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第42話 お人好しと理由

その日の夜、ご飯を食べている時にクレアにロミアがアルバイトしたがっている事を伝えた。


ちなみに、その時のクレアの返答は


「いいんじゃない?

ここなら他の場所で働くより待遇とか諸々良いと思うし」


という事で、無事了承を得ることができた。


ロミアはというと、嬉しがるかと思っていたが予想とは違って緊張してきたようだ。


まぁ、気持ちは分からなくもないな。


一方の俺は、今日は特に大きな収穫はなかった。


少し町の中を歩き回ってみたけど、人が多いなぁという感覚だけが残った。


とりあえずまだ時間はあるから、明日は半日かけて町を探索してみるつもりだ。


それで、今どんな状況かというと・・・


「・・・ガル~」


ベッドでロミアに抱き付かれたまま横になっています、はい。


いや、確かに2人で1つのベッドを使うのは了承したけどまさかこんな状態になるとは。


・・・あのー、それにしてもロミアさん顔近くないですか?


これ、何かの拍子でお互いの唇が触れあう事になりかねないですよ?


え?何で逃げ出さないのかって?


この子、寝る直前からがっちり俺の首の後ろに両手を回していて寝たあともどんな夢見てるのか、なかなかロックを外してくれないんです。


え?羨ましい状況じゃないかって?


・・・普段分かってやられるのとこういう無防備の時にやられるのだと、何か知らないけど無防備の時にやられるやつは緊張するのでおいしい状況とか言ってられないです。


嬉しくないわけではないけど心の準備をさせてほしいな、これは。


なんだか、密着してるせいで体が熱くなってきた。


ちょっと夜風に当たりに行きたいんだが、ロミアはこの拘束を解いてくれるかな?


「・・・ロミア、外に一回出ていい?」


「・・・くぅー」


ダメだ、熟睡中のようだ。


うーん、このままだと俺が寝れるか分からないな。


「ひゃっ!」


俺が悩んでいると、突然ロミアが驚いた声を出して俺への拘束を解いた。


俺は驚いて一瞬固まったが、すぐさまチャンスだと思って目にも止まらぬ速さでロミアの腕から脱出してそのまま転がってベッドから転げ落ちた。


「いてて・・・」


俺は床に落ちた体をゆっくりと起こした。


とりあえず脱出には成功したな。


それにしても、ロミアの奴何で急にあんな声出したんだ?


俺は寝ているロミアの方を見た。


さっきほどの行動が嘘のように、今はぐっすり静かな寝息をたてて寝ている。


あ、ちなみに俺は何もしてないです。


・・・本当に何もしてないからね!?


俺は寝ているロミアとクレアを起こさないように、部屋の鍵を持ってそっと入り口の扉を開けて外へ出た。


扉を閉めると、ガチャリと音がするのが聞こえた。


そういえば、この扉はどうやらオートロックらしい。


それぞれの部屋に割り当てられた木の板が鍵の代わりをしていて、鍵は部屋の内側からは開けられても外からはその部屋の鍵を使わないと絶対に開かないらしい。


どういう仕組みなのか教えてくれたクレアに聞いてみたけど、クレア自身も詳しいことは分からないらしくどうやら魔法でその仕組みを作っているようだ。


ただ、俺が知っている魔法の属性は火、水、土、風、光、闇、治癒の7種類だ。


今あげたどの属性とも違う種類の魔法をまさかこんな所で見つけるとは。


このオートロックに使われている種類の魔法も、魔法学校なら教えてもらえるのか?


