226プレイ目 ゼディルバ
クストー王国のコートルの街は帝国が攻めて来ないとお祭り騒ぎだが、次なる襲撃者たちは決まっている。
小妖精並みに可愛い葉精を求める移住者の群れが押し寄せるだろう。
住民たちに被害は及ばないだろうが、場合によっては阿鼻叫喚の地獄と化す。
そう、メイン職を召喚士にしていないと見えない呪いがかかっていた場合は絶望の叫びが絶えないことだろう。
椛は巻き込まれる前にコートルを離れた。
発見して掲示板に証拠のスクショを載せて、連中を招いたのは椛なのだから。
スクショ1枚だけしか載せていないし、探し方は各自で考えて貰う方針だ。
人によっては長い滞在になる、かもしれない。
ということで、パンダを求めて西の大陸のゼネイド王国のゼディルバという港街に転移門で移動して来た。
陸路でコートルからゼロイスの街まで戻ると何日かかるか計算して、エルフの国で花蜜を集めて売ったほうが早い!と思ってしまったからだ。
こうして人は散財に慣れて行くのかもしれない。
転移で一瞬で移動できるのはやはり快適だった。代金以外は。
ゼネイド王国はエルフの国エルスティの西にある国だ。兎の国に向かう時にガーネティ湾岸の街道を走っていて、通りがかった街がゼディルバだ。
この国は農業と畜産が盛んで、森しかないエルフの国や、赤い荒野しかないドワーフの国に食糧を多く輸出している。
もちろんそれ以外の国との交易もあり、港街は貿易港として賑わっていた。
ゼディルバから北西に向かえばパンダがいる中華モチーフの国メイファに行ける。
パンダを探しながら中華料理を楽しめるので椛も早く行きたいところだが、この国も食材が豊かで料理が美味しいのだ。
船で渡ればカレーの国…ではなく古サマリータ王国とも近いため、港でスパイスが豊富に売られている。もちろん中華料理の国からも食材は入って来やすい。
ということで西の大陸に渡った料理人プレイヤーが拠点として滞在している人気の街なのだ。
商店街にあるプレイヤーたちの屋台が並ぶ通りに来た椛は、高品質の料理を食べて歩いて目的を見失いかけていた。
ここが楽園か、理想郷か。
「カレーパンが最高すぎる…!」
「いい出来だろ。ライスが手に入らなすぎて、パン作りの腕が上がった結果さ…」
「ナンとか駄目なの?」
「もちろん作ってるけど、屋台だと手軽なカレーパンが売れるからな」
通りにはテーブルが用意されている場所もあるが、持ち帰りしやすい料理のほうが人気らしい。
それならカレーライスも駄目だと思うかもしれないが、あれは飲み物だ、と言い出す者がいる人気メニューである。
きっと屋台だろうとカレーライスは人気メニューになる。椛もそう思った。
とりあえずカレーパンを上限の10個買って次の屋台へ。購入制限がつく人気メニューらしいので仕方がない。NPCたちも楽しそうに買いに来ていたものだ。
肉と野菜だけではなく、港なので魚介類も豊富だ。
魚のフライのバーガーが売っていたので、これも1個食べてみてからまとめ買いした。
「何の魚だか知らないけど美味しい!ソースも美味しい!バンズも美味しい!」
「魚はタラだよ。やっぱりフィッシュバーガーには合うよな」
「あ、タラか。いつも気にしてなかったけど、そういえばタラだね」
この屋台にはフライのセットなども売っていたので、それも買い込む。牡蠣フライはなかったが、どれもビールを飲みながら摘みたい味だった。
むしろ美味しいビールが飲みたくなった。
「酒作りしてるクランはないの?」
「アルヴィーナ王国にいると思う。米ぇって言いながらビールとか果実酒を作ってるらしいよ」
掲示板に出没するので知っていたそうだ。ワインは貴族のものなので作れないが、それ以外は規制されていない。
隣のトシュメッツ国ならその規制もないので、ワイン作りもしているらしい。
そのうち探したい料理人たちだった。
屋台にはスイーツ系もあったが、カレー屋が多い印象だった。どこもスパイスの配合などで味が違うので、食べ比べも楽しい。
中華の国にも料理人プレイヤーたちがいるのかな、と思ったところで目的地を思い出した。
そしてまだ冒険者組合に行っていないことも。
「でも何日かここに滞在してもいいよね!」
ちょっと予定を変更した椛だった。
冒険者組合でゼディルバの街の周辺の情報を仕入れた椛は、推奨レベル70の森に来ていた。
ここで捕れるレア枠の鹿がとにかく美味い!と力説されたからだ。
レア枠だからどのくらいの割合で捕れるか不明だが、幻の鰐よりはきっとマシだ。
「色違いのリスが出るけど、あいつら本当に殺意高いなあ…」
「地属性だからボクの敵じゃないよ、主」
森の中で出現する魔物のリスたちは、たまにレベル73が5体で襲って来るのだ。
あいつらだけ推奨レベルのギリギリ上限を狙って最大数で襲って来ることが多い気がする。
小型で素早くて、攻撃が当てにくい連中である。代わりに攻撃力は低めでHPは少ない調整だが、トラウマ製造機の異名持ちだ。
椛が付けた異名だが。
しかしここのリスは地属性で風属性に弱いため、風の魔神の風月とマギオウルの賢翼を交互に召喚すれば、だいぶ楽に戦えた。風の範囲攻撃魔法が強い。
「活躍してるんだから、また街でも呼んで欲しいな」
「…目の色を変えた移住者の群れが襲って来るだけなのに?」
「…なんで移住者たちがそこまで目の色を変えるの!?」
街で女の子たち(主にNPC)にちやほやされたい風月だが、まだ他の召喚士が魔神と契約したという話は聞かない。
するとしても、1番易しい地の魔神からになるだろうと椛は思っていた。
まあ、ロリに興味なんてねえのよ!と風の魔神から狙う人だっているとは思う。
自分で契約する人は椛の所に来ないだろうから、頑張ってと遠い空の下から応援するのもやぶさかではない。
なので珍しがって群がって来るだろうと思われた。あとショタコンたちは流行が廃れようとも襲って来るだろう。
「あ、青りんごだ!伐採伐採」
この森のもうひとつの目玉である果樹を発見した。りんごはどこにでもあるが、青りんごは珍しいのだ。
この森にしか自生していないくらいに。
思い出したので周囲の木も伐採して、木材と苗を手に入れた。覚えていたらドゥナンの街に持って行こう。
「移住者たちの脅威はいつ消えるの?」
「他の召喚士たちが風の魔神と契約して、珍しくなくなったら?」
「えー、ボク以外の魔神はこっちに来なくてもいいのに…」
「それだと一生珍獣枠じゃないかな…」
風月は不満そうだが、椛は早く魔神が増えて欲しい。
ウザい魔神たちだって、他のプレイヤーの所にいるだけならウザくないだろうし。
主どん
主に
主
主よ
たくさんの読み方があるので、毎回ルビ振るべきか悩む漢字ナンバーワン
□掲示板に載せたスクショには葉精がたくさん写っていたので、プレイヤーたちを勘違いさせたかもしれない…(無自覚)
可愛い子たちがたくさん写っているほうが喜ばれるかなって(よかれと思って)
(いつもの通り魔事件)
□椛が聞いていないだけなので、魔神を手に入れたプレイヤーが他にいないとは限りません。
作中に出て来ないから、いないも同然なだけで




