第20話 再登場するなら事前に言ってください!
クレアとの混浴から数日が経った。
今日は、1日授業のない日だ。
前まではジークがいない日は魔法の授業だけだったが、クレアが来てからはそこに武術の授業と一般知識の授業が入ったので1日休みの日っていうのがほぼなかった。
そんなわけで、それを察したシルビアとクレアが「今日くらい休みなさい(休みなよ)」と言ってきて今日は休みになった。
まぁ、前世だったら疲労で動けなかっただろうけど、この体はそんなのものともしていないくらい丈夫だから大丈夫なんだけどね。
つくづく、紅に丈夫にしてくれって言っといて良かったと思う。
で、そんな休みの日の朝から何をしているかというと・・・
「じゃあロミアちゃん、今のをやってみて」
「はい!」
家の庭で、ロミアとシルビアの魔法の授業を見学していた。
ちなみに、隣にはクレアも一緒だ。
「今さらだけど、ロミアちゃんも無詠唱で魔法使えるんだよねぇ。
すごいよ、本当に」
クレアが感心したように言った。
俺自身が使えるし、ロミアも使えるから当たり前みたいになっているけど、無詠唱で魔法を使えるのは実際すごい事だしな。
クレアがそう言うのも納得できる。
・・・あ、そういえば
「師匠、唐突だとは思うんですけど1つ聞きたいことがあります」
俺がクレアの方を見ると、クレアも俺の方を見た。
「ん?何?」
「神選者って、どうやったらなれるんですか?」
俺の質問に、クレアは真剣な顔をしてロミア達の方を見た。
「神選者は、なりたいからなれるってものじゃないんだ。
あれは、どんな薄くてもいいから自分の血筋にアビリルの血が入ってなきゃいけないんだ」
「アビリル・・・この国の初代国王で国の名前の由来になった人ですね」
「そう、理由は分からないけどアビリルの血筋が入っている人はみんな例外なく神選者なんだ。
逆に言えば、アビリルの血筋がないとどんなに頑張っても神選者にはなれない」
アビリルの血筋、か。
ジークとシルビアはどうなんだろう?
二人とも、神選者だなんて話し聞いたことないしなぁ。
「そうなんですか。
そういえば、メリットって他にどんなのがあるんですか?」
俺が聞くと、クレアは考え込むように腕を組んで上を向いた。
「うーん、僕もそんなに多く見てきた訳じゃないけど色々あったよ。
ただ、みんなここぞという時までは使わないし、使ってもすぐに解除しちゃうから詳しくは分からないんだ」
「何で、すぐに解くんですか?」
「メリットとデメリットを他人に知られるのは、神選者からすれば自分の弱点を教えているようなものだからね。
あまり長く使うのも、できれば避けたいんだよ」
「なるほど、そういうことですか」
言われてみれば、能力の内容が分かれば対策をたてられる可能性もあるだろうしな。
そりゃ、むやみやたらには使えないな。
「そういえば、話は変わるんだけどさ」
クレアが思い出したように言ってきた。
「ん?どうしました?」
「フィーネさんって、読書好き?」
「好きですよ。
今は、恋愛物ばっかりだけど昔は色んなジャンルの本読んでたって言ってたし」
「そっかそっか、じゃあそっち方面のほうがいっか」
「急にどうしたんです?」
俺が聞くと、クレアは苦笑いしながら答えた。
「いやぁ、何か僕フィーネさんに距離を置かれている気がしたから何か共通の話題とかあればいいなぁと思ったんだよね」
そういえばフィーネさん、人見知りするんだつけ。
師匠が来てから少し経つし、俺からすれば全然そんな感じはしないけど、まぁ本人達にしか分からないこともあるしなぁ。
「ところで師匠って、読書するんですか?」
「うん、するよ。
冒険物を読むのが多いけど、恋愛物も読むよ」
へぇ、クレアが恋愛物をねぇ。
「何か、師匠が恋愛物好きだなんて意外ですね」
俺が言うと、クレアは少し拗ねたように言った。
「僕だって、一応女の子だから恋愛物くらい読むよ。誰かに守ってもらいたいなぁって、思うときもあるよ?」
この人の場合、守られるよりも守る側の気がするんだが。
「でも師匠、それって最低でも師匠より強い人じゃなきゃダメって事ですよね?」
「そうなんだよね・・・ははっ」
