第24話 亜由美がAIVOに!?
《どう? 賢明判断はだったでしょ?》
「……何の話?」
《私が秀矢を守ったこと》
「それで亜由美が死んだら元も子もないじゃないか」
《でもほら、うまくいったじゃん。秀矢があいつをぶっ飛ばしてくれたし……あーあ、でもやっぱ妬けちゃうなぁ》
秀矢は今、信じられないものを目にしてる。
それは、勝利の余韻どころか悲嘆に暮れる暇を易々と奪った。
《それにしても秀矢、おっきくなったね……というか私が小さいの? 何か秀矢の顔が見えてるのに、画面越しって感じがするのよね》
「時田くん。この声……空閑さんの声だよね? これは一体、どういうことかな?」
秀矢はスマホの画面を長光に向けた。
その瞬間、長光の目が大きく見開いた。
「えっと、ご覧の通り……としか言えません。亜由美が、俺のアイボーの……アバターになってます。こんな前例は、ありますか?」
「いやいや、ないない。こんな事態、初めてだよ! 何で、死人がアイボーのアバターに!」
長光が困惑してる。
それだけで、予想外の事実であることがうかがえる。
《先輩! 人をお化けみたいに言わないでくださいよ!》
「実は、ワイバーンゲーミングとコラボしてて、プロゲーマーアイのアバターを提供してるとか――」
《そんなキモい案件、受けるわけないでしょ》
秀矢は改めて、自分のスマホに映る亜由美に目を向ける。
その姿は、プリセットの無課金アバターと違い、実写と見分けがつかないほどの高精細な3Dモデル。フォトリアルだ。
《私が秀矢のアイボー? 確かにダンジョンじゃない場所にいるなぁとは、思ったけどさ》
「亜由美、ちょっとスマホからパーティメンバーのコンディションを見てくれ」
《あれ? 私のスマホないよ?》
「……今いる場所から見てくれ」
《了解っと……ああ、中身はダンジョン攻略中とほぼ同じね、どれどれ……って、私のコンディション、DEADになってるじゃん!? どういうこと!? こうしてお喋りしてるんだから、なんかこう都合のいいことが起こって、実は生きてました! 的な展開じゃないの!?》
「俺が聞きてえよ」
「時田くん、空閑さんの事は色々思うところがあるけど、まずは地上に帰還しよう。そして、ありのままをお館様に報告するしかない」
今、秀矢と長光は、刃機を受け取った広大な和室にいる。
法龍院家の屋敷に戻った二人は、蛟牙に新人育成中に起こったアクシデントの報告を済ませた。
と言っても秀矢は黙って聞いてるだけで、口を動かしたのは長光一人。
報告の中身は、知的生命体との遭遇、フロアボスを上回る強敵との遭遇及び撃破、殉職したサムライのアバター化、以上の三点である。
「知的生命体の証跡、確かに受け取った。検分の結果は追って連絡する。ボーナスは期待していいぞ」
「ありがとうございます」
提出物を渡した長光は、座布団に座った。
「二人とも災難だったな。だが生きてくれて嬉しく思う」
《じっちゃん、三人だって》
「はっはっは。それが先の報告にあったアバター化した亜由美ってわけか。……時田、スマホを出しな」
「わかりました」
秀矢は立ち上がってから、畳の上に置いてたスマホを拾って蛟牙に渡した。
蛟牙はスマホの画面に目を向けると、神妙な面持ちになる。
画面の一点を注視してるようで、微動だしない。
時折、「ふむ」「ほう」等と短い言葉をしきりに呟く。
その様子を緊張しながら眺める秀矢。
しばらくすると蛟牙がスマホを差し出してきた。
「確かに……こいつは、空閑亜由美だ」
秀矢は、何も言わずにスマホを受け取った。
何故、すんなりと信じられるのか? と訊ねようとしたが、蛟牙の確信めいた口調に、言葉を挟むのは野暮だと思い、黙ることにした。
《ねえねえ、じっちゃん。頼みがあるんだけど》
「どうした?」
《ワイバーンゲーミングに活動休止するって連絡入れておいてくれない? こんな状態だから私から連絡入れても、ひと悶着あると思うし――》
「しかし、ヴァーチャルストリーマーが動かしてることにすれば通るとか無いか?」
《さすがにアイボーから動かすと、チート検出ツールに引っかかると思うわ》
「それもそうか。わかった。事務所の方にはわしから連絡しておこう」
《あと学校の方もお願い。レポートとオンライン面接はよくても登校日だけは、どうしようもないからさ》
「いいだろう。お前も、そんな姿になって不便だと思うが、こうやって意思疎通は出来ることだし、当面はサムライ衆のサポートを頼む」
《まっかせて》




