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第58話 やり返しと専属神様

昼飯をごちそうになった俺達はオリビアの屋敷を出た。


本当はもう少しいてくれと頼まれたのだが、あまり長居するのも気が引けるしな。


「何か、そんなに長い時間いたわけでもないのに疲れたね」


隣を歩くクレアが苦笑いしながら言った。


それを聞いたアルマが頷く。


「そうだな。

それにしても、ガルファットが王になれるとか聞いた時はビックリしすぎて話の内容がほとんど入ってこなかったな」


「ガル、何で王様にならなかったの?」


ロミアが俺の顔を見ながら尋ねてくる。


「逆に3人に訊くけど、俺が王様になった姿を想像して初めに思ったこと言ってみてくれよ」


俺が言うと、3人は「うーん」と言いながら少し考え込んだ。


『似合わない』


そして、3人同時に打ち合わせでもしたかのように言った。


「まぁ、そうだよな。

俺自身、王様って柄じゃないし」


「ガルが王様だったら、人に頼まないで何でも自分でやろうとして無理しそう」


「あー、ロミアちゃんの言うとおりだね。

そのせいでいつか過労死してそうだもん」


「ロミアのは否定はしませんけど、クレアの言う過労死は何か本当にありそうで恐いですね」


この二人とは付き合いが長いから、俺の性格や考えてる事はほとんど知られているもんな。


「アルマはどうなんだ?」


「ん?俺か?

俺はお前が王様になった姿を一回想像してみたんだよ」


「おぉ、何か真面目に考えてくれてたんだな」


「それで、王様って椅子に座って少し高い所から見下ろしてるイメージがあるからお前をそれに当てはめてみたら・・・」


「みたら、どうだったんだ?」


「・・・何かムカついたから殴ってた」


「お前は想像の中でも俺を殴るのかよ!」


俺がつっこむとアルマはこちらを見た。


「しょうがないだろ、普通なら威厳とかありそうなのにお前に見下ろされたらムカついたんだよ」


「だからって殴る事はないだろ。

そういう暴力的な所を直せば、アルマならモテると思うんだけどなぁ」


俺がそう言うと、アルマは少し顔を赤くして顔を背けた。


「べっ、別にモテたいなんて思ってないから良いんだよ!

それに俺が暴力的なのは直す気もないし直る気もしねえよ」


「・・・お前、そのままだと友達出来ないぞ」


「別に友達なんていなくても生きていけるから良いんだよ」


アルマがぶっきらぼうに言うと、ロミアが歩きながらアルマの腕に抱きついた。


「大丈夫だよ、私がアルマの友達だもん。

ねぇ、アルマ」


「あっ、いや、その・・・」


アルマの歯切れの悪い返答にロミアが不安そうな顔をする。


「アルマは、私が友達じゃ嫌?」


「そ、そんなことはないけど・・・」


「じゃあ私がアルマの友達!」


ロミアがアルマの腕に抱きついたまま笑顔になった。


そんなロミアを見てアルマが溜め息をついた。


「はぁ、ガルファットといいロミアといい何でこうもやりづらいんだか。

クレア、よくこいつらの面倒見きれるな」


アルマの言葉に、クレアが笑いながら返した。


「二人とも普段は良い子だからね。

たしかに時々暴走する時はあるけど」


「まぁそこは同意するけどさ・・・」


「それに、僕だってアルマちゃんの事友達だと思ってるよ?」


「友達か。

いたためしがないから何とも言えないな」


アルマの言葉に俺は首を傾げた。


「じゃあお前、俺達の事どんな風に思ってたんだ?」


俺が尋ねると、アルマは視線を上へ向けた。


「そうだな・・・まずロミアは妹みたいな感じだな」


「それは納得だな」


「で、クレアは歳が少し離れているから姉かな」


「やった、お姉ちゃんだ」


アルマの言葉を聞いて、クレアが嬉しそうに言う。


まぁ、うちにいた頃はフィーネがいたから姉って感じじゃなかったしな。


俺は師匠だったし、ロミアもクレアに対しては姉というよりは友達のほうが強いみたいだし。


「じゃあ、俺は?」


「ガルファットは、そうだな・・・」


アルマは少し考えると、思い付いたのかポツリと言った。


「飯を奢ってくれる奴、だな」


「ただの都合の良い男じゃねえか!」


俺が突っ込むと、アルマが俺の顔を見た。


「お前だって俺の事似たような感じで紹介してただろ。

お返しだ」


「いや、だからあれは皆をリラックスさせようと思っていただけなんだが・・・」


「じゃあ、二人にも訊いてみろよ。

ロミアは、ガルファットの事どう思ってるんだ?」


アルマが自分の腕に抱きついているロミアに尋ねた。


「ガルの事?

