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第66話 信頼と巨乳

無事一次試験試験を合格した俺、ロミア、シガラの三人は腕に巻いたハチマキを返し二次試験の説明を聞くためにムミータの元に行った。


俺たちの周りに他の受験生がいるが、最初いた人数からかなり減った気がする。


「えー、それでは第二次試験の説明をします!

その前に、第二次試験は魔法の実技テストと筆記テストの二種類があります!

実技テストを受けたい方はこの場に残って、筆記テストを受けたい方はあちらの係員についていってください!」


そう言ってムミータが指した方には、なんていうか、ものすごく不健康そうな男性が立っていた。


灰色のローブに痩せた体で、暗いオーラが少し出ている。


何だろう、あのものすごく悪巧みしてそうなTHE・魔法使いは。


すると、THE・魔法使いは右手を上に挙げて、そのまま町の方へ歩き出した。


それを見た受験生達は、戸惑いながらも一人、また一人と後についていく。


・・・怪しい勧誘に見えてきた。


少しすると、周りにいたほとんどの人がいなくなっていた。


残ったのは、俺達3人を入れて20人ちょっとだろうか。


ていうか、150人くらい筆記の方に流れていったんだけど、もしかして筆記の方が受かりやすいとかあるのか?


それとも、魔法を使える人が根本的に少ないのか?


まぁ、俺達は元々実技テストを受ける気だったから良いんだけどさ。


「それでは、今この場に残った方々で実技テストを始めます!

そうですね・・・今から皆さんを4つのグループに分けます!

ここから右の6名は青色のローブの試験官の元へ!

ここの6名はあそこの・・・巨乳の試験官の元へ・・・」


巨乳!?


唐突なワードにビックリした。


ムミータの指した方を見ると、たしかに巨乳のなんかふわふわした雰囲気の人が手を挙げて「こっちでーす」と言っていてる。


その揺れる胸を見るたびに、ムミータがものすごく悔しそうな顔をしている。


この人、うちの師匠と同じタイプなのかな。


「コホンッ!

えー、ここの5名はあの緑色のローブの試験官の元へ!

最後に残った5名は私が担当します!

それでは、各自担当の試験官の所へ行ってください!」


ムミータの言葉で、受験生は各々の担当の試験官の元へ散らばっていった。


ちなみに、俺、ロミア、シガラはムミータが担当だ。


「えー、それでは皆さんは私が担当します。

少し場所を移動するので付いてきてください」


そう言うと、ムミータは一次試験の時に走った道の方へ歩き始めた。


俺達は、黙ってそのあとに付いていく。


少し歩くと、ムミータは足を止めて俺たちの方を振り返った。


「この辺りで良さそうですね。

では、これより第二次試験を始めます。

と、言いたいところなのですがまずは左から一人ずつ受験番号と名前を言ってください」


そう言うと、ムミータはローブの中から木でできたクリップボードのような物を取り出した。


「受験番号12番、サミジスト・ドーグです。

よろしくお願いします」


俺の左隣の人がお辞儀をする。


今更だけど、周りが年上しかいないから俺とロミアがものすごく場違いな感じなんだよな。


「・・・はい、ありがとうございます」


ムミータはそう言うと、ボードに何かを書いている。


多分、受験番号と名前だとは思うけど。


「では、次の方お願いします」


あ、俺の番か。


俺は一歩前に出た。


「はい、受験番号123番ガルファット・ファーリンです。

よろしくお願いします」


そう言って俺はお辞儀をした。


その後、ロミアとシガラも自分の受験番号と名前をムミータに言った。


そして、5人目の人が受験番号を言ったときに衝撃を受けた。


「では、次の方お願いします」


ムミータに言われて、その受験者は前に出た。


「受験番号346番・・・」


・・・ん?


346?・・・346!?


あまりの衝撃に、俺は今前に出ている受験者の人を見た。


クレアと同い年くらいの人かな。


長い黒髪にキリッとしたカッコいい系の女性だ。


って違う!そこじゃない!


346とは何!?


いや、たしかに200は超えると思ってたよ!


でも何で300まで飛び越えるの!なに1、7倍に増やしてるの!