だとしたら、想像の何十倍も楽しそうだ。


今からワクワクが止まらないな。


さて、オートロックによるワクワクはここまでにして・・・


「どっちに行こうかな」


俺は左右に伸びた廊下をそれぞれ見た。


俺から見て左側は1階とここを繋ぐ階段があるほうだ。


一方の右側はまだ1度も行ったことのないほうだ。


・・・右側に行ってみるか。


俺はそのまま右の廊下を歩きだした。


ちなみに周りには部屋があるので外からの光りは入ってこないが、この宿の廊下には天井に埋め込まれた形で照明のようにランプが廊下を照らしてくれている。


そのおかげで夜だというのに充分なほど明るい。


そういえば生まれたばかりの頃はそこまで気にしてなかったけど、この星には太陽や月によく似たものがあるんだよな。


それぞれの星が昼と夜に、周りを照らしてくれる。


ただ、1つだけ確実に違うところがある。


それは、この世界の夜に光を放っている星は地球の月と違って欠ける事なくずっと満月状態だということだ。


俺も天文学に詳しい訳じゃないから理由は分からないけど、電気のない場所じゃこの仕組みはかなりありがたい。


しかも、白夜ほど明るい訳じゃなく本当に夜の満月くらいの明るさなのが良いな。


そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか1階に行く階段の前へ来ていた。


どうやらぐるっと一周してきたようだ。


1階に行く階段の横にはこの上の階へ行く階段があるけど、せっかくだし上まで行ってみるか。


そう思い3階へ行く階段に向かおうとしたときだった。


足音が聞こえてきたのだ。


しかもその足音はだんだんと近づいてきている。


俺は1階へ行く階段を見た。


誰か分からないがこちらに上がって来る人影が見える。


「ん?君、こんな時間にどうしたんだい?」


その人は、自分を見下ろす俺の視線に気付いたのだろう。


顔をあげて俺を見ると、そう尋ねてきた。


「眠れなかったので、少し散歩をしていました」


俺が正直に答えると、その人はそのまま階段を上りきって俺の横に立った。


今の俺よりも年上の男の子だ。


年齢は、初めて会ったときのクレアくらいか。


身長は俺よりも高くて、短めの黒髪だ。


あどけなさが少しあるから、もしかしたら実年齢は見た目と違うのかな。


よく見ると、この男の子も魔族らしくオッドアイだ。


俺から向かって左が黒、右は灰色だ。


「そうだったんだ。

でもこんな時間に歩き回ってたら何かあった時に危ないからなぁ。

・・・良かったら、僕と一緒に散歩する?」


「良いんですか?」


俺が尋ねると男の子は笑顔で頷いた。


「うん、僕は見回りでこのあと上の階に行ってまた下に戻るからその間で良ければだけどね」


「それならお願いします」


俺が言うと、男の子はそのまま階段へと歩き出した。


「それじゃあ、行こっか」


そう言う男の子の背中を俺は追いかけるように歩き出した。


「えっと・・・名前、尋ねても大丈夫ですか?」


「ん?あぁ、そういえばまだ言ってなかったね。

僕の名前はシガラ、君の名前は?」


「ガルファットです。

さっき見回りって言ってましたけど、シガラさんはここの従業員なんですか?」


俺が尋ねると、シガラは歩く速度を俺に合わせ横に来て頷いた。


「うん、近い日に用事があるんだけどそれまではここで働かせてもらってるんだ。

あと敬語はしなくていいし、名前も呼び捨てでいいよガルファット君」


「・・・俺もガルでいいよ。

ここの仕事ってやっぱり忙しい?

結構大きい宿だから、色々やること多いと思うんだけど」


俺が尋ねると、シガラは歩きながら上を見た。


「うーん、その人が何を担当してるかによっても変わってくるけど厨房とか接客担当の人は大変かな。

僕は清掃やこういった見回りを担当してるからそこまで大変ではないけどね」


「なるほど、やっぱりそこは人それぞれなのか」


ロミアの奴が働きたいって言ってから気になってたから訊いてみたけど、どこも大変だよな。


俺が考えてる姿をシガラは笑顔で見ている。


「ガルは、ここで働きたいの?」


「ん?あ、いや、友達が短期間ここで働きたいって言ってたからどんな感じなのかなと思って」


「へぇ、ちなみにその友達はどのくらいまで働けるの?」


「次の魔法学校の入学試験までだから、あと2週間もないか」


俺が答えると、シガラは驚いた顔をした。


「君の友達、入学試験を受けるの?」


「あぁ、あと俺も受ける予定。

また明日から運動始めなきゃいけないな、このままじゃ体が鈍っちまう」


ここに到着するまで馬車での移動ばっかりでろくに体を動かしてなかったし、明日からまた走るか。


「・・・そうなんだ。

実は僕も受けるんだ、入学テスト」


「シガラもか?

ちなみに魔法は使える?」


俺が尋ねると、シガラは苦笑いをした。


「一応基本の4属性を最低限はってところかな。

だけどこの調子じゃ今年は難しいかもしれない」


「200人受けて5人受かればいいほうだもんな」


「え・・・?

