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第113話 お宝発見

 秀矢たちは現在7階を探索中。


 道中はモンスターを蹴散らしつつ、宝箱が目に入ったらすぐに開ける。


 開封済みの宝箱もちらほら目にしたので、ディオスが開けてるのだろう、と長光が推察。


 ただ気掛かりなのが日下部。


 1階のベースキャンプから7階にワープした直後は明るく振舞っていたが、7階の探索を進めるにつれて表情が険しくなる。


 戦闘に支障はないが宝箱が開くまでの待機時間は、心ここにあらずといった様子。


 今は時間がある。


 長光が宝箱のパズルを解くのに悪戦苦闘してるので、暇を持て余してるためだ。


 声をかけるべきだろうか。


 そう悩んでた時、長光にチャットで釘を刺された。


『人は誰しも、身近な人間――つまり友人知人だからこそ知られたくない隠し事の一つや二つは抱えてる。君がもし、彼女の力になりたいと思うなら、今はそっとしてあげてほしい』


 日下部の経緯を把握してるからこその言葉だろう。


『秀矢、まさか人殺しに加担する、なんて言わないよね?』


 亜由美からチャットが来た。


『勘弁してくれ。重ね重ね言うが俺の目的は、亜由美の復活であって、人殺しじゃない』


『奈央姉が心配なのはわかるけど、だからこそ秀矢まで引きずられないでよ』


『わかってる。ちょっと考え事してただけだ』


 浅薄なりに考えを巡らせる。


 少なくともサムライになれば大抵のトラブルはシノビ衆が対応する。


 だから悩みの原因は、サムライになる以前にあるのは間違いない。


 ――サムライで得られる収入では、返済しきれない借金を抱えてるとか?


 そんなものがあるなら契約の時点で、法龍院家が何等かの手を打つはず。


 何故ならサムライの私生活とメンタルケアには、異常なほど周到なのは疑う余地がない。


 だからといって、ディオスとの因縁があるようにも見えない。


(……ダメだ。わかんねえや)


 このままでは、日下部に引きずられて気落ちしてしまいそうだ。


 秀矢は、考えるのを止めた。


 最優先は任務から生還すること。


 気持ちを切り替えて、周囲を警戒する。


 宝箱は、まだ開かないようだ。


「時田秀矢、悩み事でもあるの? 深刻な顔してるけど」


 巳月が声をかけてきた。


「あるにはあるさ。俺は思春期真っ盛りの男子高校生だからな」


「……それなら、ついてきて」


「巳月、いきなり腕引っ張るなよ」


 華奢な体躯からは想像もつかない強い力で引っ張られバランスを崩す。


 右手で握ってた刃機を地面に突き立てて、体制を持ち直す。


《なんで隙あらば肉体関係を結ぼうとすんのよ!》


「父上の話によれば、男子高校生の悩みの10割は性衝動に起因すると聞いてるわ」


《10割なのはあんたでしょうが! 任務中に何考えてんのよ》


「法龍院家の血統を残すことよ」


《だったらほら、そこでボサッとしてる荒川で我慢なさい》


 話を振られた荒川は『関わりたくない』と主張するようにわざとらしい嘆息を吐く。


「先刻も言ったけど、三人の才覚は同列。だけど時田秀矢は三人の中で一線を画す、異質なものを秘めてるの。それは歴代のサムライの中でも例のないもの。だから法龍院家に取り入れたいの」


 巳月は真顔でハッキリと言った。


 巳月に求められること自体に悪い気はしない。


 しかし、本人の態度からして、それが好意ではないことは確か。


 目的の達成に必要なプロセス――事務的、職務、使命感という類なのをひしひしと感じる。


 故に、巳月の意志を蔑ろにしてはならない、いい加減な気持ちで受けてはならない、と理性が働く。


「なあ、お嬢ちゃん。茶々を入れるようで言い辛かったんだけどよ――」


《エロガキ、餓えた獣がタゲを合わせてるみたいよ。相手をしてあげなさい》


「お断りするわ。まだ時間はあるもの」


「何でお前らは揃いも揃って、俺には当たりが強いんだよ。――まあいい、話を進めるぞ。そもそも青侍――クローン技術があるのに、何を焦る必要があるんだ?」


《ナイス荒川。たしかに言われてみれば、そうよね。うーん、でも今のじっちゃんの技術だと魂……自我はないんでしょ? 陰陽術も引き継ぎたいなら、やっぱり魂がないと。私みたいに》


「意志はなくても、血は残せるだろ」


 巳月の視線が荒川に向く。


「荒川大樹、今この場で、その疑問に答えることはできないわ」


「ふーん、まあ、お家の事情ってんなら、無理強いはしねえよ」


「もし、あの男……ディオスと戦った後なら話すことができるわ」


「なんで、あいつが出てるんだよ」


「今、話をしても信じてもらえないから」


「この期に及んで新種の超常現象やオーバーテクノロジーの一つや二つ増えたところで、疑うわけないだろ」


「逆よ。常識外れの科学を目にしたからこそ、信憑性が薄れる事実もあるの。――だって、答えを父上から直に聞いた私でも半信半疑だもの」


「つまり、ディオス(あいつ)と戦ってみないことには、お嬢ちゃん自身も確証を得られないってことか」


「そう思ってもらって構わないわ」


《補足致しますと、荒川様がおたずねした件にはロックがかけられております。解除の条件には『ディオスと交戦し、指定のキーワードを引き出す事』とあります》


「俺達って信用ないのな」


《私もちょっと探りを入れたんだけどポチの言う通りロックがかかってたわ。これ、アイボーにたずねても推測すら返ってこないわよ》


「2度も言わなくていい」


「荒川大樹、これだけは言っておくわ。法龍院家(うち)の事情を知ったところで、サムライ衆の任務に変わりはないし、知らず知らずの内に悪事に加担させてることもないわ」


《創作物でよくある衝撃的な真相というものは一切ございませんので、引き続き任務に励んでください》


「わかってるさ。金の分、しっかりと働くつもりだ」


《長光先輩が宝箱の回収に成功したみたいよ……どれどれ》


 亜由美の言葉の後、中身を取り出す直前の宝箱が開いた状態の画像が映し出された。


 宝箱回収のサブクエストにある中身の確認で、収集した物が本当に宝箱から回収した物かどうか証明するために撮影するものだ。


《秀矢、これって――》


「ああ、エルフから聞いた話が確かなら間違いない」


 宝箱の中には、蛇が巻き付いてる杖が映ってる。


 視認した瞬間、驚きと興奮が体の内側からあふれた。


 同時に、呆気なく発見したこと対し不安を覚える。


「アスクレピオスの杖――俺が探し求めてた、お宝だ」

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