225プレイ目 レイルからコートル
クエスト『邪神教団・ハイレオン帝国編』が終了した。
再挑戦不可能なクエストだが、邪神の像の破壊数が1体足りないとか、砦の街フェンの指揮官に関連するイベントが未クリアだったとかで、トゥルーエンドとかパーフェクトではなかったが、ノーマルエンドくらいの評価だった。
特別な報酬はなかったが、1連の流れの中で貰えた《神殺しの塔》装備が1番の収穫だろう。
別ルートで入手してしまっていた椛もやっとスッキリした。
早々に作られていた公式PVを視聴して、椛の召喚獣のはずなのに筆頭騎士様の相棒みたいな顔をしているアイドル様にビミョーな気分になりながらも、13騎士たちが公開されたので見比べてみた。
もちろん覚えきれなかった。
などとログイン直後の宿の部屋で肉まんとか焼き鳥をもぐもぐしながら確認していたが、メッセージもそこそこ届いていた。
アイドル様の新作動画を掲示板に上げる頃合いだ、と示し合わせたような内容だ。
しかし椛は何か、いや誰かに見せたくなくて上げていなかった気が…忘れる程度の話っぽいけど。
椛の撮ったものより公式PVのほうがアングルなどの見せ方がプロの仕事なので、比べられるのヤダな…と新たな理由が出て来たので止めておいた。
オプションのランスロット様の存在感も凄まじいし。
「そうだ。コロボックル探し!」
可愛い子の話なので椛も覚えていた。パンダも早く仲間にしたいが、場所の確認を先にしておきたい。
「あった、これか。えーと…コートルの街…クストー王国…」
どこだっけとマップを見れば、ハイレオン帝国の隣の小国だった。しかも砦の街フェンからすぐ側の国境の街である。
「ああ、クストー王国って喪中の国…今回のイベントで改善されたのかな」
喪中ではないがそんな雰囲気の国だった。ゴーストタウン一歩手前というか。
とにかく近いので、こちらを先に探してみることにしたのだった。
帝都レイルから砦の街フェンを素通りしてクストー王国の国境の街コートルまで騎獣で駆けて来た。お供の流星も一緒である。
街の東門が関所の役目をしていたので、そこで冒険者カードを提示して中に入った。
前回も来たことを椛も思い出して来た。
神殿で転移門は登録してあるはずなので、商店街をそぞろ歩きながら冒険者組合に向かった。
「こんにちは。なんかお祭り騒ぎ?」
「やあ、冒険者さん。帝国の脅威が消えた!…ってことはないんだけど、戦争の可能性がだいぶ薄れたんだよ」
「向こうの砦で何かあったらしくてね。当分は安心して暮らせそうだよ」
ゲーム的なスピード展開だが、お通夜で喪中の雰囲気が解消されたのはいい事だ。あれは居心地が悪かった。
通行人のNPCたちや店の人と話して歩く。まだ閉店の札がかかった店も多いが、活気のある街並みになって来ていた。
大きなイベントのあとに再開する店にはレアアイテムが売っているのが定番だが、探して回るのは検証クランにでも任せて椛は買い食いしながら組合へ。
冒険者組合の中も明るい雰囲気になっていた。
受付嬢に声をかけて冒険者カードの照合をしてもらう。
「お祭り騒ぎだし、秘蔵のミルク牛でも売っちゃおうかな」
「まあ!ありがとうございます」
在庫の問題で1頭だけだが、買い取り窓口にまるごと売る。騎士団のように人が多い訳ではないので、とりあえずは充分だろう。
おまけで同じ牧場フィールドのミルクとチーズも売っておいた。
そして椛はコロボックルがいるかもしれない草原フィールドの情報を得るために、2階の資料室に向かった。
幻のツチノコを探す気分だったが、もちろんそういうのも嫌いじゃない。
さっそく椛が来たのは、推奨レベル50の草原フィールドだった。
騎獣の月牙と流星と、今回の主役のかくれんぼ師匠を召喚した。
「こら待て、任務を聞いてからにしろ」
