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第97話 洋服と番長交代

それは俺が大金を手に入れてから、一週間後の事だった。


「何か俺、避けられてる?」


食堂でいつものメンバーと食事をしている時、俺はそう思い口に出していた。


「仕方ないよ、色々と噂があるんだし」


隣で飯を食べながら、シガラがそう言ってきた。


まぁ、たしかに噂のせいなんだろうけどさ。


気がつくと周りの人間が俺のほうを見ているんだけど、俺が見ると皆視線を背けるんだよね。


もはや嫌われ者だな。


「この一週間であっという間に噂が広まりましたからね。

多分学校であなたを知らない人はいないと思いますよ」


そう言ったのは、シガラの隣で同じく飯を食っているイヴァンだった。


「でもそれって、悪い意味で皆知ってるんですよね?」


「そうですね。

あ、そういえば君に良い知らせと悪い知らせが一つずつありますがどちらを先に聞きたいですか?」


「じゃあ、良い知らせから」


「前に私を殴った二人の不良獣人族を覚えていますか?

昨日、あの二人が私の所にやってきて君を探すのをやめたと言っていました」


「おぉ、それはたしかに良い知らせですね。

僕も不良に狙われ続けるのは嫌ですし。

それで、悪い知らせというのは?」


「君に番長の称号を譲るそうです」


「お断りします」


俺が即答すると、イヴァンが苦笑いした。


「私に言われても困るんですが」


「僕だって番長の称号なんていらないですよ。

そんなの貰うくらいなら、優等生の称号が欲しいですよ」


「ガル、番長って何?」


俺の正面で飯を食べているロミアが、首を傾げて尋ねてきた。


「番長というのはこの学校で一番強い人を表す言葉ですよ」


「それって、ガルがこの学校で一番強いってこと?」


「そうなりますね」


イヴァンがそう言うと、ロミアが少し悔しそうな顔をしながら俺の方を見た。


「・・・ガル、また今度手合わせしよ?」


「え?別に良いけど」


何だろう?ロミアの奴、番長の称号が欲しいのか?


