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第22話 乱射と姉弟

全身筋肉痛の中、皆にもみくちゃにされた日から2ヶ月以上が経過した。


魔法、剣術、武術に加えて能力の練習もするようになったから、いくら時間があっても足りない。


つい最近じゃ、想像した生き物の種類が強すぎたらしく2、3日筋肉痛で寝たきりになったしなぁ。


・・・あの時は本当に死ぬかと思った。


呼吸したら、筋肉痛で肺が痛くなるなんて経験したことなかったぞ。


ちなみに、俺のデメリットの全身筋肉痛は治癒魔法じゃ治せなかった。


筋肉痛で死にかけた時に、シルビアとロミアが治癒魔法をかけてくれたらしい。


ただ、いくらかけても治らなかったらしく、その都度ロミアが涙目で俺の心配をしてくれてたらしい。


俺は途中で気を失ったから分からなかったけど、今度会ったときにお礼言っとかなきゃ。


それで、今は何をしているかというと・・・




「それでガルファット君、何をするの?」


今日の午後は休みだったけど、試したいことがあってクレアに庭に来てもらった。


「ちょっとやってみたいことがあるんです。

実験台になってもらえますか?」


俺が言うと、クレアは笑顔で頷いた。


「いいよ。

それで、僕は何をすればいいの?」


「師匠は、僕が攻撃をしたら構わず避けて下さい。

なんだったら、構わず近づいて攻撃してください」


「うん、分かった」


クレアは笑顔のまま頷いた。


俺はその言葉を聞いて、クレアから距離を取った。


大体10メートルいかないくらいだ。


「じゃあ師匠!いきます!」


俺はクレアに言って、武術の時のファイティングスタイルをとった。


ただ、今回のスタイルはインファイトのスタイルとは違う。


左手を少しだけ下げて、左ジャブを出しやすい構えをとった。


しいて言うなら、アウトボクサースタイルに近いスタイルだ。


俺が構えるのを見て、クレアも構えた。


クレアのは、カウンター型の典型的なアウトボクサースタイルだ。


「いいの?そんなに離れて?」


クレアが構えたまま訪ねてきた。


「はい!」


俺はクレアに返事をして、ゆっくり深呼吸した。








ガルファット君に頼まれて来てみたけど・・・


まさかいきなり距離を取るなんて。


武術は近距離専用だから、あそこまで距離をとったら近づくのが大変だけど。


ガルファット君の事だから、何か作戦があるんだろうけど。


・・・ん?何だろう?


ガルファット君の左拳の周りが、青くなってる。


それに僕が気づいた時だった。


ガルファット君の左拳が前に突き出た。


そんな所からじゃパンチは当たらないよ!


水鉄砲ウォーターガン!」


ガルファット君が叫んだ瞬間、彼の左拳から水の塊が発射された。


大きさは直径10センチくらいだ。


見た感じは水弾ウォーターボールだけど、明らかにスピードが違う!


水弾ウォーターボールの数倍は速い水の塊が、僕に迫ってきている。


確かにびっくりだけど、単発じゃ簡単に避けられるよ。


僕は、左へのサイドステップで水鉄砲ウォーターガンを避けた。


後ろを見ると、避けた水鉄砲ウォーターガンが見えない所まで飛んでいった。


確かにすごい魔法だ。


魔法の使えない僕には、一生できない事だよ。


でも、何でわざわざガルファット君はジャブからのあの魔法を使ったんだろう?


確かにびっくりはしたけど、単発じゃあれだけ距離があったら意味がないのに。


まぁ、それも含めて聞いてみるか。


そう思い僕が振り返ろうとした時、ある感覚が僕を襲った。


この状況、この感覚、最初の手合わせの時に似ている。


ていうことは、もうガルファット君が次の攻撃をしている!?


僕の頭が振り返れと体に命令を出す前に、本能で体が後ろを向いた。


目の前には、今まさに僕の顔面に突っ込んできている水の塊がある。


避ける!?いや、間に合わない!