ちょっと待って、それは初耳なんだけど」


俺がそういった瞬間、今まで順調に足を進めていたシガラが足を止めて顔を凍りつかせて俺を見た。


・・・マズイな、余計な事言っちまったか。


「200人受けてたった5人って・・・冗談だよね?」


やめてくれ、俺が悪かったからそんな親におかし買ってあげるって言われていざその時になってやっぱりダメって言われた子どもみたいな顔しないでくれ。


どうする?誤魔化すか?


200人中50人って言い直すか?


でも、そんなことしたところで実際の採用倍率が変わるわけでもないし、だからといってこのままシガラを絶望させるのも・・・


「・・・本当なんだね?」


いつまでも答えない俺に、シガラが諦めたように訊いてきた。


「・・・本当らしい、母さんが魔法学校の出身だったから訊いてみたけどそういう年があったのは事実だ。

そうじゃなくても、100人単位で受けて2桁合格するのも通常じゃ難しいかもしれない」


「・・・そうだったんだ」


シガラはフラフラと壁まで歩いていき、背中を預けるとまるで力が抜けたように座り込んだ。


「それじゃあ、僕が合格するなんて無理じゃないか」


シガラは俯いたまま、ギリギリ聞き取れるかぐらいの声で呟いた。


・・・俺はそんなシガラの姿を見てかける言葉を見つけられずにいた。


「シガラ・・・その・・・ごめん、俺が余計な事言わなければ」


「・・・いや、ガルのせいじゃないよ。

元々、僕の力じゃ合格はほぼ無理だって思ってたし」


「・・・シガラはどうして魔法学校に入学したいんだ?」


「話すと少し長くなるかもしれないけど、それでもいいかい?」


俺が頷くと、シガラはこちらを見て静かに話始めた。


「まず、ガルはもう気付いているかもしれないけど僕は魔族でバデルの出身なんだ。

バデルについては知ってる?」


「少しだけなら本で読んで知ってる」


「じゃあ、まずはバデルがどんな所か説明しようか。

バデルはローリンや他の二国と違って王がいないのに国として成り立っている不思議な所だ」


「それは本で読んだことがある。

バーデン・アリソンが封印された後も王無き国として成立してるって」


「でも、実際は国なんて呼べるところじゃないんだよ。

バデルはバーデン・アリソンが封印された後、各地方の魔族の長が次の王になると名乗りをあげたせいで四六時中戦争が絶えないんだ」


「元々同じ国に住んでて尚且つ同じ種族なのにそんなことになってるのか・・・」


「種族が同じでも考え方が違うらしくてね。

大きく分けて2つの考え方があるらしいんだ。

1つは人間と仲良くする考え、そしてもう1つは人間と対立する考え」


「ん?ちょっと待ってくれ。

俺は昨日この町を見て回ってきたけど、魔族を嫌う人間はいても人間を嫌う魔族なんて見かけなかったぞ?」


「この国、というかバデル以外の三国ではそうなんだよ。

考えてもみなよ、人間を嫌う魔族が自分から人間の住んでいる国に来るはずないだろ?」


確かに言われてみればそうか。


ということは、人間の住んでいる国にいる魔族は人間と友好関係を築ける魔族ってことか。


「そう考えると、魔族を嫌う人間って人間を嫌う魔族を知ってるから嫌うのか・・・」


俺が言うと、バデルが首を横に振った。


「いや、それはないと思うよ。

人間で自分からバデルに行こうって考える人はまずいないだろうからね。

殺されたら元も子もないし」


「そうなのか、じゃあ今日の奴は1発くらい殴っても良かったんだな。

お爺さんが殴る前に殴っておけば良かった」


「今日のって・・・もしかして受付で貴族が魔族にひどいこと言ったってやつ?」


「あぁ、その酷いこと言われたのがさっきここで短期間働きたいって言った俺の友達だったんだ。

まったく、初対面の奴に普通あそこまで言わないだろ」


「仕方ないよ、そういう人達は自分の気に入らない事はとことん嫌いだろうから。

・・・話が逸れちゃったから元に戻すね」


「あ、そうだったな悪い」


俺が言うと、シガラは少し明るい表情をした。


「大丈夫だよ。

話を戻すけど、2つの考え方を持った種族が戦争をすると被害を受ける人達もいてね。

僕の家族はちょうどその被害者になったんだ」


そう言うと、シガラの顔は暗い顔をした。


「僕が住んでた場所は人間と仲良くする考えを持った魔族の領地で、僕も小さい頃から人間とは仲良くするようにって教わったんだ。

穏やかな場所で、良く外で遊んでたよ。

皆、幸せそうだった。

だけどある日、人間を嫌う魔族がそこを襲撃したんだ。

他に住んでいた人達は皆殺されて、僕の両親もその例外ではなかった。

そんな中、幼かった僕と妹だけが生き残ったんだ」


「・・・」


俺は何も言わず、シガラの話を聞いた。


「家は燃やされて、気付いたときには絶望しかなかった。

そんな時に、ギラールさんに出会ったんだ」


「ギラールさん?」


「ここに来たときに受付のカウンターにいたお爺さんを覚えてるかい?

