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ジャンクDNA

「バキさん。お話を聞かせてください」


「いいだろう。――と言っても、その紙に書いてあることが全てだから、俺が今から話すことは、その補足だ」


「構いません。それに、鉄パイプを曲げたら、話を聞くって約束もしましたし」


「やれやれ。まだ中学生だと言うのに、畏まっちゃって」


「来月から高校生です」


「俺から見たら中学生も高校生も大して変わらん。――がサムライは、そんな将来有望で才能を持った若者を求めてる」


「若者ならともかく才能ですか? 俺ができるのはせいぜい、ランペイジの世界大会で優勝するくらいですよ」


「それも立派な才能だ。近年は、ドローンの遠隔操作等、軍事方面でもゲーマーの才能を高く評価してる機関がいくつもある。うちもその一つだ。古くはチェス、将棋に始まり、乗り物の操縦技術、狙撃能力みたいな頭脳や神経系の発達が目覚ましい者達に声をかけてる。うちでは、そういう連中をナーブ枠って呼んでる。反面、優れた肉体を有してる者も勧誘してる。こっちはフィジカル枠な」


「それなら、両方持ち合わせた人間を集めた方がいいのでは?」


「そうしたいのは山々なんだけどさ。両方持ってる奴は、大体リア充になって才能を爆発させてんだよ。今頃、青春も人生も謳歌してるだろうよ……けっ」


「そ、そうですか……」


「それに、この仕事は自分の命というリスクがある。週一とは言え三年間、危険地帯に踏み入って化け物と戦う。誰だって、死ぬのは怖い。何と言ってもここは、平和で求人も多い日本。命を投げ打ってまで、金を求める奴はそう多くないのが実情だ。それに、才能だけじゃダメなんだ」


「――と言うと?」


「人徳だ。品性、人格、人柄、性格……色々とあるが要するに、やらかさない人間さ。少し前に、事務所を通してアンケートに答えただろ」


「確か、アンケートに答えるだけで5万円もらえる案件がありましたね。設問数が千個以上あったから、しんどかったの覚えてます」


「それそれ。そうやって、才能と人徳を併せ持つ将来有望な若者を勧誘してるのさ。ちなみに俺も、それでサムライに誘われた口だけどな」


「という事は、バキさんが痩せたのって――」


「3年間、サムライを務めてたからだよ。さっき、リミッター解除しただろ? 鉄パイプを曲げるパワーを手に入れた奴な。あれ燃費が悪くてさ、食っても食っても脂肪が勝手に燃えるんだよ」


「健康的になって良かったじゃないですか」


「命あっての物種だけどな」


「バキさん。さっき見せてくれたリミッター解除。あれ、どういう仕組みなんですか?」


「体内に投与した特性のナノマシンに、このバカデカスマホから特殊な電波を発信して、力を覚醒させるんだよ」


 ベタなフィクションの設定に挙がる単語の揃い踏みで目まいがする。


「ナノマシンっつっても最近は、スマートナノテクノロジーとかスマートナノマテリアルとか色々な呼び方があるな。実際、ナノ技術自体は今も研究が盛んで、その範囲は医療、物理、化学、生物等、多岐に渡り、その成果は工業製品から馴染みのある日用品にまで及んでる」


「はぁ……何か頭に『スマート』って付けば、それっぽく聞こえますね。それじゃリミッター解除ってのは、さしずめ人間のスマート化ですか?」


「はっはっはっ。人のスマート化か、そいつは言い得て妙だな。今度、営業文句に使わせてもらう」


「どうぞ、ご勝手に」


「――とまあ、人のスマート化って奴で、俺は超人になったわけだが、あれはほんの一部だ。実際、神経と肉体の強化だけじゃねえ。ゲームのように、特別なスキルが使えるようになる。月並みな言葉で『異能』って奴だ。超能力とか魔法とかな。好きだろ? そういうの」


「ええ、まあ」


 秀矢もそういうお年頃なので、好きか嫌いかと問われたら、好き寄りではある。


 しかし、それはフィクションの話であり、現実世界での行使となると話は違う。


 ピンと来ないのだ。だから、はっきりと答えることができなかった。


「何でも人間にはジャンクDNAというものがあって、そいつをオーバーテクノロジーで揺さぶりをかけることで『異能』に目覚めるらしい。詳細は、実際にサムライになってみてのお楽しみだな。そうそう、異能で思い出したんだけど、サムライの勧誘基準にナーブ、フィジカルに次ぐ、もう一つの枠があるんだよ。たしか、ギフテッド枠って呼ばれてたな」


「ギフテッド? 生まれつき才能を開花してる人とかの意味ですよね?」


「サムライの場合は、少し違うな。生まれつき『異能』が使える奴らだ」


「常人からすれば、鉄パイプをこんなにする力でも十分、異能ですよ」


「サムライになれば、これくらいは出来るようになるさ。実際、今サムライの任務についてる連中も、トキヤとそんなに歳は変わらない。ここ2,3年の間は、現役高校生くらいの年代が固められてるからな。何でも、若い子の方が体感時間が長いから、同じ1時間でも成長速度が20代、30代とは比べ物にならないほどに速いんだとよ。その辺りの詳しい話は、契約時に渡すマニュアルに記載してあるから、サムライになった後にでも読んでくれ」


「……あれ? 俺の記憶が正しければ、アラハバキさんは、歳いってるような気が――」


「俺が現役の頃は、そこまで研究が進んでなかったんだよ。今風に言うとタイパを求めて、より若い子を勧誘してるわけさ」


「わかりました」


「長々と悪かったな、話はここまでだ。悪いが今すぐ決断してくれ。チャンスは一度きり。二度目ないぜ」


「後日、返答というのは?」


「ダメだ。断った時点で、この話はお前の記憶から消す。サムライの求人情報はおろか、俺と会ったことも綺麗さっぱり忘れる。そういうことが出来る力が、今の俺にはある」


 アラハバキは真面目な顔で、真剣な口調で言った。


 常人には不可能なパフォーマンスから、アラハバキの話の信憑性は非常に高くなってる。

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