僕はその場で体をできるだけ後ろに仰け反らせた。


硬質化ハーデント!」


僕は体全体の皮膚を硬くして、水の塊に向かって思いっきり頭突きをした。


割れた水の塊が僕の首から上を濡らした。








まぁ、作戦成功みたいだな。


師匠の濡れた顔を見て、俺はそう思った。


いや、さっきのは魔法の名前を言わなかった不意打ちだ。


むしろ、頭突きで返されている時点でマイナスだな。


魔法の名前は、最後の撃つ魔法を確定させるために言うものだ。


ただ、絶対言わなきゃいけないってものじゃない。


練習すれば俺でさえ、初級魔法なら名前を言わなくても使えるようになったんだ。


もっとすごい人なら、混合魔法でもできるだろう。


俺だって、今まで魔法の授業で怠けていたわけじゃない。


シルビアに相手の撃つ魔法の属性を見分けるヒントをもらってから、それに関してもずっと考えていた。


どうすれば、相手に属性がバレずに魔法を使うことができるか。


・・・色々と考えてみたけど、結局はできなかった。


魔法を撃つ準備をすると、どうしても手のひらの前には魔力の塊ができる。


それを隠そうとしてもこっちが不利になるから、どちらにしろ意味がない。


だから俺は、隠すのをやめた。


その代わりに、相手にバレても極力対応させないようにした。


そのために練習し続けたんだ、この技を。


「師匠!ビショビショにしてすみません!」


「気にしないで!これは僕の不注意だから!」


俺が謝ると、クレアが苦笑いで言った。


前までの師匠なら、油断してもろに顔面に食らっていたはずだ。


多分、途中で最初の手合わせの事を思い出したんだろう。


さすが師匠だ。


でも、そんな師匠にだからこそ試しがいがある。


「あと師匠!申し訳ないついでに1つ頼みを聞いてもらえますか!?」


「ん?何?」


俺の問いかけに、クレアが不思議そうに返した。


「その能力、まだ解かないで下さい!

多分、当たったら痛いと思うので!」


俺の言葉に、クレアは「わかった!」と頷いた。


全身が赤黒くなっているクレアの姿は、まるで鎧を着ているようだ。


あれなら、ちょっとやそっとなら大丈夫だろう。


俺は、左拳へ魔力の注入をした。


注入する属性は水。


俺は、肩口からの最短距離でジャブを放った。


腕が伸びきった瞬間、拳から水の塊がクレアに向かって飛んでいった。


これだけじゃ、さっきと一緒だ。


どうせクレアには避けられてしまう。


だから俺は、腕を畳んでもう一度ジャブを撃つ態勢をとってもう一度拳に魔力を注入した。


そして、さっきと同じようにもう一度水鉄砲ウォーターガンを放った。


クレアの余裕そうな顔を見ると、2つ3つじゃどうせ避けるかパンチで殺されるかのどっちかだな。


だったら、2つ3つじゃ済まないようにすればいい。


俺は、左拳をにぎったまま腕を下げて振り子のように左右にゆっくりと揺らした。


この構えはムチのようなにしなるジャブ、フリッカージャブを放つ事ができる通称ヒットマンスタイルと呼ばれている。


こっちの世界じゃこの構えはないらしいけど、前の世界じゃ有名な構えだ。


・・・本当に、色々な資料を読んでおいてよかったよ。


俺は、左拳に魔力を注入した。


そして、魔法が撃てる状態になり次第相手に放つ。


俺の腕がムチのようにしなり、クレアに向かって拳を放つ。


それと同時に、水の塊がクレアに向かって放たれる。


1つ?2つ?3つ?


・・・いや、50だ。


俺は、全力でフリッカージャブを連発させた。


そのすべてに、魔力を注入して魔法を放てるようにした。


クレアに向かって、多数の水の塊が飛んでいく。


いくらクレアでも、すべては避けきれない!


俺の予想通りだった。


クレアは、最初の2発を避けたその後はパンチで殺している。


・・・あの数を全部殺すんだから、本当にすごい人だ。


だけど、俺もやられっぱなしじゃいらないんだよ。








「ハァ、ハァ」


まさか、あんなに連射してくるとは思わなかったよ。


結局、避けきれなくてほとんどパンチで防いだけど、別にそれは良い。


・・・一番怖いのは、視界が塞がれる事だ。


攻撃をパンチで防いだ後、死角から攻撃されることもあり得ちゃうし。


でも、幸いなことにガルファット君はあそこから動く気配はないし、この量ならまだ防げるし。


僕がそう思った時だった。


水鉄砲ウォーターガンが止んだ。


魔力切れでもおこしたのかな?


「これで終わりでいいのかな?」


僕が聞くと、ガルファット君は両拳を目線の高さに持ってきた。


両手の拳の周りが、青くなっている。


「いえ、ここからが本番です」


ガルファット君の目は、本気の目だ。


・・・まさか、両手?


ガルファット君の両手がものすごい速さで、パンチを繰り出されている。


いや、それだけならまだいいけど。


問題は、そのパンチすべてから水鉄砲ウォーターガンが撃たれてることだ。


「・・・勘弁してよ」


僕は苦笑いしながら、呟くように言った。


多分、全部防ぐのは無理だろうなぁ。


そう思っている間に、すぐそこにまで水の塊が近づいていた。


僕はそれをパンチで割った。


愚直って言われても、これしか思い浮かばないんだよね。


一個ずつ確実に壊していく。


でも、間に合わない。


さっきよりも、手数は倍はあるんだ。


何個かに一個は、防げなくなってきた。


でも、水じゃ硬質化ハーデントを使っていない僕でもそこまで痛くはない。


決め手には、ちょっと欠けている。


そう思った時だった。


殴った瞬間、今までと感触の違う物があった。


「何!?」


それは水よりも明らかに固形で固いものだ。


まさか・・・!?


