206プレイ目 カナリア
天候・吹雪とフィールドチェンジ・海は思ったより効果があったが、攻撃力不足なのかHPを削り切れずに断念した。
炎の溶岩洞のボス戦の話である。
「双剣だとカスダメしか与えられないし、マジでストレス…!」
「たまにおるからのう。ジョブによっては2度と戦いたくないボス」
「素材が魅力的でもやらねえよってなるよね」
プレイヤーが押し寄せている王都カナリアの、商店街にある喫茶店で椛とロウガイは落ち合って話をしていた。
ここは椛が見つけた路地裏の隠れ家的な雰囲気の店だ。コーヒーの種類が多いのでロウガイが好きそうだと思ったのだが、無事に満足したようである。
コーヒーの香りがする店内で、椛は昨日は勝てなかった話をしていた。
ロウガイはイベントをクリアしたそうだ。
「それにしても、豪華報酬とはなんだったのじゃ…」
「わたしは何も言ってないよ」
「ワシは面白いから構わないんじゃが」
クリア報酬は記念品のような、自分のイベントの内容を視聴できるアイテムだった。
記録しておける内容に上限はあるのだが、好みで編集することも出来る。
自分だけのイベントPVが作れる!という話である。公式PVはこのイベントにはなさそうだった。
「あ、後で気付いたんだけど、暗黒街の普通に入れるほう…表のほう?あっちのお祓いはしなかったんだよね」
「ワシは一応、最初のイベントで呪われたからのう。階段のところで話しかけて、そっちも回ったのじゃ」
「やっぱり必要だったんだ…」
裏を返せば、多少は忘れていてもクリア扱いにしてくれるということである。
完璧に全てのフラグを回収しなくても良いのは、全プレイヤーが遊べるからだろうか。
難易度が高くなってしまうと、喚く連中も多いだろう。
「しかし最後はどうやってあの方を呼べばいいのか、だいぶ悩んだのじゃが…」
「3分くらい悩んで狼少年作戦で行った」
「そこで森の主どんMK=Ⅱが…」
「それも考えたけど、我ら移住者の世界に終焉をもたらしたものが現われる!って言って回った。楽しかったです」
「王太子に許可を出してもらえんか頼んだり、変装して潜入する案を出したりしたワシの苦労…!」
「え、変装したの?」
「してくれんかった。迷走して勇者の所に乗り込んで、何故か勇者も同行するルートになっての」
そのルートも面白そうである。
しばしイベントの話で盛り上がったのだった。
ロウガイはボスの前に、溶岩洞の内部フィールドに疲れた顔をしていた。
喫茶店でつい話し込んだが、今日の目的は炎の溶岩洞の攻略だ。
「ボスまではMPを温存してて。雑魚戦はだいぶ馴れたから!」
と椛がエスコートする形で進んでいるのだが、それでも辟易した様子である。
「まずこの環境がキツいのう。暑くはないんじゃが、景色が最悪じゃ…」
「慣れないうちは溶岩にぼっちゃんぼっちゃん放り込まれてな…」
「くうん…」
「ガウ…」
主な被害者の流星と玄幽が、思い出してしゅんとしている。
魔法のほうが効果は高いのだが、CTの関係でこの2体はレギュラーメンバーだった。
風属性と木属性、氷属性は使えないし、ハムスターはさらにカスダメしか与えられないし。
タンク役のぽよちーも常時召喚枠の候補ではあるが、愛しの流星のために椛が回避盾になって頑張ったものだ。
ロウガイは「こんな火山系ダンジョンが他にも」と想像して、げんなりしていた。
椛も必要がなかったら攻略したくない。
「秘境ハンターは火竜のいる火山フィールドに行ったって言ってたけどね」
「火竜騎士隊はどこの国でも聞かんのう」
「キールファン王国に火竜は生息してるらしいけど、あの国にはないよね」
そんな話をしながら進む。
椛もサクサク進めるようになるために、何日もかかったのだ。
ボス部屋の前で少し休んで、さすがにボス戦では流星と玄幽を使う余裕がないので送還する。常時召喚枠は回復役のミルクだ。