星影が「じゃ、行って来らあ」とばかりに去りかけたので、椛は慌てて捕まえた。
任務の1言に星影も一応大人しく話を聞いている。
「この草原には小妖精に似た可愛い幻獣が棲んでいるらしい。仲間にスカウトしたいから是非とも発見して来てくれたまえ!」
ラジャー!と敬礼した星影は、何故か流星に乗って行ってしまった。流星もご機嫌でかくれんぼ師匠の任務について行ってしまった。
月牙は椛の隣で見送っている。
「…戦闘員…魔神でも呼ぶか」
バトル以外で召喚しないので、たまにはコミュニケーションを図るのも良いだろう。街で連れ歩く気にはならないし。
あとは採取のお手伝いで天使のミルクを呼んだ。
「という訳で、わたしはミルクと採取してるから魔物が来たら殺っといて」
「え〜?」
「レベル50の雑魚なら余裕でしょ」
コミュニケーションとは。
新参の水蓮からエントリーした。下手に他の魔神を呼ぶとケンカを始めるので、1体ずつだ。
ユニゾン魔法は使えるのに、何故仲が悪いのか…
ヒマ寂しいとうるさいのでサボを呼んで、植木鉢を出して水蓮に持たせる。
「…お水!ってすごい好意的…!」
サボテンそっくりのサボはお水が大好きだ。
水の魔神にぴったりだった。
罠も忘れずに仕掛けて回り、採取して過ごした。
水蓮はサボの踊りを見て、とりあえずは大人しく魔物を倒していたものだ。
さらに30分ほど過ぎて、流星はともかく星影は遊んでいて忘れてるのでは…でも流星が真面目に…いや流星も他のことに興味を惹かれると直前までのことを忘れるお子様思考だな…
などと椛が思い始めた頃、流星が星影を乗せて帰って来た。背中になんか妖精さんたちをたくさん乗せているように見えた。
「お友達ーって銀狼の仔が言ってるわね」
「…通訳して欲しい気持ちとされたくない気持ち…」
「どっちなの、主」
流星の言葉が分かるのは嬉しいが、他人に言われたくないというか。椛の解釈が間違っていたら悲しいというか。
「公星は選り取りみどりだぜって言ってるわよ」
「仲間にできるのは1体だけなんだよ、星影…」
連行されて困ってないかと思ったが、案外楽しそうにしている。
スクショが止まらない。
「誰かわたしと契約してもらえないかな?」
椛がそう声をかけると、そういうのはちょっと…みたいな反応が多くてがっかりした。
だが数撃ちゃ当たる作戦だったのか、ちょっと大人しめの女の子が契約してくれた。
葉っぱの傘を持っていて、アイヌの民族衣装っぽいデザインの服装なのでまさにコロボックルという見た目だが、種族名は【葉精】だった。
水属性と木属性持ちである。
「名前はクルルとかどう?」
コロボックルのクルだが、シンプルなほうが可愛いこともある。
不満はなさそうなので決定だ。
葉精たちは小妖精と違って黒い髪と眼をしたものしかいないようだが、衣装はカラフルだった。クルルの場合は緑ベースに差し色のピンクが入っている。
お花みたいで可愛かった。
「星影と流星、任務ご苦労!無事に仲間が増えました!」
「じゃあ、俺は行くぜ!時間の許す限り!って言ってたわよ」
「…放っておこう」
「あんっ」
星影は去った。流星も置いて。
だが葉精たちは白い忍者の影を追って行く。
「待ってくれ、星影の兄貴ー!忍者の極意をまだ教わってないぜー!とか言ってるわね…」
「…クルルも忍者!?」
「その子は違うわね。くノ一よ」
同じじゃねえか!と言いかけたが、クルルが可愛く照れ照れしているので堪えた。
忍者好きな幻獣が多すぎる。
「…かくれんぼ好き?」
「あんっ」
流星が「大好き!」と言っている。
クルルも目を煌めかせていた。
忍者とは、かくれんぼのこと…なのかもしれない。
ブリリアントなホースは隠れる気がないはずだが、だからこそ憧れるのかもしれない。
全ては推測だが、あえて確かめる気にはならなかった。




