224プレイ目 レイル
主に卵ハンターをしているうちに『邪神教団・ハイレオン帝国編』のイベントが進行して、作戦決行日がやって来た。
邪神の像の数だけチーム分けされたが、ランダムで振り分けていたようだ。
椛は何人かのクラメンと13騎士のパーシヴァルが指揮するチームになった。
パーシヴァルは人気のイケメン騎士の1人で、20代半ばの若さ、燃えるような赤髪にサファイアのごとき煌めく瞳をしている。
乙女ゲーの世界から召喚されたっぽい人物だ。
「いつ見ても目が眩む…」
「あっちの女性陣を見習えよ。うっとりしてるぞ」
「まばたきするたびにキラッキラッって音がしてそう…」
ランスロットのほうが人気なのだが、あちらは落ち着いた大人の色気タイプなので、10代の若いプレイヤーならパーシヴァルのほうが好みだろう。
分かりやすくきらきらしていて、華やかで爽やかだ。腹黒さは感じない。
そんな話をぐだぐだしているうちに集合時間が過ぎて、パーシヴァルが最終確認のための説明を始めた。
有名なアニメ声優を起用しているのかと思いたくなる、良く通る美声である。
きっとイベントシーンを録画しているプレイヤーもいるだろうから大人しく聞いた。
イキりキッズ臭のする連中も多く見かけたが、ここで邪魔はしなかった。
「では時間だな。出発する」
数千人が1度に集まると混雑するだけなので、チームごとに集合場所は異なっていた。
順番に時間をずらしながら、転移門で現地に向かう。
帝都担当のランスロット様チームは、他のチームが各街に着いてから暗黒街に向かうようだ。
やっとかよ、とかデカい声で言うアホもいたが騒ぎは起こさないだけマシだろう。
椛は連中には期待していない。
ぞろぞろと神殿前広場まで歩いて、同行する騎士たちの指示で転移門で移動した。
椛は行ったことのない、帝国の東の端にあるカギラスという街だった。騎士たちの同行者設定で移動可能になっていた。
どさくさ紛れに登録してみたら、きちんと反映されたようだった。
転移門に登録するのは、軽く触れるとポップアップするウインドウに『登録しますか?』と出るから、yesをタップするだけなのだ。
「歩きながらでも出来た」
「本当だ」
他にも未登録だったクラメンが同じように登録していたものだ。
移動の邪魔はしていないから大丈夫だろう。
ハイレオン帝国には帝都を含めて12の街がある。
そして国の中央付近にある山の洞窟を入れて邪神の像は13体あった。
13騎士と合わせて作った設定なのだろう。
山の洞窟の隠れ家が当たりだとはしゃぐキッズは多かったが、筆頭騎士様は帝都担当なので帝都こそ当たり派もいた。
椛はランダムで割り振っておいて場所によって当たりハズレがあったら、イベント作った奴の頭沸いてんじゃね?派である。
どこも同じだと思うのだ。
他の場所とタイミングを合わせているのかパーシヴァルの指示で暗黒街に突入した。
暗黒街にいた通行人たちは逃げ惑っていたが、1団は目もくれずに最奥を目指して駆けて行った。
先頭に踊り出たアホは騎士たちに排除されて最後尾に移動した。邪魔をすると容赦なく投げ飛ばされることが判明した瞬間だった。
「ギャグみたいに飛んでた…」
「ぽーんって擬音が聞こえて来そうだった」
笑いを堪えるのが大変だったが、頑張って走った。他のプレイヤーたちも苦しそうに走っていたものだ。
もちろん笑い苦しむほうの意味で。
邪神教団の隠れ家に到着し、パーシヴァルの指示が飛ぶ。
「邪神の像の破壊が最優先だ!邪魔をさせるな!」
おおおー!と騎士たちを先頭に突入する。
そんなに広くなかったはずだが、イベント空間なのか全員が入れる場所になっていた。
そしてワラワラと黒いローブの邪教徒たちが湧いて出る。
イベントらしい多人数の乱戦だ。
しかしパーシヴァルの指示は邪神の像破壊なので、無限に湧いて来そうな連中を相手していては時間切れの可能性もある。
椛は身軽さと回避力を駆使して、どうにか邪神の像までたどり着いた。
「一番乗り!でもカスダメ!」
「いいぞ!とにかく削れ!」
