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第21話 能力ともみくちゃ

「それで、何でお前がここにいるんだ?」


俺の質問に、紅は笑顔で答えた。


「言ったじゃないですか。

一応、神様だって」


「そういえばそうだったな。

という事は、お前が俺の能力を教えてくれるのか?」


「そういうことです。

なかなか良い能力を授かったみたいですね」


紅の言葉に、俺は首をかしげた。


「俺の能力って、お前が決めたんじゃないのか?」


「私の仕事は、あなたのプロフィールをまとめて上司に提出する所までですから。

そのプロフィールを見て上の神様達で審議して、それが通ってようやく転生の準備が始まります。

ちなみに容姿や能力、その他諸々は一番上の神様が決めました」


「神様って、そんな会社みたいな感じで働いているのか」


「私は一番下っ端なので、こうして色んな場所に行って仕事する肉体労働やっていますが、中にはクレーム処理とか死んだ人たちのデータをまとめて書類整理したりとかしている神様もいますよ」


「どこのサラリーマンだよ。

そして、神様のクレーム処理って・・・」


俺が言うと、紅が笑いながら言った。


「お供え物したのに雨が少ないですとか、女の子が欲しいのに男の子しか生まれません、何とかなりませんか?とか、大好きな彼氏が私の嫌いな子と浮気してました。神様は私とあの子どっちの味方なの!?とか。

いつも大変だって、先輩の神様が愚痴こぼしてました」


「最後のは、明らかに神様がとばっちり受けてるな」


「私も初めて聞いたときは、思わず笑っちゃいました」


紅につられて、俺も笑った。


「さて、それではそろそろ本題に入りましょうか」


紅は、笑顔のままそう言った。


「ところでガルファットさん、好きな動物はいますか?」


紅からの急な質問に、俺は少し戸惑った。


「好きな動物?

ちょっと待ってくれ」


紅にそう言って、俺は少し考えた。


好きな動物、か。


前世だと、猫とか好きだったな。


可愛いし、気まぐれだけどデレてる時はこっちがにやけるんだよなぁ。


「猫、かな」


「猫ですね。

じゃあ、目を閉じて猫を想像してみてください」


俺は紅に言われたとおり、目を閉じて猫の姿を思い浮かべた。


全身のキレイに整った体毛、頭から生えているピンと立った耳、丸く可愛らしい目、逆三角形の小さい鼻、その周りで左右に生えている髭、いわゆる猫口と言われる独特の形の口、その中から生えている鋭い歯、長くスマートな足、その足の裏のプニプニした柔らかい肉球、鋭く獲物を捕食する爪、お尻から生えたくねくね動く少し長い尻尾。


こんなものかな?


他にも色々あったような気がするけど、忘れちまったな。


「紅、とりあえず猫を想像してみたぞ?」


俺が目を閉じたまま言うと、紅が言った。


「では、それになりたいと強く願ってみてください」


「この想像している猫にか?」


俺が聞くと、紅は優しく言った。


「はい。

騙されたと思ってやってみてください。

きっと、あなたの力になりますから」


「・・・分かった」


俺は、この頭の中のイメージしている猫に強くなりたいと願った。


・・・何だ?


