静かだったとも言える。
何気なく振り向けば、朱く輝く黄金の髪と瞳の美しい男がいた。椛は見た瞬間に震え出して止まらなくなった。
──恐怖のデバフのせいで。
「移住者たちは神から聞いてないの?時の獣は東にいるよ」
意味の分からないことを言っていたが、椛が青ざめて震えていることには気付いたらしい。
足を止めて、小首をかしげた。
「うーん、移住者ってもう少し特別かと思ったけど…違うんだね」
そう言うなり、恐怖のデバフが消えた。
椛は震えが止まり、でも元凶が目の前にいるのにと混乱した。
「力を抑えただけだよ。こうすれば分からないからね」
「え、あの」
「時の獣は東だよ。女狐のいた国だ」
「ヤマト国?いや、トシュメッツ?」
時の獣ってなんだよ!と言いたいのを堪えて問えば、恐怖の存在は「海は越えないほう」と言い残して引き返して行った。
そして住民NPCたちは何も感じないようで、すれ違っても何も反応していなかった。
いや、あの見た目なのに無反応すぎた。
鬼女たちが目の色を変えて群がって行きそうな美貌なのに。
「…何あれ…」
なんのイベントだったのか。
検証クランに丸投げしたくなったのだった。
時の獣がどうこうと言いに来る謎の存在の話は、掲示板で話題になっていた。
椛が見た紅い男以外にも、何人かいるらしい。
恐怖のデバフを食らっておきながらスクショを撮った猛者たちもいたらしいが、撮れてなかった!と喚いていた。
出会った人以外には見せない仕様らしい。
「闘技場…覇王…」
行きたかったが、諦めるしかなさそうだった。
だいたい半月が過ぎた頃にイベントの存在を主張し始めました
□朱く輝く黄金は、炎のイメージで…
□生産職(バトルをしない派)は夜香花で金策できない分、序盤はお金がないので帝国まで馬車で行くのはかなりキツい(でも利幅は大きいので作れば作っただけ儲かる)
□ブローゼスト王国なら何日か生産を頑張れば馬車と船で行け設定