俺と同じことを思ったのだろうか、ロミアとシガラも346番の人を見ている。


「・・・はい、ありがとうございます」


俺達が衝撃を受けていると、いつのまにかその人は名前を言い終わっていた。


何とも言えない嫌な汗が少し出た。


「それでは、改めてこれより第二次試験を開始いたします。

受験番号の早い順でいきます。

まずは受験番号12番、サミジスト・ドーグさんお願いします」


「はい!」


ムミータに言われて、サミジストが前に出る。


「それでは、ご自身の得意な魔法を1つ使用してください」


「はい!」


サミジストは返事をすると、右手の手の平を前へと向けた。


それを、ムミータは少し離れた場所で横から見ている。


「我が身の力を、如何なる物をも燃やす炎へと変える」


サミジストが魔法の詠唱を始める。


そして、サミジストの右手に魔力が注入されていくのだが・・・


「ぎこちないね」


俺の隣で見ていたロミアがポツリと呟いた。


ロミアの言う通りだ。


魔法を詠唱して使う場合は、呪文の詠唱と魔力の注入がスムーズに行われるのが望ましいし、皆それを意識している。


しかし、サミジストの手の平で作られている炎弾ファイアーボールは形が歪に形成されていっている。


俺が初めて魔法を使った時にそっくりだ。


「多分、詠唱を意識しすぎているんだ」


俺は小声でロミアに返した。


「でも、あのままじゃ・・・」


「あぁ、失敗する」


俺とロミアの予想は的中した。


サミジストが「炎弾ファイアーボール!」と叫んで魔法を放つと、最初は真っ直ぐ行ったもののすぐに方向を変えて明後日の方向へ行ってしまった。


大きさはそこそこあっただけにもったいない気がする。


ムミータはそれを確認すると、ボードになにかを書きすぐにサミジストの方を見た。


「ありがとうございます。

下がってもらって大丈夫です」


「・・・はい」


ムミータに指示され素直に下がったサミジストではあるが、その表情はとても悔しそうであった。


多分、本人が1番この結果に納得していないのだろう。


「では次!受験番号123番、ガルファット・ファーリンさん!お願いします!」


「・・・はい!」


俺はムミータに呼ばれて前へ出る。


「ガル!頑張って!」


「ガル!ファイト!」


俺は声援を送ってくれる二人に向かって笑顔で頷いた。


いや、正確に言えば笑顔で頷く事しか出来なかった。


ここまで来て緊張しても仕方ないだろ!


腹括れよ!


「それでは、ご自身の得意な魔法を1つ使用してください」


「はい!」


俺は大きく深呼吸をした。


そして、ゆっくりと右手の手の平を上に向けて五本の指を立てた。


落ち着け、やることはいつもと変わらない事だ。


俺はいつも通り、指先に魔力を注入していく。


属性は火だ。


段々と形が形成されていく。


大丈夫だ、形も綺麗な円形だ。


・・・よし、いつもの感覚だ!イケる!


