146プレイ目 アンセムからブロム
節分なので、福はうち、鬼女はそと
加工素材の件はクランのメンバーで相談した結果、シラベを近くの危険度Cダンジョンに誘って、ボスと戦って、商業組合に送り出しておいた。
また厄介事がー!とか叫んでいた気もするが、検証クランでよしなに片付けてくれるだろう。
検証大好き人間の集まりだし。
「思ったよりお菓子が余ったよ、おっさん」
「まあ、家具とか交換してもうちじゃ使わねえよな、あれ」
ハロウィンイベントの最終日を迎えていた。
椛はアンセムの冒険者組合の買い取り窓口のおっさんに話しかけて、お菓子をどうするか悩む。1個ずつ配ってもいいのだが、料理人プレイヤーのところでクッキーを買って配ったほうが喜ばれる。そんな味だった。
「まあ、お祭りだし配るか!トリック・オア・トリート!お菓子を受け取らないといたずらするぞ!」
「寄越せじゃないんだなー」
「余ってるんだよ!」
強制配布である。
受付嬢や酒場のマスターに、奥の職員たち。2階の資料室の職員やギルマス、酒場でウダウダしている冒険者NPCにも配ってから、椛は外に出た。
主に子供たちにお菓子を配ったが、こちらはイベントらしく「トリック・オア・トリート!お菓子よこせー!」と来るので渡しやすかった。
去年よりずっとハロウィンらしいイベントだった。
ハロウィンの翌日はダンジョンのリストを眺めて悩んでいた。
水属性のダンジョンは四大属性なので多いのだが、鬼女の国に多めだし。
転移プレートはゼロイスに戻ってから使えばまだトシュメッツ国の首都メルツに繋がるはずだから、その近くにしようかなと。
それなら行ったことのない街が多い帝国まで行くのもいいな、と思えて来たのだ。
目当ての半分はグルメ探しだった。
それならと『果物図鑑』を出して、椛が冒険者組合の酒場でおやつのドーナツ(持ち込み)を食べていたら、きゃあきゃあと賑やかな声が響いて来た。
他の冒険者たちや職員も顔を上げて入口のほうを見ている。
「この街で女性陣が騒ぐようなイケメンというと…教官殿かな」
「確かに人気あるけど、おばちゃんたちに人気だろ。渋いって」
「こういう若い女に騒がれるタイプじゃないって」
教官たちはイケオジ揃いなので、おばちゃんたちに人気だ。でも若い娘たちはタグのほうが好みというくらい、おじさんには目を向けない者が多い。
タグはアバターの見た目がいいので密かに人気らしいが、騒がれるほどではないし。
などと近くの冒険者NPCと話していたら、騒ぎの中心が現われた。
「あ、良かった、椛さん。すぐにお会いできて」
「ふあ?わたし?」
「移住者の中でも怪しい行動をしていた者たちが、西の海の怪物を発見しました。どうにも話しが通じないので移住者代表を他にも招きたいと命令されて、お願いにあがりました」
つっこみどころ満載だが、イケメン騎士様は流れるように片膝をついて椛に要請した。
「どうか一緒においで下さい」
アンセムの娘さんたちまで鬼女化するので止めて…!と思った椛は悪くないと思う。
お前そういうところやぞ!と言ってやりたかった。
もちろんやらかしているのはジーク様だった。
ついでに後で聞いたら、クラン『チャレンジャーズ』が出払っているのでメンバーを探していただけで、椛個人を探していた訳ではなかった。
先に周囲に説明しておいて!と怒った椛は悪くないと思う。
以前のレイド戦の時の、ブロムの冒険者組合のギルドマスターとのやり取りがフラグだったのか、クラメンたちが招集された。
転移代金はブローゼスト王国が払ってくれたので、ログインしていたメンバーはイベントだろうなと集まって来た。
案内されたのは王城内にある騎士団の兵舎で、途中で鬼女化した侍女や女官たちを見たがこちらは安全のようだ。
広い会議室に入ると、12人のプレイヤーたちが先に来ていた。
「なんで関係ない奴らが来るんだよ!」
「俺たちが見つけたイベントだぞ!」
「怪しい行動をしていた、話が通じないって言われるようなことしてるからだろ!何やったんだよ、お前ら!」
怒っていたプレイヤーたちも、自分たちの評価に愕然としていた。