「師匠、今の発言は謝るんでそんな複雑で悲しそうな顔をしないでください」
クレアがひきつった笑顔で、明後日の方向を見ていた。
この人より強い人ってだけで、なかなかハードルが高くなるだろうからなぁ。
「まぁ、本当はガルファット君も候補に入れたんだけどねぇ。
ロミアちゃんには勝てる気がしないよ」
クレアは、笑いながら俺の方を見て言った。
「勝手に弟子をそんな候補に入れないでください。
というか師匠、そういう話しを大きな声で言わないでください。
ロミアがこっち見てますよ」
俺に言われてクレアが前を見ると、さきほどシルビアに教わった火と土の混合魔法、隕石雨で、かなりの大きさの隕石を連発しながらロミアがこちらを見ていた。
多分あれは、聞こえてはいないだろうけど本能が感じ取ったな。
ちなみに、ロミアの隕石はシルビアが笑顔で水弾を見たことのない大きさにして撃ちながら、消火&破壊していた。
・・・俺があの二人に勝てる日は来るのだろうか。
「・・・ロミアちゃんも守ってもらわなくても大丈夫そうだね」
「・・・そうですね」
そこで、俺とクレアの会話は終わった。
お昼時、今日はジークは明け番だからもうそろそろで帰ってくる頃だろう。
帰ってきたら、神選者について聞いてみるか。
ちなみに、シルビアに聞いたら違うと言っていた。
ジークのことも聞いたみたが、知らないって言ってたしなぁ。
仮に片方が神選者だったら、相手が夫婦でも教えないのかなぁ。
そういえば、この頃フィーネと一緒に読書あまりできてないなぁ。
クレアの件もあるし、今度3人でしないか聞いてみようかな。
あの2人なら、すぐに仲良くなれる気はするんだどなぁ。
・・・何か、1日休みっていっても色々考えたりしてゆっくりはできないものだな。
「ガルファット様、どうかしたのですか?」
リビングで考え事をしていたら、家事途中のフィーネに話しかけられた。
「ちょっと考え事してて。
フィーネさんこそ、こんな時間まで家事やってるなんて珍しいですね」
いつもだったら、この時間は家事もほとんど終わってて、昼過ぎから何の本読もうか楽しそうに考えているのに。
「それが、昨日読んでた本が面白くてついつい夜更かししてしまって。
寝不足のせいで、どうもテキパキできないんですよね」
フィーネが苦笑いしながら言った。
「なるほど、無理しないでくださいね。
倒れたら、元も子もないですよ」
俺が言うと、フィーネは笑顔で返した。
「ありがとうございます」
俺も、そんなフィーネを見て笑った。
「ただいまー」
玄関から、ジークの声が聞こえた。
「お、父さん帰ってきた。
じゃあフィーネさん、また今度一緒に読書しましょう」
「はい!分かりました」
そう言って俺は、ジークのもとに向かった。
「父さん、おかえりなさい」
俺は、部屋に入り着替えているジークに言った。
「おう、ただいま」
ジークは俺の方をチラッと見て、少し笑って言った。
「父さん、1つ聞きたいことがあるんですけど」
「ん?どうした?」
ジークは、ズボンを履き替えている途中だ。
「父さんって、神選者ですか?」
「ひゃっ!?」
ジークはどこから出たのか分からない声で反応して、もう片方の足をズボンから出すのに失敗して滑ってそのまま床にデコをぶつけた。
お尻を突き出した状態で。
父親のこんな姿、見たくなかったよ・・・。
「・・・ガル、悪いがちょっとだけ部屋から出てもらえるか?」
「・・・分かりました」
そのままの姿で悲しげに言うジークに返事をして、俺は部屋を出た。
そして、数分後。
「ガル、入っていいぞ」
「はい」
ジークに言われ、俺は部屋のドアを開けた。
「おう。
で、さっきの話の続きだけど」
ジークが椅子に座っており、何事もなく話始めた。
つっこんだほうが良いのかなぁと思わなくもないが、俺はスルーした。
「結論から言えば、俺は神選者だ。
まぁ、俺の能力が何かはほとんどの奴が知らないけどな」
「ということは、僕も神選者なんですか?」
俺が言うと、ジークは頷いた。
「あぁ、ただ神選者の条件を満たしてるだけじゃ能力は使えないぞ」
「じゃあ、どうすれば使えるようになるんですか?」
「今日、1日休みもらってるんだろ?