僕は、殴るのをやめて腕で体をガードした。


何が飛んできたか見分けるためだ。


すると、さっきまで水だけだったのが段々石の塊に変わってきた。


・・・冗談だよね?


そして、その石の雨が終わると次は火の弾が飛んできた。


・・・間違いない。


最後に、その火の雨が終わると次は空気の塊が飛んできた。


僕の予想が当たっちゃった。


どっちかっていえば、ハズレるほうに期待したんだけどなぁ。


・・・まさか、4属性をランダムで使ってくるなんて。


これは確かにやりにくい。


武術は近づかなきゃどうしようもないのに、近づかさせてもらえない。


魔力切れまで待つしかないか。


僕は、ガードを固めてとにかく耐えた。


いつ終わるか分からないものを終わるまで耐えるって、かなり精神的にキツい。


・・・ガルファット君も意地悪だなぁ。


仕方ない、とりあえずはこのまま耐えるしかないか。







結局その後は、クレアがガードを固めたまま耐えて終わった。


あの弾幕の中耐えるって、さすがはクレアだな。


「ガルファット君、さすがに今度は終わりで大丈夫かな?」


クレアに言われて、俺は頷いた。


さすがの俺も、魔力切れになった。


「やっぱりすごいよ、手も足も出なかった」


クレアが近づいてきながら、苦笑いして言った。


「まぁ、まだ精密な事はできてないんですよね。

属性の切り替えも、すぐには出来ないし。

まだまだ、練習が必要です」


「本当に、その発想力には驚かされるよ」


「まだまだ弱いですから、こういう所で工夫しないと勝てませんよ」


俺が苦笑いしながら言うと、クレアの体が元の色に戻った。


「ふぅ、やっと解除できた」


「すみません、なにも言わずめった撃ちにしちゃって」


「いいよいいよ、そうじゃないと実験にならないもんね」


クレアは、笑いながらそう言った後、「でも」と続けた。


「ガルファット君の意地悪・・・ってちょっと思っちゃった」


クレアは、目を逸らして少し顔を 赤くして言った。


いつもと違うクレアの姿に、俺は少し戸惑った。


「・・・嘘だよ。

びっくりした?」


クレアはそう言って、満面の笑みで俺を見た。


俺は、驚きで固まっていた。


「あれ?もしかして怒らせちゃった?」


クレアの顔が少し不安そうになった。


俺は、そんなクレアに笑って言った。


「いえ、素直に可愛いって思っちゃって」


俺の言葉を聞いて、クレアがまた笑顔になった。


「ありがとう。

冗談でも、嬉しいよ」


「いえ、冗談じゃありませんよ。

本心で、可愛いって思いました」


俺が笑顔で言うと、クレアの顔が赤くなった。


「・・・ほんとに、ロミアちゃんが羨ましいよ」


「ん?何か言いました?」


クレアが何かを呟くように言ったが、俺は聞き取れなかった。


「ううん、何でもない。

さっ、家に戻ろう」


「ん?分かりました」


その後、俺とクレアは家に戻った。


クレアがにやついていた気がするけど、まぁ気のせいか。







その日の夜、俺はいつものように風呂に入るために脱衣所で服を脱いでいた。


「ガルファット様。

着替えを、いつものところに置いておきますね」


ドアの所から、フィーネの声が聞こえた。


廊下から、ドア越しで言ったのだろう。


「ありがとうございます」


フィーネにお礼を言った俺は、脱ぎ終わった服を篭に入れて風呂場に行った。


前の世界じゃ、疲れてる時は風呂なんていいやって思ったこともあったけど、こっちの世界じゃかかさず入ってるな。


・・・さてと、体洗うか。


そう思って、シャワーの前に立った時だった。


浴室のドアの開く音が聞こえた。


誰だ?もしかして、またクレアか?


俺の頭には、数ヵ月前に風呂に入ってきたクレアの姿が再生された。


だが、俺が振り向くとまったく別の人間がいた。


「お背中、お流ししましょうか?

ガルファット様」


そこには、一糸纏わぬ姿でこちらに微笑んでいるフィーネの姿があった。


「・・・え?どうしたんですか?」


俺は状況が整理できず、キョトンとしたままフィーネに訪ねた。


「シルビア様に、“たまにはあの子の背中を流してあげてきて”って言われたんです」


フィーネが笑顔のまま言った。


・・・シルビアよ、俺で遊んでいる気がするのは俺だけでしょうか?