何かが体を包んでいる感覚だ。


暖かく、心地良い。


ただ頭が、耳が、お尻が、体の色々な場所が少しムズムズする。


少しして、体を包んでいた何かが徐々に無くなってきた。


そして、体を包んでいた感覚が完璧になくなったときに紅から話しかけられた。


「ガルファットさん、目を開けてみてください」


紅に言われて、俺はゆっくりと目を開いた。


俺は、自分の体を見た。


見た限りの場所には、特に変化はないように思えた。


「紅、俺なんか変わった所あるか?」


俺が聞くと、紅は面白い物を見る目で笑いながらどこに持っていたのか手鏡を渡してきた。


俺はそれを受け取り、自分の顔を見た。


特に変わった所なんて・・・


「ふぁっ!?」


ありました。


思いっきり、分かりやすくありました。


両耳が、頬の後ろではなく頭の上に。


しかも、髪の毛と同じ色をした三角形の猫耳が。


ん?そういえばお尻にも何か違和感が・・・。


「なぁ、紅」


「ん?どうしました?」


俺は、紅に静かに言った。


「俺が良いって言うまで、後ろを向いててもらえるか?」


「はい、分かりました」


紅が何かを察したように言って、俺に背を向けた。


俺は、紅が背を向けたのを確認してズボンを下ろした。


そして、パンツも後ろだけちょっと下げた。


俺は、手鏡で自分のお尻を映した。


お尻と腰の間あたりに、少し長めのくねくねした尻尾がある。


・・・あ、お尻にちょっと力入れるとくねくねする。


それはそうと・・・。


俺は、鏡で自分の顔を見た。


前の世界じゃ、見た目は平凡だったけど今の体の顔は4歳児といえどわかる。


自分で言うのもなんだが、これは結構イケメンな顔だ。


幼くも、しゅっとした顔をしている。


髪は、キレイな茶色。


目は、両方とも黒色だ。


考えてみれば、ジークとシルビアが美男美女夫婦だからなぁ。


その息子がイケメンでも、不思議はないよな。


俺がこんな風に客観的に自分の見た目を評価できるのは、前の記憶があるからなのかな。


普通に言ってたら、ナルシストで少し気持ち悪いもんな。


「ガルファットさん、そろそろそっちを見てもいいですか?」


紅に言われ、後ろを向かせたままのを思い出した。


「あぁ、悪い。

こっちを向いて大丈夫だよ」


俺に言われた紅が、ゆっくりとこちらに向いた。


「ガルファットさん。

私が後ろを向いている間に、何と大胆な・・・」


紅が顔を両手で覆って、指の間からこちらを見ている。


そういえば、下がパンツ姿なのを忘れていた。


「いや、4歳児相手に何やってるんだ」


「一度やってみたかったんですよね」


紅が顔を覆うのをやめて、楽しそうに言った。


「それとガルファットさん、私のお願い聞いてもらってもいいですか?」


「ん?別にいいけどどうしたんだ?」


「私に近づいてもらっていいですか?」


「ん?あぁ、分かった」


俺は頷いて、紅に近づいた。


紅にぶつかるまで後一歩くらいまで近づいた時だった。


いきなり紅が俺を抱き締めてきた。


「んー、可愛いです」


紅の胸に思いっきり顔を押し付けられている。


く、苦しい。


俺は手足をばたつかせた。


だが、紅は抱き締めたまま離さない。


「く、紅。ギブアップだ」


俺は、紅の腕をタップしながら言った。


「・・・あっ!すみません!」


そう言って、紅は俺を解放してくれた。


「可愛かったものでつい・・・」


紅が苦笑いしながら言った。


「いや、まぁいいんだけどさ」


別にいいんだが、さすがに窒息するかと思った。


「あの、それはそうとガルファットさん」


「ん?どうした?」


「丸出しですけど、よろしいんですか?」


「・・・ん?」


紅が俺の股間あたりを指差して言った。


俺は、顔を下に向けた。


・・・さっきじたばたしたせいで、パンツが思いっきり下がってしまっていた。


それを見た瞬間、出したこともないような高い声が出た。


「きゃー!」


俺は悲鳴のような声を出しながら、パンツとズボンを上げて膝を抱えて座り、紅に背を向けた。


「パンツは見られても動揺しないのに、そっちは思いっきり動揺するんですね」


「うぅ、もうお婿に行けない」


もろ見られてしまったよぉ。見られちまったんだよぉ。


「大丈夫ですよ、もしお婿さんの貰い手がなかったら私がもらってあげますから」


そう言って、紅が後ろから包み込むように俺を抱きしめた。


「いや、それって、どうなんだ?」


「いや、ですか?」


紅が、耳元で囁いてくる。


「嫌ではないけど、それ、死んでないか?」


「・・・細かい事は、気にしないでください」


「細かくない細かくない」


