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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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176プレイ目 アンセム

 一時的に戻っただけの(もみじ)は、アンセムの街に入って神殿に直行した。


 冒険者組合(ギルド)には寄らなくてもいいかなと思っていた。でも焼き芋屋のおじさんがいるか確認しなくては。

 たくさん買ったはずなのに気付くと在庫切れになっている。それが焼き芋なのだ。


 入口近くで顔馴染みの神官に声をかけて、聖女様に会えるか確かめた。

 たいていは休憩時間になれば会ってもらえるようになっていた。忙しいとか出掛けている日もあるけど。


 この日は聖女様は忙しくなかったようで、休憩時間まで待てば会ってもらえた。休憩に使う奥の部屋で待たせてもらっていたので、さほど迷惑はかけていないはずだ。


「西の大陸はどう?オルキストスには会えたの?」

「…エルフの英雄様は、ちょっと向かい合っただけで「合格、次」って言って全然相手をしてもらえなかったけど、会えたことは確かですね…」

「まあ、おめでとうと言いにくいわね」


 聖女様も苦笑している。椛たちが「エルフの英雄と手合わせ!」「腕試し!」とはしゃいで旅立ったことは知っているからだ。

 そんなあっさりと合格するとは思っていなかっただろう。


 初対面の人間をちょっと見ただけで判断するなんて、普通は思わない。


「あ、それで許可が出たから花蜜を採って来ました。聖女様へのお土産って言ったらエルフの老人会が大瓶以外認めない!って押し付けて来たから、大瓶で。しかも白い花の蜜だけ集めるんじゃ!って」

「大変だったでしょう」

「召喚獣に手伝ってもらったから大丈夫ですよ。それに聖女様ならみんなでいただきましょうって神官様たちに分けるだろうから、たくさんないと駄目だろうなって」


 一緒に休憩中の神官たちも大瓶に入った花蜜に、期待に目を輝かせている。

 鑑定して白い花の蜜だけを集めたものと出たから、他の色の花蜜は混ざっていないはずだ。


 召喚獣に手伝ってもらったが、1日仕事だった。一緒に集めに行った頼闇(らいあん)は「アタシのほうも手伝ってよ!」と召喚獣を狙うので、1人で行ったほうがマシだったし。


