234プレイ目 ラヴィナ?
幻の果物、枇杷を売って数十万Rを手に入れた椛は、その足で乗り合い馬車のところへ行って、チケットを買って乗り込んだ。
出発前に乗り込んでおけば、ログアウトしていても目的地に運んでくれるシステムだ。
数千Rかかるので宿代わりに使う者はいないだろうが、宿と同じく安全性は保証されている。
翌日はドゥナンの街に着いていたので転移門に登録して、そこで召喚士に転職してから救援クエストを受けてシゲミと再会した。
契約した当初は好感度が底値じゃないだろうかと不安だったシゲミだが、いつの間にか《メモリアル・リンク》が発動するくらいには仲良くなれていたようだ。
実はいまだに良く分からん子ではある。
そしてドゥナンから隣の国へ行く馬車は出ていないので、その日は急いで国境を越えてアルヴィーナ王国へ入った。
カレルの街までは徒歩で行き、その日はカレルの宿でログアウトした。
本当は馬車で王都に向かいたかったのだが、ただでさえ気難しいフクロウが素通りされた後回しにされた、と怒ったら困る。
という訳で推奨レベル50の森フィールドに突入して頑張ったという実績作りに向かった。
森の近くまで行ったら賢翼のほうから出て来てくれたのでちょっと感動してしまった。
《メモリアル・リンク》発動のすぐ後に、草原の魔物に襲われて神殿送りになったが。
森の隣の草原フィールドは推奨レベル40だった。森に近付けただけ運が良かった。
転移門に忘れずに登録してあったので、カレルに戻った椛はすぐに乗り合い馬車で王都ヴィスタに向かった。
時間はあったが馬車の旅は暇なので、ログアウトしてスキップしてしまった。
現実で動画を眺めたり、新作ゲームの情報を調べたりしている間に王都に着く時間になった。
再ログインして王都の冒険者組合に行き、召喚士の職クエストを受けた。
クエストの前に転移門を登録して、急いで〈召喚士友の会〉に向かう。
うるさいことを言われたくなかったので『召喚術入門』に載っているマギオウルを見せ、会長を急かしてクエストを進めた。
《メモリアル・リンク》のおかげできっと最速記録を更新できただろう。
「あとはミルクと雷玉!そしたら馬車に乗るぞ!」
王都から騎獣平原のあるラヴィナまで馬車で2日かかるのだ。ログアウト中に向かわないとプレイ時間が大きく削られてしまう。
そのため今日中に回収するぞ、と気合いを入れた椛だった。
翌日ログインすると、椛はラヴィナの街に到着していた。
ログアウト中の時間を移動に活用できるので、転移門より安いし案外便利である。
騎獣で移動するほうが楽しいので、あまり活用していなかったが。
騎獣平原に行きたい気持ちを抑えて神殿に転移門の登録に向かった。
召喚獣はともかく騎獣はバトルが必須かもしれない。その時はレベル30近くまでここで上げなくてはならないのだ。
大丈夫だとは思うが、王都の神殿に送られては困る。
途中で冒険者組合に一応寄ってから、急いで登録して北門に引き返した。
街の外に出て堪らずに駆け出す。召喚獣たちはみんな可愛い(一部例外あり)のだが、流星と月牙は別格だ。早く会ってモフりたい。
騎獣平原にすでにくそダサ…初期服のプレイヤーたちが何人もいたので少し驚いたが、廃人たちはログイン時間が違うのだ。そんな人もいるだろう。
そちらには構わずに狼たちのいるエリアに向かう。このあたりにもプレイヤーたちがうろついていたが、ここで《メモリアル・リンク》が発動して、無から流星と月牙が現われた。
「おおおー!流星ー!月牙ー!」
「あんっ」
「うおん」
どこから来たのか不明だが、いつもどこからか召喚しているのだ。さして気にせず椛は2頭に抱きついた。
心配したバトルも必要なかったし、このままモフって過ごしたい。