椛が邪神の像にファーストアタックを決めると、パーシヴァルから褒め言葉が返って来た。
抜け駆けしてんじゃねえ!と喚く連中もいたが、目の色を変えた女性プレイヤーのほうが凄かった。
そう、パーシヴァルに褒めて貰える。それだけで頑張れる。
そんな乙女パワーだ。
椛のほうに邪教徒たちが殺到するので、ずっと邪神の像を攻撃していることは出来ない。邪神の像を攻撃するとヘイトを集めてしまうようだ。
さらに乱戦具合が増して、どうにか邪神の像を攻撃しようとするプレイヤーが増えていった。
こうして邪神の像破壊ミッションが進み、カギラスの街の邪神の像は無事に破壊された。
13ヶ所のうち3番目に破壊できたということなので、なかなかの速さだった。
邪神の像は破壊したが、邪気は残っている。
これは神殿の聖法士たちに祓ってもらうそうだ。
「そろそろ全部終わるかな」
「けっこうタイム差ついたな」
次々にパーシヴァルが「キリトアの街も破壊に成功したと報告が入った!」という感じで教えてくれたので、進行が分かりやすかった。
でも椛たちは20分近く待っている。バランス良く割り振っているはずだが、このくらいの差が出てしまったらしい。
「残ってるのどこ?洞窟は終わったし」
「帝都も速かっただろ」
「筆頭騎士様の指揮ですし」
街の名前を全部覚えていないかったし、どこの報告が来たのかちゃんと覚えていないせいでマップを見ても分からない。
椛たちが首をかしげていると、騎士が教えてくれた。
「砦の街フェンだな。あそこの指揮官の様子がおかしいという報告は聞いていたが」
まさか見落としたイベントが!?と慄いていたら、パーシヴァルから最悪の知らせがもたらされた。
「フェンの邪神の像が起動してしまった…!とにかく応援に向かう!」
やっぱりなんかフラグの回収忘れてたー!と思いながら駆け出す。
椛は「あれが怪しいと噂の砦の街かー」と1度行ったが、何も分からなかった街である。
「嫌なPVの悪夢がよぎる…」
「あそこ、なんかあったんだろうなあ…」
「失敗してたら即アレだから大丈夫。たぶん」
「だといいね」
12体の邪神の像は破壊したのだ。カースドラゴンは出現していないはずだ。
暗黒街から逆走するように神殿に向かい、そこから砦の街フェンに移動した。フェンの神殿から出れば、誰の目にも敵の姿が分かった。
「でっかいオーガっぽいのがいる」
「暗黒街の方向か?」
街が破壊されているようだが、暗黒街だからまあいっか、と思った。住宅街だったら大惨事だった。
他の街からも応援が続々と到着しているようで、椛たちはパーシヴァルの指示で再び駆け出したが、神殿前には人が増える一方だった。
そして同じように駆け出す集団が追って来る。
暗黒街まで行けば巨大なオーガっぽい敵が暴れていたが、先に到着していたようでたくさんの騎士とプレイヤーたちが戦っていた。
「レイド戦だ!」
「やるか、アイドル様!」
邪神関連に召喚獣の力が通じるか不明だったが、伝説のミーティアの『応援』スキルは別だ。
椛は月詠を召喚して、さっそく指示した。
「あっちの強そうな騎士様たちから応援して!」
「みゅっ!」
「すごい的確!」
「オレたちも応援してくれよ」
月詠は近くにいたパーシヴァルとその周辺を応援すると駆けて行った。
「…わたしも後回しだから…」
「すごい的確だな」
「そうなるよな」
アイドル様登場でプレイヤーたちは盛り上がり、アイドル様の応援で騎士たちも張り切り出した。
特に13騎士たちのパワーアップは破格である。アイドル様は筆頭騎士様のところに居座るくらいだ。
「帰って来ないアイドル様…」
「そりゃあ、1番強いところに行くだろ」
「あそこ激戦区だから無理」
後回しどころか放置されたが、椛たちも頑張って戦ったのだ。
周囲のプレイヤーたちも「アイドル様が帰って来ると思ったのに」「読みが外れた」とがっかりしていたが、激戦区はすでに満員御礼である。
「この戦いの主役は13騎士様たちだ」
「公式PV楽しみ」
なんて言い合いながら戦ったものだ。