 邪魔しながら集めた花蜜を兎に適当に貢ぐんだろうな、もう配り終えて残ってなさそうと思うと、ものすごく無駄なことをした気分である。


 ちょっと遠い目をしつつ、カメラで撮った写真も出した。花畑の景色である。


「聖女様は懐かしいかなって。神官様たちは初めて見るかも」

「ええ、素敵ね。世界樹の森の花畑」

「これが世界樹ですか…!」

「このお花から花蜜が…」


 椛の撮影技術は素人レベルだが、景色が最高なのでいい写真に見える。画面に入りきらない世界樹と、咲き乱れるカラフルな花の絨毯。

 オマケで天使と小妖精が写っている写真もある。


「それでその、代わりにって話じゃないんですけど、勇者様に紹介状を書いてもらえないかなって」

「…ドライデンに?紹介状が必要なの?」

「役所で面会申請すると会ってもらえるらしいんですけど、取り次ぎの役人や貴族が袖の下を要求して来るらしくて…聖女様の紹介状があれば黙るんじゃないかなと」


 神官たちが「どうなっているんですか、その役人たちは」と顔をしかめている。

 聖女様も驚いた様子だった。


「イズダス帝国は、そんな役人をのさばらせているの…?」

「貴族も役人も好き勝手やってるらしいけど、そいつらに取り入った商人たちもデカい顔してるって帝都の人たちは言ってましたね」


 ちょっと聞いただけで出て来る噂である。

 王都カナリアに比べたら普通の都に見えるが、内部が腐っているっぽい。


「…分かったわ。わたくしの紹介状が役に立つか分からないけれど、用意するわ」

「聖女様の紹介状が役に立たなかったら、もう何をしても効果なさそう…」

「ですよね…」


 王都カナリアでは効かないっぽいので、あそこは終わってる気もする。

 帝都ダースティンはもう少しマシだといいなと、椛は思った。


「わたくしからもお願いがあるの。ドライデンに会ったら、ブロムの異変について伝えて欲しいの」

「鬼女…じゃなくて、正気を失って発狂してる女性たちの件ですか?」

「勇者の剣を持つ彼なら分かるはずだから」


 勇者の剣の特殊能力だろうか。

 それが鬼女探知能力──だったらヤだなと思わなくもなかった。






 聖女様の頼みは快諾して、4日後に紹介状を貰うことになった。移住者は四倍速の世界では4日ごとに活動する者が多いのだ。


 次に領主の館へお土産を届け、『神の匠』にも届けて来た。花蜜の瓶の大きさはエルフの老人会が決めたことだが、余計なことは言わなかったので花蜜が好物の領主様が自ら出て来るほど喜んでいた。


 次があったら中瓶にしよう、とちょっと思った。


 配達を済ませて商店街の屋台通りにやって来た。焼き芋屋のおじさんがいたので駆け寄ってしまった。


「おじさん、焼き芋100本!」

「おう、姉ちゃん…あんなに買ったのに、もう食い尽くしたのか?」

「の、残ってるけど次はいつ戻って来るか分からないし!」


 転移プレートで戻れるので、なくなったらまた来るかもしれないが。


「あ、でもバレンタインにはまた来るんだった」

「今年も義理チョコをくれるのか?じゃあその日は屋台出さないとな」

「もちろんさ!」


 その頃はどこに行っているか不明だが、好感度を上げたいNPCはアンセムに多いのだ。

 闘技場に行けたら覇王にファンチョコを贈りたかったが、鬼女が怖い。

 ジークじゃなくて覇王にチョコを渡しても怒り狂いそう。


「そうだ、最強執事のセバス様にも門番あたりに頼めば届くかな」

「門番がオレの分は?って顔をする日だぜ、バレンタイン」

「そうだったね…」


 おじさんとか妻帯者などは余裕があるのに、未婚で恋人もいない男たちは異常にチョコをもらった数を気にする日だ。

 1個でもいいんだー!と椛にまですがりついて来る。


「でも特別な限定チョコ…あ、ハトロワでチョコが売ってるか見て来よう!」

「ああ、バレンタインの前は品薄になるかもな」


 カカオはブローゼスト王国産なのだ。ハトロワの港には輸入されて来ているだけである。


 ハトロワまではアンセムから騎獣で半日なので、聖女様から紹介状をもらってから行って来ようと思う。

 勇者様に面会申請したが、吟味するからしばらく待てと役人に偉そうに言われただけなので、いつ会えるか不明なのだ。


 冒険者組合に問い合わせて調べて、何を巻き上げるか吟味しているのだろう。

 他の国での活動をどこまで組合が把握しているのかは不明である。


 そこに聖女様の紹介状を出したらどんな反応をするだろう。


 気にしないほど腐っていないことを願う。反応も見ものだろうし。


 焼き芋が焼き上がるまで、そんなことを考えたり、知り合いの住民たちとあいさつを交わしておしゃべりして過ごした。


 ここが拠点(ホーム)だったらなあ、と思うくらいには馴染んでいる気がする椛だった。






プレイヤーたちが他の街で簡単に手に入る野菜の苗や果樹の苗木を売って商品リストを増やしているので、アンセムでもブローゼスト王国で買えるカカオは売られ始めています(椛が気付いていないだけで)

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― 新着の感想 ―
例の生産女子たちに開拓村の土地売ってアンセムに移住しよう
まさか鬼女の解決方法が西の大陸にあったとは。 これで「貴方から彼女たちを狂わせるオーラが…」とか言われたらいやだろうな 今年も覇王様に本命チョコは渡せなさそう。
鬼女イベントが進行したよ!ヨカッタネ( ≖͈́ ·̫̮ ≖͈̀ )ニチャア
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