炎弾ファイアーボール


俺の五本の指先で、ろうそくの火と同じくらいの大きさの炎弾ファイアーボールが浮いている。


俺はムミータの方を見た。


「これで、良いですか?」


俺が尋ねると、ムミータは少しの間驚いたまま固まっていた。


しかし、すぐに我に帰るとボードに何かを書込みすぐに俺の方を見た。


「だ、大丈夫です。ありがとうございます」


俺は魔法の中断し、大きく息を吐いた。


ふぅ、何とか成功した。


俺は下がって、さっき自分がいた場所に戻った。


「ガル、お疲れ様」


ロミアが小声で俺に言ってきて、シガラは俺を笑顔で見ている。


「ありがとな」


俺も笑顔で返した。


「では次!受験番号124番、ロミア・サダージュさん!お願いします!」


「は、はい!」


ムミータに言われて、ロミアがカクカクした動きで前に出る。


あいつも何だかんだ言って緊張してるんだな。


・・・まだ俺には仕事が残ってるな。


「試験官!お願いがあります!」


俺は手を挙げて、ムミータに向かって叫んだ。


「何ですか?」


ムミータは顔を見て、鋭い目つきで尋ねてくる。


「次にロミア・サダージュが使う魔法、その後処理を僕にさせてもらえませんか?」


「・・・理由を教えてください」


俺は、ムミータの顔を見て真剣に答えた。


「ロミアが、彼女が本気を出せるようにするためです」


俺の言葉に偽りはない。


たしかにロミアは今までルール上の本気を出していた。


だけど、そのルール上の本気を出すためにも条件があったんだ。


それは、魔法を撃つ相手が俺であること。


シルビアとの魔法の授業の時でさえ、ロミアはルール上の本気すら出さなかった。


いや、出せなかったのだ。


ロミアが本気で魔法を撃てる相手は俺だけだ。


もちろん、シルビアにロミアの魔法を対処できる力がない訳じゃない。


ロミア曰く、俺に対してが1番安心して撃てるらしい。


今回の試験、失敗は出来ないんだ。


だから、ロミアにはなるべく好条件で受けてほしい。


俺の言葉を聞いて、ムミータは目を閉じて考えている。


「お願いします!」


俺は必死に頭を下げた。


誰かの為にこんなに必死に頭を下げるなんて何年ぶりだろうか。


いや、下手したら生きてきて初なのではないだろうか。


別に何か言われたって構わない。


ロミアが魔法に関して真面目に取り組んできたのは俺が1番良く知っている。


たしかにロミアは魔法に関しては天才的だ。


でも、それは努力で勝ち取ったものだ。


天才と呼ばれる人達の努力が1番大変なんだ。


努力が全部報われる事は無いかもしれないけど、ロミアの努力は報われて欲しい努力なんだよ。


俺は顔を上げて、ムミータを見た。


ムミータがゆっくりと目を開ける。


「・・・分かりました。

少し異例な事ではありますが、許可しましょう」


「ありがとうございます!」


「ただし・・・」


感謝をする俺に、ムミータはこう尋ねてきた。


「そこまで言うという事は、次のロミア・サダージュさんの魔法には期待しても良いという事ですか?」


・・・正直な話し、そう返ってくるとは薄々思っていた。


シルビアに太鼓判を押してもらったし、俺もロミアなら大丈夫だと思っている。


でも、実際にそう言われるとプレッシャーが半端ないのだ。


いや、俺はもうテストは受け終わっている。


問題は受ける当人のロミアだ。


俺は恐る恐るロミアの顔を見た。


・・・笑っていた。


俺と目の合ったロミアは、いつもより安心した笑顔で俺を見ていた。


そうだよな、ここまで言ったやつが信じてないなんてダメな話だよな。


俺はムミータのほうを見た。


「はい!期待してもらって大丈夫です!」


俺が答えると、ムミータは静かに頷いた。


「分かりました、では二人とも準備をしてください」


『はい!』


ロミアは前に出て、俺はそんなロミアの真正面に立ち後ろへ下がった。


そう、いつもの手合わせの時の立ち位置だ。


「ガル!行くよ!」


「・・・おう、来い!」


俺が言うと、ロミアは両手を天へと向けて伸ばした。


俺もロミアと同じように両手を天へと向けて伸ばす。


ロミアが注入している属性は水だ。


俺は両手の手のひらに火の属性の魔力を注入する。


水属性の魔法を火属性で相殺するのは利口ではないだろう。


だけど、あれだけ言って今のこの状況を作ったんだ。


死ぬ気で相殺してやる。


「それにしても・・・デカイ」


ロミアの作り出しているのは、一般的に知られている水の初級魔法、水弾ウォーターボールだ。


しかし、その規模は決して初級魔法と呼べるような大きさではない。


本当に町1つを沈めれるのではないかという大きさだ。


・・・相殺しそこねたら、俺が死にそうだな。


俺は全力で魔力を注入したが、大きさはロミアの水弾ウォーターボールの半分位だ。


他の受験生達の顔が見えるのだが、みんなロミアの水弾ウォーターボールを見てこの世の終わりのような顔をしている。


正直、俺もこの大きさは今まで見たことがない。


ロミアが今まで本気を出せなかった理由が改めて理解できる。


どうやら、お互いに魔法の準備は出来たようだ。


「・・・水弾ウォーターボール!」


ロミアがばかでかい水弾ウォーターボールを上へと撃つ。


良かった、真正面なら無理だけど上ならまだ余裕がある。


「・・・炎弾ファイアーボール浮遊フローティング


俺の放った炎弾ファイアーボールは少し前へ行くと、その場でふわふわと浮かんでいる。


よし、あれくらいなら大丈夫だろう。


俺は、さらに両手に魔力を注入する。


属性は、風だ。


そういえば、昔から風の属性ってあんまり使ってこなかったな。


他の属性よりも切断能力が強い分、危険性が高いからだ。


だけど、風の属性にはその属性にしかない特性を持っている。


それは、火の属性を強くしてくれることだ。


俺の頭上には、先程の炎弾ファイアーボールと同じ大きさの風弾ウィンドボールがある。


これをぶつけるとどうなるか。


風弾ウィンドボール!」


俺の放った風弾ウィンドボール炎弾ファイアーボールにぶつかると、混ざりあい1つになった。


ロミアの魔法と、俺の魔法がぶつかり合う。


爆発音にも似たものすごい音をたてて、辺り一面を水蒸気が覆う。


大きさもロミアの水弾ウォーターボールを超えていた。


多分相殺出来ているはずだ。


どちらにしろ、一気に魔力を使いすぎたせいで疲れが来ている。


水蒸気で視界が塞がれていて、状況を確認できない。


少しすると、水蒸気が消えていき周りが見え始めた。


俺は空を見上げた。


満点の青空が広がっている。


どうやら、成功したようだな。


確認をしようとムミータを見ると、口を開けたまま空を見上げていた。


さすがの試験官でも、あんな小規模の戦争みたいなの見せられたらああなるか。


「試験官!」


俺が呼ぶと、ムミータは慌てて俺を見た。


そして、ハッと我に帰ってボードに書き込みをした。


「あ、ありがとうございます。

ロミア・サダージュさん、ガルファット・ファーリンさん、お二人とも下がってもらって大丈夫です」


「はい」


俺は元いた自分の位置に戻った。


「ガル、ありがと」


俺の隣で、ロミアが笑顔で言ってきた。


「どういたしまして」


俺も笑顔でロミアに返す。


・・・さて、残すのはあいつだけだ。


俺とロミアは何とか成功した。


あとは、ラスト一人の成功を祈るのみだ。

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