そのまま続けた紅に、即座に突っ込んだ。


「まぁ、私が貰わなくてもロミアちゃんなら喜んでもらってくれると思いますよ?」


いや、たしかにあいつならもらってくれそうだが。


「て、何でお前がロミアの事知ってるんだ?」


俺が振り向いて聞くと、紅は俺から少し離れた。


「一応あなたを転生者に決めたのは私ですからね。

転生した後、ちょくちょく様子を見てたんですよ」


なるほど、そういうことか。


「ふふっ、いけないですね。

ガルファットさんとだと楽しくて、ついつい本題から離れてしまいます」


そう言って、紅は真剣な顔になった。


「ガルファットさんの能力について詳しくお話しします」


紅の言葉を聞いて、俺は立ちあがり紅のほうを向いた。


「見たとおり、今ガルファットさんの体は猫の能力の一部で自分の体を強化している状態です」


「と言っても、見た感じじゃ尻尾と耳しかないぞ?」


「ガルファットさん、ちょっとこちらへ来てみて下さい」


俺は紅に言われ、歩いて近づいた。


「私に背を向けて下さい」


「こうか?」


俺は、紅に背を向けた。


「よいしょっと」


紅が、俺のズボンを一気に降ろした。


「ちょっ!?急に何を!?」


「大丈夫です」


紅の顔を見ると、たしかに笑っていたがさっきまでのふざけたものではなく、真剣に何かに取り組むときの顔だった。


俺は、何も言わず前を向いた。


「ちょっと失礼しますね」


「もう色々失礼しちゃってるから、いまさら気にしないよ」


そんなことを言いながら待っていると、紅が「終わりました」と言った。


「一体何したんだ?」


「ちょっと尻尾を出すために、パンツに穴を開けさせていただきました」


「・・・家帰ったら、フィーネさんに謝っとかなきゃ」


確かに、さっきよりも尻尾が自由に動いている感じがする


「それではガルファットさん、思いっきりジャンプしてもらっていいですか?」


俺は頷いて、下がパンツ姿のまま体を丸めた。


そして、足に思いっきり力を入れてジャンプした。


「はぁぁぁぁ!?」


いつもなら、すぐに止まって落ちるはずなのに。


今回は、めちゃくちゃ高くまで飛んでいっている。


紅がちっちゃく見える。


ていうか、これ天井の高さどんだけあるんだよ!?


・・・ていうかこれ、俺死ぬ高さだよな⁉️


俺がそう思った瞬間、上への加速が終わり下への落下に変わっていった。


「ぎゃぁぁぁぁ!!!」


「ガルファットさん!

ちゃんと態勢整えないと、死んじゃいますよ!」


いや、そんなこと言われても!


「くそ!こうなったらやけくそだ!」


俺は、両手を下に伸ばして頭を斜め下にして猫が飛び降りる態勢を真似した。


そして、俺の両手が地面に触れた瞬間。


俺は、両腕を曲げてそのまま前転した。


転がった先には壁があり、激突するのが簡単に分かった。


ただ勢いがありすぎて止められそうにない。


俺はもう、後先考えずに壁を両足で蹴った。


・・・さっきの何倍ものスピードで地面を低空飛行した。


「ぎゃぁぁぁぁ」


「ガルファットさん!?」


くそっ!いいやもう!どうせやけくそだ!


俺は両手の指で床にしがみつこうとした。


床は木でできてるから、最悪指の皮なくなるくらいで済む!


ギィィィィィ!!!


すると、床から予想もしない音が聞こえて俺は止まった。


自分の指を見ると、普段とは明らかに違う鋭い爪が生えていた。


「何か、色々もう、何だこれ」


俺は、思考が追いつかなかった。


「大丈夫でしたか?」


立ち上がって自分の指を見ている俺に、紅が話しかけてきた。


「死ぬかと思った。

でも、たしかにすごいな。

猫って、何て脚力してるんだよ」


「私も、まさかあそこまで跳ぶとは思いませんでした」


二人で苦笑いしながら言った。


「しっかし、猫になれる能力か。

なかなか使いどころは、限られそうだな」


俺が言うと、紅が苦笑いしながら言った。


「いえ、実はそんな限られた能力じゃないんですよ」


「ん?どういうことだ?」


「別に、猫じゃなくてもガルファットさんがある程度の知識を持っていて、姿を想像できる生き物なら何でも良いですよ。

たとえ、想像上の生き物でも」


・・・は?


「ドラゴンでもいいのか?」


「はい」


「ペガサスでもいいのか?」


「はい」


「ツチノコでもいいのか?」


「別に条件満たしてればなれますけど、逆になりたいですか?」


「・・・いや、何かいいや」


でも、そうか。


条件を満たせば何でも、か。


「それって、かなり強すぎないか?

魔力の件もそうだけど、俺生まれ持ったものがなかなか反則な気がするんだが」


「魔力の急速回復ですか?