あの人がギラールさん、この宿の店主で両親を無くした僕と妹を拾ってくれた人なんだ」


「そうだったのか、じゃあこの宿で働いているのも・・・」


「ギラールさんに勧められたんだ。

拾われてから数年して、宿を経営するからそこで働いてみるか?って。

もちろん二つ返事で了承したよ、ギラールさんへの恩返しができるからね」


「なるほどな、でもそれならどうして魔法学校へ入学したいんだ?

ここで働いてれば恩返ししつつ、安定して暮らせるだろうし魔法学校に通う必要はないんじゃないか?」


俺が尋ねると、シガラは苦笑いをしながら答えた。


「そうなんだけどさ、それじゃあダメだと思うんだ」


「どういうことだ?」


「僕と妹は拾われてから今までギラールさんの家でギラールさんの奥さんと4人で暮らしてきたんだ。

拾われてから家庭を用意してくれて、良い職場を用意してくれて、養ってもらってきた。

その事にはもちろん感謝しているし、自分の子どもように育ててきてもらったことはとても嬉しいんだ」


シガラは「でも」と言って、真剣な顔をした。


「まだ、僕の力じゃ何も恩返しできてないんだ。

魔法学校に入学して魔法を覚えてたくさんの魔法が使えるようになれば色々なことができる。

自分でお金を稼ぐことだってできるんだ。

・・・僕は見せたいんだ、ちゃんと成長した僕の姿を」


シガラはそう言うと、また苦笑いをした。


「だから、何が何でも魔法学校へ入学したかったんだけどこの調子じゃ先伸ばししなきゃいけなさそうだね。

成人するまでには入学したいんだけどなぁ」


・・・余計な事言った俺にも責任はあるよな。


「・・・シガラ、何か1つだけ魔法見せてもらってもいいか?」


「ん?いいけど、ここじゃ撃てないから作るだけになるけどそれでも良いかい?」


「あぁ、それで大丈夫」


俺が言うと、シガラは立ち上がって右手の手のひらを俺に向けた。


「我が身の力を如何なる物をも切り裂く風へと変える」


シガラが呪文を唱え始めると、手の平の前に風の球ができ始めた。


少しすると、その風の球はサッカーボールよりも一回り小さいくらいの大きさになった。


「一応、風弾ウィンドボールをやってみたけどどうかな?」


そう尋ねてくるシガラに、俺は真剣な顔をした。


「それ、大きさは変えれるか?」


「大きさ?

大きくできるのは・・・これくらいかな」


そうシガラが言うと、風弾ウィンドボールは最初よりも二回りほど大きくなった。


「なるほど・・・じゃあ、小さくは?」


俺が訊くと、シガラは首をかしげた。


「小さく、かい?

とりあえず、やってみるね」


シガラの風弾ウィンドボールが少しずつ小さくなっていく。


最初は順調に小さくなっていったが、徐々に小さくなるスピードが遅くなっていき最終的に野球ボールくらいの大きさで収縮が止まった。


「はぁ、はぁ・・・」


シガラの息が少し荒くなっている。


当たり前か、魔法の威力を小さくするのは大きくするのよりも神経を使う。


さっきの様子だと、小さくする練習はしてなかったみたいだし。


少しすると、シガラの風弾ウィンドボールは形を保てなくなり消えてしまった。


それと同時にシガラは地面に両手をついた。


額からは大量の汗をかいている。


「な、何これ、はぁ、はぁ、すごい疲れたよ」


「魔法っていうのは大きくするよりも小さくする方が大変なんだよ。

大抵の人は大きくする方に気がいってるから知らないけどな。

むしろ小さくするほうが大きくするよりも何倍も大変だけど、やったところでメリットは無いし、大きくするよりも魔力を使うから燃費も悪い」


「どうして、それを僕に?」


俺はシガラの前で片膝をついた。


「お前が魔法学校に入学できるようにするためだよ」


「・・・え?」


シガラが顔を上げて俺を見た。


「魔法を小さくするのは神経使うし、魔力のコントロールが上手くないとできない芸当だ。

だけどその分、魔法に詳しい人ほどその難しさを知っている。

魔法学校の先生なら尚更だ」


「つまり、僕に入学試験の時にそれをしろってこと?」


「そういうことだ」


俺は頷いて立ちあがり、シガラに手を差し伸べた。


「試験まであと少しだけど、何もしないで見送るよりマシだろ?

