145プレイ目 アンセム
今年のハロウィンはいたずらゴーストは出番がなく、ハロウィンのお菓子がランダムでドロップする仕様になっていた。
バトルでも生産でも手に入るので、どんなプレイスタイルでも遊びやすいイベントだ。
運営もこのシステムが1番公平だと気付いたのかもしれない。
「マンネリとか言うと、どんなイベントが始まるか分かんない奴」
「変な設定入れて来そう…」
イベントの初日はアンセムの近くにレベル55で危険度Bの水属性特化ダンジョンがあるので何人か来ていたクランのメンバーと、冒険者組合の酒場で話していた。
ちなみに危険度Bは何度か挑んで、ちょっと心が折れそうになっている。たまに勝てる程度で、水属性無効アクセサリーくらいでは歯が立たなかった。
「お菓子と交換でアイテムが手に入るってことは、食べたらいけないお菓子…?」
「ポイントで良かったよな」
「ハロウィンっぽさを出したかったんだろ」
手に入るお菓子は駄菓子っぽいが、それでもちょっと残念だ。余ったらNPCに配ると好感度が上がるらしいので、食べる分など端から存在しないようだった。
交換できるイベント限定アイテムは、去年と同じく見た目装備が多い。猫娘が追加されて、猫派も喜んでいることだろう。
椛も使わないだろうが、1セットは交換しようと思った。
武器用のスキンもあって、格好いいものと可愛いものとネタ感しかないものがある。キャンディスキンは多分ネタ枠だ。
「家具も増えたけど、そんなにお菓子が集まるものなのかな」
「去年のは交換するものあんまりないだろ」
「いや、二陣の話」
「あ、そうか。あっちは初めてだったな」
どういうバランスなのかなと思っただけだが、コンプリートできないと喚く者もいる。ここの運営は気にしないような気はしているが。
家具も可愛いものとダークで格好いいものがあるのだが、自分の家に飾る気は起きない。イベント期間中に雰囲気で少し置くくらいだろうか。
まだ家がないけど。
「危険度Bはイベント終わるまで自主封印しよう…」
「危険度Cのボスなら回れるのになあ…」
アンセムにはレベル50だが危険度Cのダンジョンもある。地属性特化だが装備はあるので問題なかった。
「でも常時召喚枠の魔術士、便利だったな…」
「雷鳴平原組も魔術士入ったらめっちゃ楽って喜んでたよな…」
闘技場でバトル三昧するクラメンには足りないのが魔術士なのだ。
ショタジジイ、性格より性能が魅力的で一緒にいた気がして来たものだ。
ボスの迂闊に売ると転売屋の餌食になるドロップ品が貯まっていたので、クラメンたちと冒険者組合の向かいにある商業組合で売り方を聞くことになった。
忘れていた訳ではない、ことはない。
受付嬢に声をかけて少し説明すると、それでしたらこちらへどうぞと個室に案内された。
個室と言ってもパーティ単位で対応するためか6人くらいは余裕で入れる広さだ。
「こちらは何に使うアイテムかご存知ですか?」
「装備の強化には使わないことくらいしか知らなかった」
「直接は使いませんけど、こちらの冊子をどうぞ」
受付嬢が1人に1冊ずつ冊子をくれた。持ち帰って良いそうだ。
「インゴットに錬金術で注入する素材となっていまして、加工によって作れる特殊なインゴットのリストになっております」
「つまり、このインゴットで装備を作れると…」
「武器や金属製の防具の基本素材として使えますね。性能は鍛冶師にお尋ね下さい」
「使い途が分からなくて換金アイテムだと思い込んだ過去のオノレを止めに戻りたい…」
「鑑定しても説明がありませんから、勘違いなされる方が多いんですよ」
誰もが通る道、みたいなことを言っているが運営がきちんと説明しておけば済んだ話である。
おのれ、運営。
「ですが危険度C以上からしかドロップしないので、下手に説明できないんです」
「そういえば、危険度D以下では見てないな…?」
「無理をして手に入れようとする冒険者が出かねませんから」
「ってことはこの冊子は」
実物を持ち込んだ冒険者にだけ配っているそうだ。また荒れそうなネタである。
「そういうものとして扱って下さいね」
「錬金術師には見せないと話が進まないからいいよね」
「はい、もちろんです」
鍛冶師にインゴットを持ち込む時は「錬金術で加工してもらった」とだけ言えば良さそうだ。素材の出どころまで聞かないだろう。
錬金術師に聞いて、と言えば良い。
ということで、素材が余ったらお売りくださいねという受付嬢に見送られて商業組合から出た。
「転売屋はどこで探り当てるんだろうな…」
「明らかに知ってて買い占めてるだろ、あいつら」
「暗黒街なら売ってそう…」
それはありそうだなと思ったのだった。
ついでなのでNPCの錬金術師のところへ行ってみたら、こちらでも加工はできることが分かった。
プレイヤーの錬金術師に言ったら、全プレイヤーに知れ渡るだけなので助かった。
秘匿するかどうかは後で相談するしかない。
商業組合でもらった冊子に性能や加工費などは載っていたが、インゴット1個あたりにいくつの素材が必要かなどの細かい話が聞けた。
思ったより使う数は少なかった。
「いや、ボスドロ100個とか言わないだろ」
「ボス素材はそのくらいいるじゃん」
「ボススキル付ける時はな」
「危険度考えろよ」
感覚が麻痺しがちだが、ものに寄っては回収が苦行である。
「危険度の高いエリアボスだって、専用スキルがある気がする…」
「エンドコンテンツだな…」
「そんなもの狙うのが悪い」
でも他と比べて性能が良かったら欲しくなるのがゲーマーだ。
椛は大怪盗さんを超える素材は欲しいが、危険度が高すぎるのは遠慮したい。
「でも作り直し…お金…」
「あー、ボス素材も集め直し…」
考えると遠い目になる。のんびり更新するしかなかった。
「暫定的に加工素材って言っておけばいいかな、あれは」
「基本素材に属性素材、追加素材だから、そんな感じだな」
「ジェネリック鬼女たちのいる街は行きたくないけど、木属性はあそこしかないっぽいのがなあ」
「他の属性とトレードしてもいいぞ。集めに行きたいし」
レア枠の獲物は臭いカエルだったし、旨みのない街なので椛は頼んでしまった。代わりに何を集めるか相談した。
「水属性の武器がないから、とりあえず水属性のダンジョンかな。どこに行こう」
「水属性はブローゼストだろ」
「海底ダンジョン以外も水属性が多かったな」
「鬼女の国は行かない!」
椛に気付くと鬼女化するので、すでに何で怒っているのかも定かではないのだが、すっかり鬼女の敵認定を受けているのだ。
危なくて近付けない。
「危険度Bなら…」
「イベント中は行かない!あ、イベント」
「そうだ、ハロウィン始まってるな」
今日のところは属性を気にせず近くのダンジョンに向かった。
お菓子が足りなかったら、王都カナリアでも行こうかなと思ったものだ。
前話で「丁度良いレベルと危険度」と言っていましたが、挑んでみたら予想より手に負えなかった…という話




