表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/163

第55話 ボス戦のセオリー

 秀矢たちは今、ダンジョンに入ってすぐのベースキャンプにいる。


 青侍たちを含む各人は刃機を携え、ダンジョン探索の準備を終えたところだ。


 心なしか長光、日下部、荒川の表情が硬い。


 番人討伐――ボス戦のせいで緊張してるのだろう。


 秀矢は緊張を少しでもほぐすため、長光に声をかけた。


「長光さん、この前とは違う兵装になってますね」


「うん。今日のは、近接戦闘に寄せたタイプなんだ」


 現在、長光が装着してるサイコアームズは、さしずめ2本の巨腕。


 だらりとぶら下がる腕は、丸太のように太く、その長さは膝の辺りまである。


 伸びた指先は地面に擦れそうだ。


 左前腕部の外側には、盾と言わんばかりの分厚い装甲が張り付いてる。


 あんなので殴られたら、ひとたまりもないことは想像に難くない外観をしてる。


「これはサイコアームズG型。見た目通り、殴打と防御を得意とする反面、精密さを要求される細やかな作業や敵の拘束には不向きだ」


 2本の剛腕がスムーズに動く。


 サイコアームズを解説してる時の長光は、どこか楽しそうに見えた。


「その代わり、ダンジョンで発見された新種の金属――プラチナよりも重い金属で加工された巨腕(こいつ)なら、既知のモンスター相手なら一撃で仕留めることができるし、大抵の攻撃を防ぐことができる」


「そんな凄い武器があるなら、最初から使ってくださいよ」


「重量は燃料の消耗に直結するからね。それに、重すぎるから取り回しが悪い」


「……何で、そんなものを――」


「こいつの真価は、防御で発揮する」


「防御ですか……こんなオーバーなもの引っ提げてくるくらいだし、何かいい作戦でもあるんですか?」


「ないよ」


 長光は落ち着いた口調で即答した。


 何か言い返そうと思ったが、他二人が異を唱える様子がないので止めた。


《秀矢。ボス戦はね、セオリーがあるのよ。ほら、じっちゃんがさ『今日中に倒せ、と言ってるわけではない』って言ってたでしょ?》


「後、『第5階層の時と同じように』とも言ってな」


《うん。だからね、最初は探りを入れるの》


「探り?」


《普通のゲームだと、ボス戦で逃げることはできないでしょ? でも、私たちの任務はゲームじゃない。それはつまり、ボス戦から撤退してもオッケーってことなの》


「つまり、戦ってみて、やばくなったら逃走を繰り返して、経験と情報を集めるのか。でも、そんな簡単に逃げられるのか……」


 亜由美が嘘を言ってるようには聞こえないが、これまで倒してきた数々の敵が、敵である自分達を見逃してくれるとは思えなかった。


「大丈夫だよ、時田くん。お館様が『番人』と呼んでる理由は、正にそこなんだ」


 番人という言葉の意味について、検索した。


 見張りをする人。番をする人。――別の言葉に置き換えると、門番。


《何で、私に聞かないのよ》


「辞書を開くだけなら、脳波の方が早いから、つい――」


《ぶーぶー》


「長光さん、番人――つまりボスは、階段の前で陣取ってて、そこから動かないってことですか?」


「そうだよ。だから、距離を置くと、ボスはこちらに手を出さなくなる。後、普通のモンスターみたいに、フロアを徘徊しないから、別の敵と戦ってる時に増援で来ることもない。番人という仕事への責任感が強いんだろうね」


(逃走可能で、階段の前を動かない……か)


 秀矢の頭には今、2つの関心事がある。


 1つは、ボスを無視して、先に進む事が可能なのか。


 もう1つは、フローラと名乗ったエルフのこと。


 1階の出入口に陣取られたベースキャンプ(ここ)に、フローラの入出記録は、無い。


 地上に出るのも、地上からダンジョンに潜るのも、ここのベースキャンプを避けて通ることは不可能。


 それはつまり、フローラは下の階から1階まで上ってきたことになる。


 この仮説を正とするなら、フローラは一人で、どうやって1階まで来たのか?


 1階の戦闘記録を見る限りでは、戦闘能力はサムライ衆より数段劣る。


 戦闘が得意でないなら、残された選択肢はただ一つ……モンスターとの戦いを回避した、ということだ。


(ボス討伐に、時間を取られるようなら――)


「時田くん、妙な気を起こさないようにね」


 長光が釘を刺すような強めの口調で言った。


「くっ……これだから超能力者は――」


《いや、もろ顔に出てたわよ。いかにも悪いことを考えてる、にやけ顔》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