シルビアから聞いたよ、明日朝飯食ったらちょっと出かけるぞ。
運が良ければ能力を使えるようにしてやるよ」
「分かりました。
じゃあ、明日楽しみにしていますね」
そう言って、俺はジークの部屋を後にした。
「あ、ガルファット様!」
廊下に出ると、フィーネが声をかけてきた。
「ん?どうしたんですか?」
「ガルファット様、シルビア様から聞いたのですが今日は授業はお休みですよね?」
フィーネが嬉しそうに聞いてきた。
「はい、今日1日は休みです」
「このあと、一緒に読書、してもらませんか?」
「いいですけど、家事の方はいいんですか?」
俺が聞くと、フィーネは顔を少し赤くして笑顔で恥ずかしそうに言った。
「シルビア様にガルファット様が休みって聞いて、張り切って頑張っちゃいました」
そういえば、ジークが今日はロミアの家で昼飯食って帰って来るって言ってたから、ジークの分の昼飯は作らなくて良かったんだっけな。
そのせいか、いつもはお昼過ぎもうちにいるロミアが今日は早めに帰ってたしな。
・・・それにしても、前から思うけどこの人だったら彼氏の1人や2人簡単にできるんだろうなぁ。
何しろ、この言葉が本心っていうんだから本当に可愛い人だよな。
「ん?どうしました?」
俺がそんなことを考えていると、フィーネが不思議そうに聞いてきた。
「いえ、相変わらずフィーネさん可愛いなぁと思って」
「あ、ありがとうございます・・・。
でも今の、ロミアちゃんが聞いたら妬いちゃいますよ?」
俺が言うと、フィーネは顔を赤くして嬉しそうに笑った。
「・・・今度ロミアに可愛いよって言ってあげなきゃ」
「それが良いと思いますよ」
フィーネは、笑いながら言った。
「では、後で部屋でお待ちしておりますね」
そう言って、フィーネは一礼をして俺に背を向けて歩いていった。
そのあと、フィーネの部屋に行って一緒に読書をしたがフィーネが終始笑顔だった。
よほど面白い本だったのかな。
ついでに、今度はクレアも入れて3人でしましょうって言っておいた。
ちょっと戸惑っていたけど、多分大丈夫だろう。
そんなこんなで、その日も平穏無事に終わった。
次の日、朝飯を食べたあと俺とジークは一緒に歩いてとある場所に向かっていた。
「ところで父さん、どこへ向かっているんですか?」
俺は前を歩くジークに問いかけた。
「もう少しで着くから、まぁ楽しみにしとけって」
ジークは顔だけこちらに向けて、笑って言った。
今歩いている場所は、いつも俺がランニングとかで使用している道とは違う。
森の中にある一本道だ。
少しすると、道がY路に二手に別れた。
ジークは無言で左の道へと進んだ。
俺も、なにも言わずに後をついていった。
「今の道、右に進むと俺の職場があるんだよ」
ジークが、ぽつりと言った。
「そうなんですか」
そういえば、ジークの職場って行ったことないなぁ。
今度機会があったら、行ってみるか。
「で、左に進むとこれがある」
そうジークが言った先には、少しひらけた場所が見えた。
そして、そのど真ん中には木でできた一軒家があった。
外壁が真っ白で、周りが緑と茶色の木で囲まれている森だとものすごく目立つ。
「これは・・・?」
「これは、神様を祭っている場所だ。
神選者は、この建物の中に入って神様から自分の能力を教えてもらうんだ。
ちなみに、この建物はアビリルだったら各地にあるからみんなそれぞれ近くの建物に行ってるよ」
俺の呟くような疑問に、ジークが説明した。
「なるほど。
で、僕が今からあの中に入るんですね」
俺が言うと、ジークが頷いた。
「そういうことだ。
ほら、行ってこい」
ジークに背中を押され、俺は建物の前に行った。
大きい扉が目の前にある。
俺は、扉のノブを掴んで回した。
・・・中は、キレイだった。
左右の壁に等間隔に配置された複数の窓。
高い天井が空間を広く思わせ、高い場所に設置された窓から降り注ぐ光が幻想的だった。
俺は、後ろの扉を閉じて前へ数歩歩いた。
立ち止まると部屋の奥、光が届いていない奥の闇の中からこちらに歩いてくる足音が聞こえた。
音から察するに、裸足だ。
だんだん姿がはっきりしてきた。
・・・俺はその姿を見たことがあった。
懐かしさを感じさせる、赤い着物。
長く綺麗な黒髪。
整った、とても美しく小さな顔。
俺から見て左が茶色、右が黄緑のオッドアイ。
「お久しぶりですね、英行さん。
いや、今はガルファットさんとお呼びしたほうがよろしいですかね」
そして、聞き覚えのある声だった。
「な、なんでお前がここにいるんだよ!?」
俺の思考は、状況を把握できていなかった。
ただ、目の前の女性の名前は分かった。
「紅!」
紅は、俺を見て嬉しそうに笑った。