うーん私にとってガルは・・・先生、かな」


「先生?」


首を傾げる俺に向かってロミアは頷いた。


「うん、色々な事教えてくれて私を受け止めてくれる先生」


「受け止めるって、具体的に何を受け止めるんだ?」


「魔法とか、あとは私が抱きついたらちゃんと抱きしめてくれるし」


笑顔で言うロミアを見た後、アルマが俺の顔を見る。


「あの、アルマさん。

何か目が怖いんですが・・・」


「そうか?いつも通りだろ」


と、本人は言っているのだが目がものすごく怖い。


一言で言うなら、目が据わっている。


「まぁ、それは置いといてだ。

クレアはガルファットの事どう思ってるんだ?」


「ん?僕?

僕にとってはガルファット君は誇れる弟子だよ。

自分がガルファット君の師匠だっていう事実が嬉しいくらいだよ」


そう嬉しそうに言うクレアから、俺は目を逸らした。


こぱっずかしくなったからだ。


「でも、実は直してほしいところがあるんだけどね」


クレアがアルマに向かって苦笑いしながら言った。


「どこを直してほしいんだ?」


「・・・鈍感なところ」


『同じく』


「急にどうした!?」


クレアの言葉を聞いて、アルマとロミアがそれに同意した。


「まぁ、それがガルファット君なんだけどね」


「こいつの場合、こいつ自身がっていうより相手のほうが不憫だもんなぁ」


「何でガルは気付かないんだろう。

私でも分かるのに」


なぜか分からないが、3人がそれぞれ色々と解釈している。


俺はというと・・・理解してないです。


「あの皆さん、何の話しかまったく分からないんですが・・・」


俺が言うと、アルマがこちらを見た。


「気にするな、女同士の話だ」


そう言うと、アルマはクレアとロミアと話始める。


その後、俺は宿に帰るまでずっとモヤモヤしながら帰る事になった。










その日の夜、俺は周りを見て皆が寝静まったのを確認した。


相変わらず俺の隣では、アルマが寝息をたてながらぐっすりと眠っている。


こいつ、こういう時は可愛いのに何で普段はあんな暴力的なのだろうか。


「・・・うるせぇ」


胸の鼓動で体が痛かった。


目の前にいるアルマが呟くように寝言を言ったのだ。


俺が考えていた内容の返しに合った言葉だったので驚いた。


俺の考えをよまれたのかと思った。


しかし、その後は特に何かを言うわけではなく規則正しい寝息をたてている。


「・・・ふぅ、さてと」


俺は事前に手に握っていたペンダントを確認した。


家を出る前に、紅から渡されたペンダントだ。


たしか、紅の姿を思い浮かべれば良いんだよな?


俺はペンダントを握りしめ、目を閉じて頭の中で紅の姿を想像する。


いつも通りの紅い着物に身を包み、こちらを笑顔で見ている紅だ。


こんな感じで良いのか?


俺がそう思った時だった。


想像した紅が俺に話しかけてきた。


「お久しぶりですね、ガルファットさん」


そう笑顔で言ってくる紅に、俺は尋ねた。


「これは、会話することに成功したって事で良いのか?」


「はい、こうして会話が成立しているのがその証拠です」


俺の言葉に紅は頷いて返した。


「それで、今日はどうされたのですか?

見ていた感じだと、まだ魔法学校へ入学はしていないようですが」


「実は、お前に訊きたいことがあるんだ」


「ん?訊きたい事ですか?何でしょうか?」


「紅って、料理できるのか?」


俺の質問に紅は首を傾げた。


「料理、ですか?また何で急に?」


「今日料理の話をしてさ、紅は出来るのかなと思って」


「そういうことですか。

そうですねぇ・・・」


紅は少し考えた後、ボソッと言った。


「一応、できますね」


へぇ、何か意外な感じだな。


「何か得意料理はあるのか?」


俺が尋ねると、紅は満面の笑みで答えた。


「お湯を入れるだけでできる物なら得意ですよ」


「インスタント以外で頼む」


俺が返すと、紅は残念そうな顔をした。


「うぅ、あれが楽で簡単なのに・・・」


「あれは料理として扱わない気がするぞ」


「これでも一応作ろうと挑戦したことはあるんですよ?