俺も知ってる奴が多い方が何かと気が楽だし」


俺が笑いながら言うと、シガラは釣られたように笑って俺の手を取った。


「ありがとう、とりあえず頑張れる理由ができたよ」


「そういえば、シガラは入学試験の内容を知ってるのか?」


俺は尋ねながらシガラの腕を引いて、シガラを立たせた。


「体力と知力が必要だっていうのは知ってるけど、詳しいことは何も」


「俺が母さんから教えてもらったのは、持久走が必ずでもう1つは魔法をどれくらい扱えるかか筆記試験か選べるって事だったな」


「ガルはどっちを受けるんだい?」


「俺は持久走と魔法をどれくらい扱えるかにする。

個人的な意見だけど、多少無茶しても筆記試験はしたくないし」


「どうしてだい?」


「筆記試験の出題範囲が分からないんだ。

どこからどこまでやれば良いか分からない中、片っ端から覚えていくなんて俺には出来ないしな」


「それは僕も出来そうにないな」


俺の言葉に、シガラが苦笑いしながら返した。


「それなら魔法が使える方で受けた方がまだ希望がありそうだしな。

そういえば、シガラって体力あるほうか?

持久走の距離ってそこそこあるけど」


シガラって見た感じは細身で運動とか苦手そうに見えるんだよな。


「あ、それは大丈夫。

ここの仕事って体力使うのもあるからそういうので鍛えられてるから」


「それなら大丈夫だな、あとは魔法だけか」


「そうだね、ガルのほうこそ魔法はどれくらい使えるの?」


「ん?うーん、そうだなぁ・・・」


俺は尋ねてきたシガラに右手の人差し指を立てて見せた。


そして、その指先に魔力を注入した。


属性は火だ、最近この修業してないからうまくできるかは微妙だな。


「・・・火弾ファイアーボール


俺は指先にライターの火くらいの大きさの火弾ファイアーボールを作った。


「最近やってなかったから少し心配だったけどできて良かった」


「す、すごい」


シガラが驚いた表情をしながら、俺の火弾をじっと見つめている。


「一応俺もこれくらいはできるけど、試験の当日はもっとすごい奴がいるかかもしれないから油断はできないんだよな」


俺は指先の火を消した。


「君、すごいね。

どうやったらそんな事出来るようになるんだい?」


シガラの質問に俺は苦笑いをした。


「多分、責任と負けず嫌いのおかげだろうな」


「責任と、負けず嫌い?」


「また今度話すよ。

それじゃあ、俺はそろそろ部屋に戻るとするか。

魔法の練習は時間がある時は必ずやっておいた方がいいからな。

分からないことがあったら、聞きに来てくれればいつでも教えるよ」


そう言って、俺はシガラに背を向けて自分の部屋へ向かって歩き出した。


「ガル」


名前を呼ばれて、俺は後ろを振り返った。


「何で僕にここまで教えてくれるんだい?

こんな事言えるような力はないけど、僕がやる気なくして試験を受けなかったから少しでもガルファット君の合格する確率は上がるんじゃないのかい?」


「・・・言われてみればそうだな」


「・・・え?」


俺は苦笑いをしながら答えた。


「そんな事考えもしなかったよ」


「・・・そうだよね、僕なんかじゃガルが気にするような実力は持ってないもんね」


「いや、別にお前が魔法学校へ入学してくれるなら俺は嬉しいぞ」


「え?どうして・・・」


「お前も一緒なら、面白い学校生活送れそうだからな」


俺は笑いながら言った。


「俺、年近い男の友達っていないんだよ。

だから、シガラが一緒に入学してくれたら楽しくなりそうだなぁと思ってさ。

それに・・・」


俺はまた前を向いて歩き出した。


「恩返しは出来るうちにしといた方がいいからな。

いつできなくなるか分からないから」


そう言って、俺は部屋に戻った。

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