騎士たちはそっと目を逸らして沈黙している。
頼闇が荒れ気味の椛をなだめて、クランマスターらしく話しかける。
オネエ言葉なのでいまいち決まらないが、相手も拒絶はしなかった。
「西の海で怪物を見つけたんですってね。レイドなら全移住者が参加するはずなのだもの、よろしくね」
椛たちも促されて席に着く。
騎士団と言っても近衛ではなく王国騎士団なので、フレッド団長はいない。前に広場で見た王国騎士団の団長と副団長の他、隊長格の騎士たちが同席する豪華な会議だ。
「時々会話に出て来る『レイド』とはどういう意味かね?」
「そうねえ。大勢で協力して戦う大規模戦闘などを指してレイドと呼ぶわね」
「以前戦ったでっかい化物との戦いみたいな奴っすね」
「ああ、なるほどな」
騎士たちが納得している。この世界ではレイドとは呼んでいなかったようだ。
システムであるのはレギオンまでだったな、と思った。
「ではプレイヤーとは?」
「アタシたち移住者が自分たちのことをそう呼ぶだけよ」
「ブローゼスト人とブロムっ子くらいの差?」
「確かに、自国内では呼び方は変わるな」
騎士たちが納得しているが、NPCの前でうかつな発言ばかりなのは伝わって来た。きっとNPC呼びもしたあとだろう。
「次はメインシナリオとかイベントとかそういう奴でしょ」
「ああ、うむ」
「例えば受付嬢…いやアレは鬼女…そう、ジーク様に偶然会って会話したとすると、移住者はこう言います。会話イベントが発生した!って。文脈で適当に解釈しておけばだいたい大丈夫ですよ」
「方言みたいなものか」
「シナリオは妄想全開の未来予想で、ここからオレのサクセスストーリーが始まる!とか自分に都合の良い夢を見てる奴が言います。大活躍して報奨もらって国王陛下に名前を覚えてもらって、国中に英雄として名前が知れ渡るんだ!これこそオレのメインシナリオ!って感じで」
「い、言ってねえよ!」
帝国で攻略組の6人にも言ったなあ、と思っていると、本人たちは否定したが、騎士たちは納得していた。
言ってはいなくても何か伝わっていたようだ。
納得されてまた愕然としていた。
NPCだと思って、見られていても気にせず何か言い合ったのだろう。よくある話だ。
「もう、言い方ァ」
「移住者はこの世界の常識が分かってないからさ。勇者だ英雄だって故郷基準のイメージで成りたがってるじゃん。まず闘技場の覇王になってから言えって思われてることに気付かず…」
「それはね、どんな目で見られているか気付かないと恥ずかしいけど」
「オレは移住者の中でトップなんだぜ、が住民のみなさんに一欠片も響いていないことにも気付かず得意満面…目に浮かぶ…」
身に覚えでもあったのか、12人のプレイヤーたちが頭を抱えて突っ伏した。
「お前ら…ダンジョンより闘技場に行ったほうがこの世界の基準が分かると思うよ…」
「あんなつまんねえコンテンツ、やるわけないだろ!」
「勝てないからつまんねえんだろ」
つまりこの世界のNPCのほうが圧倒的に強いのだ。そんな相手にどんな態度を取っていたのか。いかに滑稽だったことか。
知っておいたほうが良いと思うのだ。お互いのためにも。
「お前、容赦ないな」
「は?そのせいで迷惑こうむってるんですけど?他人に迷惑かけた自覚くらい持たせないと割に合わねえじゃんよ!」
「ちょっと呼ばれただけだろ」
「初めて来た街の通りをちょっと歩いただけで若い娘さんたちがきゃあきゃあ言いながら追いかけて来るイケメン騎士様に、片膝ついて『お迎えにあがりました』とか言われたわたしの明日はどっちだ…」
全員に同情された。
騎士たちも「あいつ天然なところがあるから…」と目を覆っていたものだ。
椛はジークのセリフを聞いている心境ではなかったので、あのシチュエーションなら言っただろうと思ったことを適当に答えています
今回の12人はブロムで何か嗅ぎまわっていた後、レベル上げの話を聞いてしばらくそちらに集中していたので間があいています
だってレベルで負けてたら攻略組ってドヤれないじゃない…という感じで