ただそんな暇はないし、手間もかかってめんどくさいですし」


「それ、彼氏とか出来た時に困るんじゃないか?」


「料理のできる人とお付き合いしたいですね!」


いや、そんな堂々と言われても。


俺が苦笑いしていると、紅が笑顔で尋ねてきた。


「そう言うガルファットさんは、料理できるんですか?」


俺はそんなに紅に頷いて返した。


「まぁ、基本的な物は作れるかな。

両親が死んでからは一人暮らしだったから、節約できる事はするように決めてたからな。

食費なんて外食を極力減らして自分で作るようにすれば、ものすごく浮くし」


「・・・ガルファットさん、私と結婚しませんか?」


笑顔で提案してきた紅に、俺は首を横に振った。


「悪いが、神様を養う気はないな」


「いいじゃないですかー」


「それに、俺がお前と結婚するとしたらそっちの世界に行かなきゃいけないんだろ?

それは嫌だし」


周りを神様に囲まれて生活とか何か精神的に疲れそうだからな。


俺の言葉を聞いて、紅は少し考えた後何かを思い付いたのか手をポンッと叩いた。


「じゃあ、私がそちらの世界に行けばいいんですね」


・・・は?


「そんなこと出来るのか?

というか、出来たとして神様がそんな事して良いのか?」


「私も出来るかは分かりませんね。

ただ、仮に出来たとしても上の首が何個飛ぶのか、はたまた何十個飛ぶかも分かりませんし」


「そんな事したらお前の上司の人達が可哀想だからやめてあげてくれ」


紅一人のやった事で会社の上役の首が何十個も飛んだらシャレにならないし。


「そうですか、残念です」


俺が言うと、紅は少ししょんぼりとしました。


「ていうか、俺を口説いてないでさっさと料理作れるようになって他の男口説いた方が早いよ」


「うーん、それはそうなんですけど。

私、基本的に周りの人達と価値観が合わないんですよね」


「お前、前に男が苦手って言ってなかったか?

価値観合わなくて男が苦手って、結婚とか難しすぎないか?」


俺の言葉を聞いて、紅がまたしょんぼりとした。


「そうですよね。

はぁ、どこかに価値観が合って料理ができる男性はいないものですかね」


紅がチラチラと見てくる。


「400歳のおばあちゃんにそんな事言われて・・・・」


と、俺が言いかけた時だった。


突如、目の前から紅の姿が消えた。


「それは、言わない約束でしたよね?」


そして、すぐ後ろから紅の声が聞こえた。


俺は言葉を発することが出来ずに、慌てて後ろを振り返った。


そこには、紅がものすごく怖い笑顔で俺を見て立っていた。


「・・・お前、いつの間に」


「次年齢の事言ったら、ガルファットさんが前世で初めて書いた小説を音読して読み聞かせしますからね」


「俺が悪かったです。

どうかそれだけはお止めください紅様」


俺はその場に土下座をして紅にお願いした。


何か、前にも似たような事があった気がする。


「じゃあ、私のお願いを叶えてくださったら許してあげます」


俺は顔を上げて、紅を見た。


「お願い?」


「はい、次に私と直接会う時はガルファットさんの手料理を持ってきてください」


「俺の手料理?何でも良いのか?」


「はい、私好き嫌いは特にないので」


「・・・分かった」


正直ホッとした。


紅の事だから、”じゃあこのまま結婚届けを出しに行きましょう“とか言われるのかと思った。


「そういえば、お前仕事の方は良いのか?」


俺が尋ねると、紅は笑顔で頷いた。


「はい、一応こうやってガルファットさんと会話しているのも仕事に入ってますし」


「お前、こんな世間話みたいので金貰ってるのか」


「良いんですよ。

表向きは転生者が疑問に思った事を質問してくるから、それにできる限り答えるって事になってますから」


「他にやることってないのか?」


「一応ありますけど、ガルファットさんのような転生者というのは珍しいケースですから。

大体の事はガルファットさん優先にすることが出来るんですよ。

殆ど、専属サポーターならぬ専属神様ですね」


「そうか、お前が俺の専属なのか」


俺が少し残念そうに言うと、紅が頬を膨らませた。


「何ですかその顔は。私じゃ不満ですか?」


「不満ではないけど、何かこうもフレンドリーだと神様って感じがしないんだよなぁ。

神様ってもっとこう偉そうなイメージだし」


「私の周りはそういう神様が多いですよ?

どうします?担当を代えますか?」


紅の提案に、俺は首を横に振った。


「いや、やめておく。

考えたら、そんな神様らしい神様が来ても俺が困るだけだった」


「そうですよ、私くらいがちょうど良いんですよ」


「そうだな、俺には紅が合ってるわ」


俺と紅はお互い笑いあった。


「・・・本当に、何で私神様やってるんだろう」


「ん?何か言ったか?」


「いえ、何でもありません」


「そうか、じゃあ俺はそろそろ戻るわ」


俺が言うと、紅が頷いた。


「はい、また来てくださいね」


「あぁ、じゃあな」


笑顔で見送る紅に、俺は別れを告げて目を閉じた。

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