「わたしは役に立たないから、タンク役をします」
「その分、魔法アタッカーを増やすのじゃな」
「そう。なのに昨日ダメージ足りなくて駄目だった!もしかしたら等倍の子よりロウガイのサンダー・エレメントのほうがダメージ増えるかも」
「海フィールドの間は効果があるかもしれんのう」
水魔法は紺碧とアクア、そしてブルーしか使えないのだ。召喚獣用のスキルブックを使えばその限りではないのだが。
とはいえ、ロウガイが加わったおかげで等倍の魔法アタッカーを出す枠はない。
それにロウガイは水属性の武器は作ってあったし、属性に合わせたボス素材で水属性の攻撃スキルが付与してあるそうだ。
消費MPは多いが、その分強力な専用スキルである。かなり頼もしい。
「そろそろ行こうか。まず雪ぽよ」
「ここに呼んではいけない召喚獣代表じゃな」
「うん。天候を変えたらすぐ送還するよ」
送還したあともスキルの効果が続くので、そのためだけの召喚である。
コロコロ転がるのが好きな雪ぽよも、ここでは椛に抱かれているほうがマシと大人しい。
CT節約のために椛とロウガイ、ミルクと雪ぽよだけでボス部屋に入る。
それから紺碧とアクアとブルーを召喚した。
「まずは雪ぽよの吹雪!紺碧はフィールドチェンジ!」
「おお、本当に溶岩が海に変わったのう」
防寒スキル付きのアクセサリーは装備しているので、椛たちに被害はない。視界が悪くなっただけだ。
雪ぽよはすぐに送還して雷玉を召喚する。
天候とフィールドチェンジは制限時間があるので、あまり時間はかけたくない。
「わたしがヘイト取ったら総攻撃よろしく!」
椛は本職のタンクではないが、ヘイトを増やすスキルはいくつか買って覚えている。そんなに高いスキルブックではなかったし、必要に迫られることが何度かあったからだ。
今回みたいに。
「『挑発』ヘイヘイでかぶつさんよう!今日こそぶっ倒してやる!」
ロウガイに(敵より本人のヘイトがうなぎ登りじゃ)などと思われていたが、椛にボスの注意が向く。
そこに魔法アタッカーたちの攻撃が次々に降り注いだ。
吹雪で視界が悪くても分かる、赤くてデカいボスは高さ2.5~3Mくらいの巨人だった。攻撃手段は物理主体だが、火魔法も使って来る。
火属性耐性は無効化できる100%まで上げているから良いのだが、物理主体なのがキツいのだ。主どん防具でダメージカットをしていてもキツい。
椛は回避力が高いほうだが、全て躱せるわけではない。単体攻撃ならともかく、範囲攻撃は良くかすめる。
そのための回復役である。ミルクが椛の被ダメに合わせて回復魔法を使っていた。
「昨日より削れてるー!」
「レベル60の他のボスなら、この2倍はダメージが出ている魔法じゃったのに…」
「だよねー!?」
ボスの魔法耐性の高さにロウガイが慄いていた。でも物理耐性はもっと高いので、椛の双剣はカスダメしか与えていない。
「デバフアイテムは使わんのかー?」
「それもあった!使ってみる!」
椛の自作アイテムしかなかったが、水属性の耐性を下げる薬だ。錬金術師の調合アイテムである。
劇的な変化はなかったが、効果はあった。
効果が切れないようにアイテムを投げる仕事も増えたが、ダメージが増えるのが嬉しい。
そんな調子でバトルを続けて、最後の最後で天候もフィールドチェンジも効果が切れたものの、なんとか勝利をもぎ取った。
「2度とやらねえ!」
「ワシもやらん…」
喜びより疲労が勝った椛とロウガイだった。
□レギオンを組んで人数を増やせば、もちろんもっと楽に倒せると思います
人数が増えると分配されて経験値は減るけど、敵のHPが増える仕様ではないので
□それから最後に使っていましたが、デバフ耐性が低く設定されています
そこに気付いていれば、もっと楽に倒せるハズ
(毒や麻痺も入りやすいので)




