223プレイ目 レイル
邪神の像は椛が予測した怪しい山の洞窟で発見されたそうだ。ワールドアナウンスが流れて、全ての邪神の像が発見されましたとクエスト進行の知らせも出た。
帝都の騎士団で共闘依頼のクエストの説明も受けたので、あとはバトルパートを残すのみというところのようだ。
「『邪神教団・ハイレオン帝国編』の次のお題が、騎士団と協力して邪神の像を全て破壊しようだから、これで終わりだよね」
「共闘クエストに参加すれば騎士団で担当場所を割り振って、転移門で現地に行くから帝都で待機していてくれって言ってたから、もう待つだけだろ」
転移代は騎士団持ちらしいので、プレイヤーの人数が偏ってイベント失敗という可能性も低い。
たまに「金取るのかよ!」とケチって参加しない人とかいるからネ…報酬のほうが良いと思うのだが、考え方は人それぞれだ。
椛はまた帝都のプレイヤー人口が増えて居場所に困ったクランのメンバーたちと、住宅街の公園に集まっていた。
今日も子供たちはぽよちーと遊んでいる。
イベントの話をして、何か見落としていないか相談していた。失敗ルートの可能性は減っているはずだが、失敗して滅亡した光景が衝撃的すぎて不安になるのかもしれない。
「ここまで大掛かりなイベントだし、全ての像を破壊したらレイド戦が始まらないかな」
「いいよな、レイド戦。倒せる範囲の強さなら」
「東の海のカニも戦いたい。ヤマト国…」
「分かる!美味い鶏肉と卵を手に入れたのに、米がない!親子丼!」
「レア牛の牛丼だろ!」
「鶏肉と卵ならチキンカツ丼も良いぞ。もちろん豚カツもな!」
「今の気分は天丼だなあ」
「海鮮丼もいいぞ」
何故か丼もの談議になっていたが。
うな重も食べたい、うなぎは見てない、という話にもなった。ヤマト国に生息しているのか、うなぎ。
ついでに高原の街モーゲンにはグルメハンター(仮)たちがいた話をしておいた。
椛もまた食材集めに行きたい街だった。
「そういえば鬼女どもがいないって喝采上げてる。塔装備をやっと手に入れた連中が」
「毎日毎日邪魔されて…誰もが毎日その時間にインできる訳じゃないからな」
「ああ、イベントそのものは毎日起きてもね…」
イベントが発生する時間は決まっていたようだが、だからこそ休日くらいしかチャンスのなかった人もいたのだろう。
週に1度のチャンスを潰されたら…殺意すら湧きそう。
椛も思い出して…そう、冒険者組合での出来事を思い返してみた。
「垢BAN…悲鳴を上げて消えた連中、レッドゾーンだったのかな…」
「お前かよ、トドメさしたの」
「だって冒険者組合を占拠して、意味不明なこと喚いて他のプレイヤーの邪魔してたから!」
「なんか冒険者組合に入れない、今日はやめておこうって諦めた人の話なら見た」
「見たから近付かなかった」
「どうせイベントの時間になれば、そっち行くだろうし」
掲示板で有名になっていたらしい。
クラメンたちは案外マメに掲示板をチェックしているようだ。
それはともかく、《神殺しの塔》の装備獲得イベントの邪魔もされなくなったので、みんな快適に過ごしているそうだ。
本来なら感じる必要のなかった感慨である。邪魔されないのが普通だから。
椛がトドメをさしたっぽいが、それまでに貯まった業を清算しただけだ。そうでなければ警告1で済んだはずなので。
鬼女の件はそれで納得した椛だった。
タグがいたのでパンダの召喚獣を見せてもらった。住宅街の公園には他のプレイヤーがいないので、タグもこだわりなく召喚していたものだ。
クラメン全員一致で「これは可愛い」と納得した。
そして探しに行こうと。
椛は月詠を召喚する。
対抗するためではない。可愛いと可愛いで相乗効果を期待したのだ。
もちろんコミュ力の高いアイドル様は積極的にパンダと仲良くなっていた。可愛い。
「救援クエストの情報も増えてたし、仲間集めのターンかな。サラマンダーが見つかってないらしいけど」
「防熱スキルがないと紹介されないんじゃねえの?あれ取るとクエストが増えるだろ」