あれは、前例があるのでそこまでじゃないですよ。

それに、その能力もメリットがかなり強い分デメリットも強いですよ?」


そういえば、デメリットもあるんだっけな。


「この能力のデメリットって、何なんだ?」


俺が聞くと、紅が笑いながら話した。


「その前に、この能力の内容を説明しますね」


「うん、分かった」


紅の言葉に、俺はうなずいた。


「ガルファットさんの能力の名前は、想像強化イメージストレニング

想像した生き物の能力で肉体を強化できるのがメリットです。

私も詳しくは分かりませんが、基準以上の知識と見た目を想像できれば能力は使えます。

ちなみに、土とか水とかにはなれないのでそこは頭にいれおいてください。

あくまで、想像上でも実在しても生き物限定です。

また、能力を維持できる時間は想像した生き物によって異なります。

これが、メリット側の能力です」


「了解。

少し待ってくれ」


俺は、紅に言って説明を中断してもらった。


少し頭の中を整理する時間が欲しかった。


簡単にまとめると、メリットの発動には規定以上の知識が必要で見た目を知っている必要がある。


生き物以外は無理だけど、生き物だったら想像上の奴でもOK。


で、想像した生き物によって維持できる時間が変わってくる、と。


「ありがとう、説明再開して大丈夫」


俺が言うと、紅が頷いた。


「分かりました。

では、デメリット側の説明に移りますね」


俺は、紅の言葉に頷いた。


「まず、能力は5分間は最低でも維持しなければなりません。

途中で変えることはできません。

ただ、5分以上経過したら維持できる時間内ならいつでも解除できます。

ということで、ガルファットさん能力を解除してみてください」


「・・・どうすればいいんだ?」


「簡単です。

目を閉じて、能力解除と頭の中で言ってみてください」


俺は言われた通り、目を閉じて能力解除と言った。


すると、体から少し力が抜ける感じがした。


そして、少しして目を開けた。


お尻と頭を触ってみると、耳と尻尾が無くなっていた。


「もう少しすると、デメリットが来ます」


紅が笑顔で言った。


「分かった、じゃあ少し待つか・・・」


ん?何か体が


「・・・痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」


俺はあまりの痛さに耐えられず、その場にぶっ倒れた。


「ガルファットさん!?」


紅が驚いた表情で俺を見ている。


何だこれ!?


全身が痛いんだけど、明らかに痛すぎる。


あまりの痛みに、涙が出てきた。


「・・・これは、全身筋肉痛ですね。

なるほど、想像した生き物によって痛みと持続時間が変わるみたいですね。

なかなか辛いデメリットです」


「・・・冷静に観察してないで。

助けて・・・」


俺が涙目で訴えるも、紅は気にせず俺の体を観察している。


「・・・鬼・・・悪魔」


「まぁまぁ、後10分くらいですから」


し、死にそう・・・。








そんな感じで10分ほど経過した。


「し、死ぬかと思った」


やっと痛みの消えた俺は、静かに立ち上がった。


「一応これでだいたいの説明は終わりましたけど、何か質問はありますか?」


「何で、俺が痛みで動けない時にズボンを上げてくれたか理由を聞いてもいいか?」


俺が聞くと、紅が顔を赤くして恥ずかしそうに答えた。


「その、男の人がパンツ姿で悶絶しているのは見てられなくて」


「うん、俺的にはその後の俺の姿を見ないで欲しかった」


おかげで、痛みで体が大変なことになってたよ。


「まぁ、とりあえず能力の事が分かったから良しとするか。

ありがとな、後は自分で色々試すよ」


「分かりました。

また、気軽に遊びにでも来てくださいね。

ガルファットさんなら、いつでもお待ちしてますから」


「別にいいけど、仕事サボるなよ?」


「はい、分かってます」


俺は、笑顔で手を振る紅に背を向けて建物のドアを開けて外へ出た。







「・・・おぉ、どうだった?」


外に出ると、ジークが腕立て伏せしていた。


「何か、色々大変だったけど良い能力でした」


俺がそう言うと、ジークが立ち上がった。


「そうか。

よし、じゃあ帰るか。

何か、待ってるだけっていうのも意外と疲れたしな」


「はい」


そう言って、もと来た道を歩き始めたジークの後に俺は着いていった。


ちなみに、家に帰った後パンツのお尻の破れている部分の説明をしたら、女性陣4人(シルビア、フィーネ、クレア、ロミア)に頼まれ渋々もう一回猫になりました。


・・・案の定、もみくちゃにされました。


ちなみに、一番もみくちゃにしていたロミアに理由を聞いたら「知らない人に取られそうな気がした」と言ってました。


・・・どんどん第六感が鍛えられているのを感じた今日この頃でした。

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