そんな椛にくそダサ初期服の連中が水をさして来た。
「てめえ、何しやがった!」
「先に銀狼探してたのおれたちなんだぞ!」
「あ?《メモリアル・リンク》も知らねえ情弱が何言ってんだ」
よりによって流星の横取りを狙っていたという。
世が世なら、ソッコーでKillしていたところだ。
おおいに煽って後悔させてやりたい気分だが、そんなことより椛は愛狼たちと戯れたいのである。
さっさと月牙にまたがった。
目指すは推奨レベル50の遺跡フィールドである。忍者ハムスターも迎えに行かねばならなかった。
椛はレベル12だが、召喚獣たちはレベル1である。全然バトルをしていないから。
1番レベルが高いのは騎獣の月牙でレベル35だが、騎乗スキルがないので戦えない。
そんな状況でも遺跡にたどり着いた。
召喚獣たちは待っている設定なのか、生息するフィールドに近付くと出て来てくれるので、まだ良かった。
星影も入口から出て来てくれたものだ。
「次は、月詠のためにストロベリーを買って、お金あるから転移門で王都に戻って、陸を迎えにイスタルに行こうかな」
転移門はランクC以下では国外に転移できないが、同一国内なら利用可能だ。事前に登録しておく必要はあるので、最初は馬車や騎獣で行くしかないが。
東の端のイスタルの街に行っても、やはり転移でカレルに戻って来ればたいしたロスではない。
カレルからドゥナンまでは月牙に乗って走ればいい。
ドゥナンからアンセムには、時間があれば転移門を使い、ログアウトするなら馬車で良いだろう。
先のことを考えなくて良いので、お金があれば転移門を使いまくってしまう。
という訳で予定を立てたが、ストロベリーを売っているルヴィスの街に着いたのが夕方近くだったせいで売り切れていたため、1泊することになった。
そんなに予定通りに進むものではなかった。
時間が出来たので、椛は宿の部屋で掲示板をチェックしていた。
流星をモフりたいが、今はミルクとブルーを召喚して可愛いを堪能している。
「あの情弱ザマァ…じゃなかった、あいつら何だったのかな」
銀狼を横取りしようと狙っていたらしいが、なんで出来ると思ったのか。
いや、いつもどこでも自分に都合良く解釈する連中はいるけど。
ちょっと調べてみたら、激レアな伝説の幻獣として銀狼を狙って騎獣平原にほぼ住み着いている二陣の連中らしい。
隣のサーバーではそこそこ有名なヒマ人たちだった。
確かに流星は唯一無二だけど、と椛も呆れる。どこにいたのか情報を出した覚えはあるが、絶対にそこに出現するとは言っていないのだ。
あえて言うなら月牙の側にいただけである。
「まあ、流星は最高にミステリアスな可愛い狼だけど…」
イレギュラーすぎて良く分からない存在だ。
隣のサーバーにもいるかもしれないし、いないかもしれない。
いなかったら二陣の人は怒っていい。
他にも激レアなものはたくさんあるはずだし、遊びを捨ててまで求める気持ちは分からない。椛だって《メモリアル・リンク》なんてものがなかったら、探す気にならなかっただろう。
1ヶ月で消える限定空間でもあるし。
一応疑問は解消したので、他の情報を探す。
アイドル様を探す連中のことは見なかったことにしたい。
《メモリアル・リンク》で取り戻したはずだ、絶対に見つけてやる、とか言っているのだ。他人の迷惑を考えない連中の気配しかしていなかった。
二陣にはアイドル様を揉みくちゃにするタイプが多い可能性が高かったことも思い出した。宣伝PVに釣られた連中だから。
アイドル様動画を上げようかと思ったが、やめておいた。
でもお蔵入りも残念なので、バニーちゃん以外求めてなさそうな人を除いたフレンドたちにメールに添付して送っておいた。
いらなかったら削除するだろう。
放っておいてもあと20日くらいで消える世界だけど。