そんなのあげられるならいくらでもあげるけど。


「あっ、そうだロミア。

今日、ちょっと付き合ってもらいたい所あるんだけど時間あるか?」


「うん、今日は午後から受けたい授業ないから時間あるけどどこに行くの?」


「今日、アルマの誕生日なんだよ。

だから、プレゼント買いたいなぁと思ったんだけど俺のセンスだと不安だからさ」


「あっ、今日アルマの誕生日だったんだ。

知らなかった」


「俺も前に教えてもらうまで知らなかったよ」


「分かった。

私もアルマに誕生日プレゼント渡したいし、一緒に買い行こう」


ロミアが笑顔でそう言ってくれたので、俺も笑顔で頷いた。


「二人とも、僕も一緒に行っても良い?」


「良いけど、シガラも何か買うものあるのか?」


「僕もアルマちゃんに何かプレゼントしようかと思ってね。

ほら、アルマちゃんが働き始めたの僕とロミアちゃんが向けた後だから。

ちょうどオアシスが忙しい時とぶつかっちゃって、多分大変だったと思うから」


「あー、そういうことか。

確かに、シガラは何年も働いてたからもちろんだけどロミアも短い間とはいえ宿にとってはありがたかっただろうからな。

じゃあ、三人で行くか」


「いえ、四人ですね」


そう言ったのは、イヴァンだった。


「私もみんなの買い物に同行して良いですか?」


「ん?イヴァン先輩も買いたいものがあるんですか?」


「いえ、私は皆さんの付き添いみたいなものです。

人が買い物しているのを見るのも、楽しいものですよ」


「あ、じゃあ私も一緒に行きたいな・・・」


イヴァンに続いてヘレナもそう言った。


「それなら、皆で行きますか。

この五人で買い物っていうのも、面白そうだし」


ということで、五人で買い物をすることになった。







「その、本当に私もご一緒してよろしかったのですか?」


後ろを歩くアネッタが、俺に恐る恐る尋ねてきた。


「僕とロミアの金を管理しているのはアネッタさんですから。

それに、僕もロミアもこれでもまだ子どもです。

たくさんあるからって散財するのは良くないですし、アネッタさんにはそれを止める役をしてほしいんですよ」


「そんな、私にはガルファット様やロミア様のお買い物に口出しするような権利は・・・」


「あと、アネッタさんの洋服も買いたいですから。

学校にいる時はともかく、こうやって出掛ける時までメイド服じゃ味気ないじゃないですか。

たまには、メイド服以外の私服で出掛けるのも楽しいと思いますよ」


「ふ、服だなんて。

私にはメイド服で充分ですよ」


「一応学校では男子寮に出入りする関係で僕のメイドって事にしてありますが、別に学校の外でまでメイドでいる必要はないんですから」


「そ、それは・・・」


そこまで言うと、アネッタは困ったように黙ってしまった。


正直な事を言ってしまえば、俺はメイドとの距離関係がイマイチわからない。


そりゃ家事とか頼むことはあるけど、別にメイドにも自由はあっていいと思う。


たまに休みをとったっていいし、プライベートでメイド服以外の私服を着たっていい。


アネッタだってメイドである前に一人の獣人族で女性だ。


やりたい事があるならそれをやっても良いと思うし、結婚だって本人がしたいっていうならさせてあげたい。


別に無理に縛る必要はないんだ。


「ということで、必然的にここに来ることになったな」


俺はそう言って、前にアルマと一緒に来た洋服屋の前で足を止めた。


「それじゃあ、各自買い物開始ということで。

終わったら、店の入り口に集合だな。

ロミア、ヘレナ、悪いがアネッタさんの服選びを手伝ってあげてほしいんだけど良いか?」


俺がそう言うと、ロミアが笑顔で頷いた。


「うん、分かった!二人とも行こう!」


そう言うと、ロミアは二人の手を引っ張って楽しそうに洋服屋の中へ入っていった。


「さてと、それじゃあ俺たちもアルマの誕生日プレゼント選ぶか」


「そうだね」


俺、シガラ、イヴァンの三人も同じく店の中に入った。


「そういえば、イヴァン先輩は女性達のほうへ行かなくて良かったんですか?」


俺が品定めをしながら尋ねると、イヴァンは頷いた。


「えぇ、女性の買い物というのは女性だけで行うほうが良いんですよ。

それに、男の私が一緒では買いづらいものとかもあるかもしれませんから」


「まぁ、それはたしかにありそうですね。

さて、アルマのプレゼントに良さそうなのはあるかな」


「そのアルマさんって方は、どういうものが好きなんですか?」


「アルマは基本的に、見た目より機能性や使いやすさを重視するタイプなのでシンプルなハンカチとかその辺りが良いかなぁって思ってます」


「なるほど、見た目にはあまり拘らないと」


「そうですね。

ただ、アルマは貰えるものはほとんど何でも貰う精神なのでそこまでプレゼント選びに失敗することはないかと思います」


「渡す側としてはありがたいですね」


うーん、とは言っても前にアルマとここへ来たときにはプレゼントの候補を作れなかったからな。


「シガラ、プレゼント何にした?」


俺が尋ねると、シガラは子ども用サイズのエプロンを手にとって俺に見せてきた。


「これなんか良いんじゃないかな。

料理だけじゃなくて、他の仕事中でも使えるし」


「あー、たしかに良いな。

うーん、そうなると俺はやっぱりハンカチとかシンプルな物のほうが良さそうだな」


俺はそう思い、目の前の棚に並べられていたハンカチを一枚手にとった。


先程シガラが俺に見せたエプロンは赤色だった。


なら、ハンカチはオレンジが良いかな。


「それにするのですか?」


「はい。

結局深く考えた所で泥沼にハマりそうですし」


俺はイヴァンにそう言って、シガラと共に会計を済ませて店の外へ出た。


「さてと、あとは女性達を待つだけですね」


「あ、そうだ二人に話しておかなきゃいけない事があったんだ」


俺がそう言うと、シガラが首を傾げた。


「ん?何を?」


「悪いがここじゃ話せないんだ。

今日帰った時、寮の部屋で話すよ」


「分かりました。

では、私も行きましょう」


「お待たせー!」


俺たちがそんな話をしていると、ロミア達が何個か袋を持って店から出てきた。


アネッタがメイド服のままでいるから、多分持っている袋の中に買った服が入っているのだろう。


その後、俺達はオアシスに行ってアルマに誕生日プレゼントを渡した。


ちなみにアルマは俺たちがプレゼントを渡すまで今日が自分の誕生日だというのを忘れていたらしい。


まぁ、アルマらしいか。









「それで、僕たちに話したいことって?」


寮に帰ると、シガラに尋ねられた。


「・・・俺の体質について、二人に話したいんだ」


「体質、ですか?」


「はい。

その前に、今から話す事は僕の命に関わる事です。

くれぐれも他言はしないでください」


俺がそう言うと、二人は真剣な顔で頷いた。


ちなみに、アネッタは今ロミア達の部屋に行っている。


つまり、この部屋には俺を含めシガラとイヴァンの三人だけだ。


あんまり人に知られたくないことだからありがたい。


「まず、僕は神選者ゴッドエレクションです」


俺がそう言うと、シガラが首を傾げた。


「ゴッド、エレクション?」


「たしか、生まれつき特殊な能力を持っている人達の事でしたか?」


「その通りです。

そして、僕の能力は想像強化イメージストレニング

想像した動物の能力で体を強化できるというものです」


「それはすごいですね。

ですが、何故それを私たちに?」


「問題はこの能力を使った後にあります」


「使った後って?」


シガラに尋ねられて、俺は椅子に腰を降ろして二人の方を見た。


「どんな人でも、能力使用後はその反動が来るんだ。

俺の場合は、想像した動物によって痛みと持続時間の違う全身筋肉痛。

それが来ると、痛みでほとんど動けなくなっちまう」


「そ、そんなに強いんだ。

そういえば、前にロミアちゃんがガルが死んじゃうって言ってたのって・・・」


「昔色々試してて、その中の一つをやったらあまりの痛さに気絶したことがあったんだよ。

多分、その時の事を心配して言ったんだと思う」


「それはたしかに心配になりますね」


「えぇ、それでこの前のウィリアムとの決闘の時みたいに僕が暴走してもしかしたら能力を使うかもしれませんから。

魔法で痛みをとることが出来ないので、多分二人にも迷惑かける事になる可能性があるので今日話しておこうかと思って」


「人に知られちゃいけないんじゃ、周りの人に説明できないもんね。

何かあったら、僕たちもフォローするよ」


「悪いな」


「構いません。

むしろ、話していただけて嬉しいですよ」


その後、俺たちはアネッタがどんな服を買ったのか話ながら過ごした。

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