「嫌、ですか?」


フィーネが少し不安そうに言った。


「い、嫌ではないです!

ただ、その・・・お願いします」


俺は、下をうつ向いてフィーネに言った。


何とかごまかして回避しようと考えたけど、うまい言葉が見つからず結局頼んでしまった。


フィーネは俺の言葉を聞くと、笑顔で「ありがとうございます」と言ってお辞儀してきた。


いや、俺だって美人に背中流してもらえるのは嬉しいよ?


嬉しいんだけどさ、うん。


中身が普通の4歳児なら、素直にお願いしますって言えるんだろうけどさ。


・・・俺、合計30越しちゃってるんだよぉぉぉ。


前の世界だったら、お巡りさんあいつですって言われちゃうんだよぉ。


俺は、シャワーの下で膝をついて地面を叩いた。


「・・・ガルファット様、その格好で洗われるのですか?」


フィーネが不思議そうな顔でこちらを見ている。


「あ、いえ、さすがにこれで洗ってくださいとは言えませんよ」


俺はあぐらでその場に座り直して、お願いしますと頼んだ。


「じゃあ、始めますね」


俺の後ろに立っているフィーネがそう言って、手にボディソープのような物をつけて俺の背中を手で洗い始めた。


体を洗われて改めて思うけど・・・この人本当に胸でかいなぁ。


腕とか洗われている時に、胸が背中に当たるんだけど明らかに成長を感じる。


「ガルファット様、後ろと腕は洗い終わりました」


フィーネに言われて、俺はその場を立ち上がってお礼を言った。


「ありがとうございます、フィーネさん」


「いえいえ。

ではガルファット様、前もお洗いしますね」


・・・え?


「前も、洗うんですか?」


「はい。

いつも、前も洗っていらっしゃいますよね?」


フィーネが当たり前でしょ?みたいな感じで聞いてきた。


「い、いや、そりゃ洗ってますけど・・・」


「もしかして、私ではお嫌ですか?」


はっきり答えない俺に、フィーネが上目遣いで聞いてきた。


ものすごく可愛いし、何だろう色気がある。


・・・ここで断ったら男が廃る!!


俺は、フィーネの目の前にあぐらで座った。


「お願いします!」


俺が頼むと、フィーネは嬉しそうに「はい!」と返事をして俺の体を洗ってくれた。


・・・ちなみに、前を洗われている間は恥ずかしくて目を閉じていました。



「ふぅ、気持ちいい」


俺とフィーネは同時に湯船に入った。


フィーネに体を洗ってもらった後、フィーネが体を洗い終わるまで待っていた。


何か、人に洗ってもらって先に湯船に入るのは気が引けた。


「それにしても、本当に大きくなられましたねガルファット様」


俺の目の前に座っているフィーネが、俺を見ながら嬉しそうに言った。


「そうですか?」


「はい、生まれたばかりの頃は小さい赤ちゃんだったのに。

さっきお体を洗わせていただいた際に、とても立派になられたと感じました」


「あ、ありがとうございます」


俺が少し照れながら言うと、フィーネが笑顔のまま言った。


「いえいえ、ガルファット様のお世話はガルファット様が生まれた頃からさせていただいているんです。

まるで、弟のように思わせていただいてましたから。

私も嬉しいんです」


フィーネが少し照れているのか、笑いながら目を逸らした。


「フィーネさん」


俺が名前をを呼ぶと、フィーネは俺の方を見た。


「ありがとうございます。

すごい嬉しいです」


俺は笑顔でフィーネに言った。


すると、フィーネは優しい笑顔を俺に向けた。


「ガルファット様、少しワガママを言わせてもらってもよろしいですか?」


「ワガママ、ですか?

はい、大丈夫ですけど?」


俺が言うと、フィーネは両目を閉じた。


「それでは、顔を横に向けてもらって良いですか?」


「こうですか?」


俺は、フィーネに言われた通り横を向いた。


すると、頬にチュッと柔らかい感触がした。


「・・・え?」


俺はフィーネの方を見た。


フィーネは目を開いて笑顔だが、少し顔が赤くなっている。


もしかして今のってキス・・・


「少しのぼせちゃったので先に上がらせていただきますね。

ガルファット様は、ごゆっくり入りください」


フィーネはそう言って湯船から上がり、俺に「お先に失礼します」と一礼して浴室を後にした。


「はぁ~」


俺は、天井を見つめた。


・・・のぼせたのは俺もだっての。


本当はすぐにでも上がりたかったけど、脱衣所でフィーネに今ののぼせたのが理由じゃない真っ赤な顔を見られたくなかったので、フィーネがいなくなるまで我慢した。

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