「サラマンダーなら火山とかにいそう」
「…わたし、聞くの忘れるから…」
椛には発見が難しい幻獣のようだ。四大精霊モチーフの火属性担当。
「コロボックルっぽい幻獣を見たって話もあったぞ。逃げられて詳細不明で、小妖精に似た可愛い姿だったって話にプレイヤーが殺到したらしいけど」
「見つからないからガセネタってことになってたな」
「スクショもなかったからなー」
「…天使が見えなかったサブ召喚士の悲劇を思い出したんですが」
召喚士をメイン職にしていないと見えない幻獣もいる。見えないから契約も出来ない。
特に可愛い幻獣に多い設定な気がするのだ。
召喚士のアドバンテージのつもりだろうが、そういうのは魔神シリーズみたいな強力なタイプだけで充分だったのではなかろうか。
「あとで調べて探してみよう…」
椛はメモを書いた。掲示板でネタを探すところから始めないといけない。
「あ、シャドーマンの追加情報とかなかった?」
「追加でなんか情報があるのか?」
「…これは1部の連中には絶対教えないと決めたネタなので、ここだけの話にしていただかねばならないのですが…」
論より証拠と椛は霧影を召喚する。相変わらず黒いモヤにしか見えない姿だ。
「人が多いけど、ちょっとだけ人の姿になって欲しいな」
霧影は恥ずかしがり屋なので、もじもじしていたが椛の要望に応えてくれた。可愛い男の子が現われる。
美少年というより可愛いという感想が先立つタイプである。
でもすぐに恥ずかしがって陰の中に入ってしまった。
「サブ召喚士なら契約できる、救援クエスト産なので…!」
「それは言いたくないな」
「シャドーマンのマンってそういう意味かよ」
「忍者なんだよ」
開発に余程の忍者好きがいたのだろう。
あと腐界の深層の住人もいる開発。
他にも濃いのがいそうだった。
イーグル系の魔物の卵は、食べてみたら無限に回収したくなる味だった。
煮ても焼いても美味しいが、卵を使うレシピは無限にある。スイーツなどにも。
ということでクラメンたちと卵狩りに行って来た。大蜥蜴は酒呑みたちだけが捕まえて、椛は途中にある他のフィールドで普通の兎を捕まえておいた。
月牙がそれなりに喜ぶ獲物である。
「なにこれ、濃厚…!」
「温泉タマゴってこんなに美味かったか?」
帝都には生産職のプレイヤーたちも集まって来ているので、卵持参で行って温泉タマゴを作ってもらったが、悶えるほど美味しかった。
料理人プレイヤーも「牧場の高いほうの卵より美味あ!」と声を上げていたものだ。
「レベル70フィールドだし、一体で1個だからそんなに集められないけど」
「確定ドロでもなかったよな」
「確定にして欲しかった」
売ってくれ!集めてくれ!と言われたくないので、そう釘をさしておいた。
全て事実でしかないが。
「牧場で手伝いをするクエストをこなすと畜産系のジョブが生えるらしいけど、転職した話は聞かないんだよな。専門家が育てるとこのくらい美味いのか?さらに美味くなるのか?」
「いたら良かったね、畜産系のプレイヤー…」
椛たちも残念だ。農家は初期から選べるのでそれなりの人数がいるらしいのだが。
「そうだ、隠された洞窟の隠れ家を発見したのはオレたちだ!って自慢して歩いてる連中がいたけど、掲示板ですっかりネタバレしてることは知らないのかな」
「…そんな盗み聞きイキりキッズは見てないから知らないな」
「特に女性プレイヤーにアピールして歩いてて、笑いを堪えるのに苦労した…」
と言いつつ料理人プレイヤーは笑っている。
近くの屋台のプレイヤーたちも聞こえてしまったらしく、吹き出していた。
思い出すたびに笑えて、客が来るたびにネタにしたくなるらしい。
気持ちは分かる。
兎の国にでも行けば良いんじゃないかなそいつら、と思わないこともなかった。
□山の洞窟の邪神の像は発見できないままでも残りの12ヶ所の像を破壊できれば、そんなに強い邪神の遣いが現れないので、失敗になりにくいです




